2018年入試問題研究に戻る京大特色3番解答
(1) $ n $ のとき, $ \left[\dfrac{k}{2^{n-m}} \right] $ を,対応する $ k $ と $ m $ について計算する. $ m=1 $ のときは $ 2^{n-1}\leqq k \leqq 2^n-1 $ のすべてについて $ \left[\dfrac{k}{2^{n-1}} \right]=1 $ である. \[ \begin{array}{l|rrrrr} k\m&1&2&3&\cdots&n\\ \hline 2^{n-1}& 1& \left[\dfrac{2^{n-1}}{2^{n-2}} \right]=2& \left[\dfrac{2^{n-1}}{2^{n-3}} \right]=4&\cdots& 2^{n-1}\\ 2^{n-1}+1& 1& \left[\dfrac{2^{n-1}+1}{2^{n-2}} \right]=2& \left[\dfrac{2^{n-1}+1}{2^{n-3}} \right]=4&\cdots& 2^{n-1}+1\\ \cdots&\cdots&\cdots&\cdots&\cdots&\cdots\\ 2^{n-1}+2^{n-2}-1& 1& \left[\dfrac{2^{n-1}+2^{n-2}-1}{2^{n-2}} \right]=2& \left[\dfrac{2^{n-1}+2^{n-2}-1}{2^{n-3}} \right]=5&\cdots& 2^{n-1}+2^{n-2}-1\\ 2^{n-1}+2^{n-2}& 1& \left[\dfrac{2^{n-1}+2^{n-2}}{2^{n-2}} \right]=3& \left[\dfrac{2^{n-1}+2^{n-2}}{2^{n-3}} \right]=6&\cdots& 2^{n-1}+2^{n-2}\\ \cdots&\cdots&\cdots&\cdots&\cdots&\cdots\\ 2^{n}-1& 1& \left[\dfrac{2^{n}-1}{2^{n-2}} \right]=3& \left[\dfrac{2^{n}-1}{2^{n-3}} \right]=7&\cdots& 2^{n}-1 \end{array} \] $ m=2 $ のときは $ 2^{n-2} $ ずつの $ k $ に対して2と3の値をとり, $ m=3 $ のときは $ 2^{n-3} $ ずつの $ k $ に対して4,5,6,7の値をとる. 以下同様に進み, $ m=n $ のときはすべて $ k $ と同じ値をとる. このように配列されるので, $ m=2,\ \cdots,\ n $ の, $ 2^{n-1}\leqq k \leqq 2^{n-1}+2^{n-2}-1 $ の部分 \[ \begin{array}{rrrr} m=2&m=3&\cdots&m=n\\ \hline 2& 4&\cdots& 2^{n-1}\\ 2& 4&\cdots& 2^{n-1}+1\\ \cdots&\cdots&\cdots&\cdots\\ 2& 5&\cdots& 2^{n-1}+2^{n-2}-1 \end{array} \] は, $ n-1 $ に対応する上表全体と同じ構造をしている.3からはじまる下半分の部分も同様である. $ n $ のとき題意の事象が起こるのは, まず1枚目は表となり, かつ,2枚目が2の部分と,3の部分について,それぞれ対応するすべての $ m $ に対して表となることが, 対応する $ k $ の中に存在する事象となる.その確率はそれぞれ $ p_{n-1} $ である. したがって, $ n $ のときに題意の事象となるのは, 2枚目が2の部分と,3の部分について,いずれもそれが起こらない事象の余事象である. よって, \[ p_n=\dfrac{1}{2}\left\{1-(1-p_{n-1})^2 \right\} \] が成り立つ. これから, \[ p_{n+1}=\dfrac{1}{2}\left(2p_n-{p_n}^2 \right) \] である.
(2) すべての $ n $ に対して $ r_n\geqq 3 $ が成り立つことを $ n $ についての数学的帰納法で示す. $ n=1 $ のとき, \[ r_1=\dfrac{2}{p_1}-1=3 \] より成立する. $ r_n\geqq 3 $ とする.このとき, $ \dfrac{2}{p_n}-1\geqq n+2>0 $ なので, \begin{eqnarray*} r_{n+1}&=& \dfrac{2}{p_{n+1}}-(n+1)=\dfrac{4}{(2-p_n)p_n}-(n+1)\\ &=&\dfrac{2}{2-p_n}+\dfrac{2}{p_n}-(n+1) =1+\dfrac{1}{\dfrac{2}{p_n}-1}+\dfrac{2}{p_n}-(n+1)\\ &> &\dfrac{2}{p_n}-n=r_n\geqq 3 \end{eqnarray*} が成り立ち,すべての $ n $ で $ r_n\geqq 3 $ が成立する.
(3) $ r_n\geqq 3 $ より, $ p_n\leqq \dfrac{2}{n+3} $ は成立する. また,不等式 $ \dfrac{2}{n+3+\log n}\leqq p_n $ は,不等式 \[ r_n\leqq 3+\log n \quad \cdots@ \] と同値である.これを $ n $ についての数学的帰納法で示す. $ n=1 $ のときは $ \log 1=0 $ から,$ (2) $ と同様に等号で成立する. $ n $ のとき, $ @ $ が成立するとする. $ (2) $と同様に考え, $ \dfrac{2}{p_n}-1\geqq n+2 $ を用いると, \[ r_{n+1}=\dfrac{1}{\dfrac{2}{p_n}-1}+r_n \leqq\dfrac{1}{n+2}+3+\log n \] が成立する.したがって $ n+1 $ のとき $ @ $ に対応する不等式が成立することを示すために, \[ \dfrac{1}{n+2}+\log n\leqq \log(n+1) \] が成立することを示せばよい. $ \dfrac{1}{n+2}< \dfrac{1}{n+1} $ なので, \[ \dfrac{1}{n+1}\leqq \log(n+1)-\log n \quad \cdots(*) \] が成立することを示せばよい. 区間 $ \left[n,\ n+1 \right] $ で \[ \dfrac{1}{n+1}\leqq \dfrac{1}{x} \] であるから, \[ \dfrac{1}{n+1}=\int_n^{n+1}\dfrac{1}{n+1}\,dx\leqq \int_n^{n+1}\dfrac{1}{x}\,dx =\left[\log x \right]_n^{n+1}=\log(n+1)-\log n \] より $ (*) $ は成立する.
(*)の別方法
次のように数列だけで示すこともできる. 不等式$(*)$は \[ 1\leqq \log\left(1+\dfrac{1}{n} \right)^{n+1} \] と変形され,これより \[ e\leqq \left(1+\dfrac{1}{n} \right)^{n+1} \quad \cdots A \] を示せばよい. 数列 $ \left\{\left(1+\dfrac{1}{n} \right)^{n+1}\right\} $ が単調減少であること,つまり \[ \left(1+\dfrac{1}{n+1} \right)^{n+2}< \left(1+\dfrac{1}{n} \right)^{n+1} \quad \cdotsB \] を示す. \begin{eqnarray*} B &\iff&\left(\dfrac{n+2}{n+1} \right)^{n+2}< \left(\dfrac{n+1}{n} \right)^{n+1}\\ &\iff&\left(\dfrac{n+1}{n+2} \right)^{n+2}>\left(\dfrac{n}{n+1} \right)^{n+1} \iff\dfrac{n+1}{n+2}>\left(\dfrac{n}{n+1} \right)^{\frac{n+1}{n+2}} \quad \cdots C \end{eqnarray*} ここで $ n+1 $ 個の $ \dfrac{n}{n+1} $ と1個の1の相加平均と相乗平均の不等式から \[ \dfrac{\dfrac{n}{n+1}\times (n+1)+1}{n+2} \geqq \left(\dfrac{n}{n+1} \right)^{\frac{n+1}{n+2}} \] が成り立つので, $ C $ が成立する. また, \[ \lim_{n \to \infty}\left(1+\dfrac{1}{n} \right)^{n+1}= \lim_{n \to \infty}\left(1+\dfrac{1}{n} \right)^n\left(1+\dfrac{1}{n} \right)=e \] なので, 数列 $ \left\{\left(1+\dfrac{1}{n} \right)^{n+1}\right\} $ は,単調に減少して $ e $ に収束する.よって $A$ が成立し, $ n+1 $ のとき $ @ $ が成立することことが示された. よってすべての $ n $ で $ @ $ が成立し, すべての $ n $ で(3)の不等式が成立することが示された.