2019年入試問題研究に戻る東工大第4問解答
(1) 平面上の $ n $ 本の直線が,一般の位置にある,とは次のこととする. \[ \begin{array}{rl} i)&どの2本も平行でない.\\ ii)&3本が1点で交わることもない. \end{array} \] 一般の位置にある $ n $ 本の直線によって, $ a_n $ 個の領域に分割されるとする. $ a_1=2 $ であり, $ n $ 本あるところにさらに1本追加すると,その直線が他の直線と $ n $ 回交わり, $ n+1 $ 個の部分に分けられる. それだけ分割された領域の個数が増える.よって, \[ a_{n+1}=a_n+n+1,\ a_1=2 \] これより, $ n\geqq 2 $ のとき. \[ a_n=a_1+\sum_{k=1}^{n-1}(k+1)=\dfrac{n^2+n+2}{2} \] となる. これが,平面を $ n $ 本の直線で分割したときの,分割された領域の個数の最大値である.
$ T(H_1,\ \cdots,\ H_n) $ のことを分割数ということにする. 分割数のうち最も大きいものを $ b_n $ とする.
$ n $ 枚の平面が一般の位置にある,とは次のこととする. \[ \begin{array}{rl} 1)&どの2枚も平行でない.\\ 2)&どの交直線も平行でない.\\ 3)&どの平面においても,他の面との共有直線は一般の位置にある. \end{array} \] $ 3) $ はすべての平面の共有直線において, $ i) $ と $ ii) $ がなりたつことを意味する.
$ n $ 枚によって $ b_n $ に分割されているところにさらに1枚,他の $ n $ 枚と一般の位置にあるように追加する. これが,1枚追加することで増加する増加分の最大値である. このとき,その平面が他の $ n $ 枚の平面と交わり, それらでできる直線は一般の位置にあるので,追加された平面は, $ a_n $ 個の領域に分けられる. それだけ分割された領域の個数が増える.よって, \[ b_{n+1}=b_n+a_n,\ b_1=2 \] これより, \begin{eqnarray*} b_n&=&b_1+\sum_{k=1}^{n-1}\dfrac{k^2+k+2}{2}\\ &=&2+\dfrac{1}{2}\left\{\dfrac{(n-1)n(2n-1)}{6}+\dfrac{n(n-1)}{2}+2(n-1) \right\}\\ &=&\dfrac{n^3+5n+6}{6} \end{eqnarray*} となる. これは $ n=1 $ でも成立する.(2) $ n\geqq 2 $ のとき, $ n-1 $ 枚を分割される領域が $ b_{n-1} $ 個となるようにおいて, $ n $ 枚目を一般の位置でないようにおくことを考える.
$ n-1 $ 枚のうちの2平面に対して, $ n $ 枚目をその交直線と平行な平面にとる. その $ n $ 枚目の平面上の直線に関して $ i) $ でないことになる. このとき,平行になることによって分割される領域が,一般の位置にある場合から1減る. したがって, 分割数のとりうる値のうち2番目に大きいものは \[ b_n-1=\dfrac{n^3+5n}{6} \] である.(3) $ n\geqq 5 $ とする. $ n-2 $ 枚で分割された個数が $ b_{n-2} $ であるように置かれている. ここに,1枚をある交直線と平行に置く.また他の1枚を他の異なる交直線と平行になるように置く. このとき,分割数は $ b_n-2 $ である. $ n\geqq 5 $ のとき, $ T(H_1,\ \cdots,\ H_n) $ のとりうる値のうち3番目に大きいものは \[ b_n-2=\dfrac{n^3+5n}{6}-1 \] である. $ n=4 $ のとき. $ b_4=\dfrac{64+20+6}{6}=15 $ である.
個数が2番目に大きい分割数は(2)より14である.
平面 $ x=0 $ を $ H_1 $ ,平面 $ y=0 $ を $ H_2 $ ,平面 $ z=0 $ を $ H_3 $ , 平面 $ x=1 $ を $ H_4 $ とすると,分割数は12である.
分割数が13となる配置が存在しないことを示す.
3枚の平面の配置で場合を分ける.
(ア) 3枚の平面が互いに交わりをもつとき.以上から,分割数が13となる平面の配置は存在せず, 2番目に大きい分割数は12である.
そのうち,3本の異なる交線が互いに平行ではないときは $ b_3=8 $ となる場合である. ここに,新たに1枚の平面を加える.
その平面がどの交線も含まず,どの交線とも平行でない場合,分割数は $ b_4=15 $ となる.
次に,どの交線も含まないが,いずれか1つの交線と平行な場合は,(2)の考察から分割数は14となる.
また,いずれかの交線を含むとき,分割数は12となる.
(イ) 3本の異なる交線が互いに平行なとき.2本が平行なら他の1本も平行になる. この段階で7個に分割されている.ここに新たに1枚の平面を加える. すべての領域を2分して14個となるか,または交線に平行に置いた場合は11個になる.
(ウ) 3枚の平面が1直線を共有するとき,空間は6個に分割されている. ここに新たに1枚の平面を加える.最大12個に分割されるが,13個になり得ない.
(エ) 3枚の平面のうち2枚が平行.他は平行でないとき,その最大分割は12個である.
(オ) 3枚の平面がすべて平行なとき,空間は4つに分される. 新たに1面を加えて,分割数の最大は8である.
$ n=3 $ のとき.3平面が1直線を共有するとき,分割数は6である. $ b_3=8 $ なので, これが個数が2番目に大きい分割数である.
よって, $ n $ 枚の平面のとき,2番目に大きい分割数は \[ \left\{ \begin{array}{ll} 6&(n=3)\\ 12&(n=4)\\ \dfrac{n^3+5n-6}{6}&(n\geqq 5) \end{array} \right. \] である.