2018年入試問題研究に戻る阪大理系2番解答
(1) $f(x)$ が $x-c$ で割り切れるので, \[ f(c)=c^4-ac^3+bc^2-ac+1=0 \] これより $c\ne 0$ である.
$c< 0$ とすると, $c^4 >0,\ -ac^3 >0,\ bc^2 >0,\ -ac >0$ となり $f(c) >0$ となる. よって $c >0$ である.
この両辺を$c^4$ で割って \[ 1-a\left(\dfrac{1}{c}\right)+b\left(\dfrac{1}{c}\right)^2-a\left(\dfrac{1}{c}\right)^3+\left(\dfrac{1}{c}\right)^4 =f\left(\dfrac{1}{c}\right)=0 \] である.
$c\ne 1$ のときは, $f(c)=0$ とあわせて,因数定理から,$f(x)$ は $(x-c)\left(x-\dfrac{1}{c}\right)$ で割り切れる.
$c=1$のとき.$f(1)=0$より$2-2a+b=0$である.これより, \begin{eqnarray*} f(x)&=&x^4-ax^3+(2a-2)x^2-ax+1\\ &=&x^4-2x^2+1-a(x^3-2x^2+x)=(x-1)^2(x+1)^2-ax(x-1)^2\\ &=&(x-1)^2\{x^2+(2-a)x+1\} \end{eqnarray*} となり,この場合も $f(x)$ は $(x-1)^2$ で割り切れる.
※ 後半は,場合分けせず次のようにしてもよい.
等式 $f(c)=0$ の両辺を$c^2$で割って \[ c^2-ac+b-\dfrac{a}{c}+\dfrac{1}{c^2}=0 \] これから, \[ b=-c^2-\dfrac{1}{c^2}+a\left(c+\dfrac{1}{c} \right) \] よって, \begin{eqnarray*} &&x^4-ax^3+bx^2-ax+1\\ &=&x^4-\left(c^2+\dfrac{1}{c^2} \right)x^2+1-a\left\{x^3-\left(c+\dfrac{1}{c} \right)x^2+x \right\}\\ &=&\left(x^2-c^2 \right)\left(x^2-\dfrac{1}{c^2}\right)-ax\left(x-c \right)\left(x-\dfrac{1}{c}\right)\\ &=&(x-c)\left(x-\dfrac{1}{c}\right)\left\{(x+c)\left(x+\dfrac{1}{c}\right)-ax \right\} \end{eqnarray*} より,$f(x)$ は $(x-c)\left(x-\dfrac{1}{c}\right)$ で割り切れる.(2) (1)より,$s,\ u>0$ で $t=\dfrac{1}{s}$ ,$v=\dfrac{1}{u}$ としてよい. $(x-s)(x-t)(x-u)(x-v)$ を展開したとき,$x^3$ の係数は $-s-t-u-v$ であるので, \[ a=s+\dfrac{1}{s}+u+\dfrac{1}{u} \] となる.相加平均と相乗平均の不等式から $s+\dfrac{1}{s}\geqq 2$ などより, \[ a\geqq 2+2=4 \] である.
(3) 同様に展開式を考え $x^3,\ x^2$ の係数を比較すると, \begin{eqnarray*} 5&=&s+\dfrac{1}{s}+u+\dfrac{1}{u}\\ b&=&st+su+sv+tu+tv+uv\\ &=&1+su+\dfrac{s}{u}+\dfrac{u}{s}+\dfrac{1}{su}+1\\ &=&2+\left(s+\dfrac{1}{s}\right)\left(u+\dfrac{1}{u}\right) \end{eqnarray*} 従って$p=s+\dfrac{1}{s}$ と $q=u+\dfrac{1}{u}$ は2次方程式 \[ X^2-5X+b-2=0 \cdots (*) \] の2解である.$p\geqq 2$,$q\geqq 2$ なので $b-2=pq\geqq 4$ であり,判別式が非負であるので, \[ 5^2-4(b-2)=33-4b\geqq 0 \] $b$ は自然数であるので,$b=6,\ 7,\ 8$ が必要である.
i) $b=6$ のとき. $(*)$ は $X^2-5X+4=0$ なので,$p,\ q=1,\ 4$ となり,$p\ge 2$,$q\ge 2$ を満たさない.
ii) $b=7$ のとき. $(*)$は $X^2-5X+5=0$ なので,$p,\ q=\dfrac{5\pm \sqrt{5}}{2}$ で,$\dfrac{5-\sqrt{5}}{2}< 2$ となり 条件を満たさない.
iii) $b=8$ のとき. $(*)$は $X^2-5X+6=0$ なので,$p,\ q=2,\ 3$ となる. $s+\dfrac{1}{s}=3$ とおくと,$s^2-3s+1=0$ より $s,\ \dfrac{1}{s}=\dfrac{3\pm\sqrt{5}}{2}$ となる. $s+\dfrac{1}{s}=2$となるのは,$s=1$である. 従って $b=8$ は条件を満たす.
※ $s+\dfrac{1}{s}=m$ とおくと, $s^2-ms+1=0$ となり,その判別式は $m^2-4$ である.よって $m\geqq 2$ なら,実数$s$が存在する. これを先に確認しておいてもよい.
【解説】
相反方程式 \[ x^4-ax^3+bx^2-ax+1=0 \] のように,係数が対称性をもつ偶数次数の方程式を,相反方程式という. この一般的な解き方は次のようにする.
$x=0$ は解ではないので,$x^2$ で割る. \begin{eqnarray*} &&x^2-ax+b-a\cdot \dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{x^2}\\ &=&\left(x+\dfrac{1}{x} \right)^2-2-a\left(x+\dfrac{1}{x} \right)+b=0 \end{eqnarray*} となる. $t=x+\dfrac{1}{x}$ とおくと, \[ t^2-at+b-2=0 \] となる.この2解を $\alpha,\ \beta$ とする. \[ x+\dfrac{1}{x}=\alpha,\ x+\dfrac{1}{x}=\beta \] を解く.
このように2次方程式を2回解けば,4つの解が得られる.