2020年入試問題研究に戻る特色入試総人理系2番解答
問1 任意の自然数 $ n $ と実数 $ \theta $ に対して \[ T_n(\cos\theta)=\cos n\theta \] となることを数学的帰納法で示す. $ n=0,\ 1 $ のときは \[ T_0(\cos\theta)=\cos 0\cdot \theta=1,\ T_1(\cos\theta)=\cos \theta \] より成立する. $ n $ , $ n+1 $ のとき成立するとする. $ n+2 $ のとき, \begin{eqnarray*} T_{n+2}(\cos\theta) &=&2\cos\theta T_{n+1}(\cos\theta)-T_{n}(\cos\theta)\\ &=&2\cos\theta \cos\{(n+1)\theta\}-\cos (n\theta)\\ &=&\cos\{(n+1+1)\theta\}+\cos\{(n+1-1)\theta\}-\cos (n\theta) =\cos\{(n+2)\theta\} \end{eqnarray*} より成立し,すべての $ n $ で成立する.
問2 多項式 $ T_n(x) $ の漸化式と初期条件から, $ T_n(x) $ の最高次の項は $ 2^{n-1}x^n $ である. また,漸化式に $ x=0 $ を代入した \[ T_{n+2}(0)=-T_{n}(0) \] と初期条件から,定数項 $ T_n(0) $ は, $ n $ が偶数のとき $ (-1)^{\frac{n}{2}} $ ,奇数のとき0である. 次に $ \theta $ を任意の定数として $ n $ 次方程式 \[ T_n(x)-\cos (n\theta)=0 \quad \cdots@ \] を考える. $ x=\cos\theta $ はこの方程式の解である. $ \theta $ は任意定数なので, $ T_n(\cos \theta)=\cos n\theta $ の $ \theta $ に $ \theta+\dfrac{k}{n}2\pi $ を代入することにより \[ T_n\left\{\cos\left(\theta+\dfrac{k}{n}2\pi \right) \right\} =\cos \left\{n\left(\theta+\dfrac{k}{n}2\pi \right) \right\}=\cos n\theta \] が成立する.よって, \[ x=\cos(\theta),\ \cos\left(\theta+\dfrac{1}{n}2\pi \right),\ \cos\left(\theta+\dfrac{2}{n}2\pi \right),\ \cdots,\ \cos\left(\theta+\dfrac{n-1}{n}2\pi \right) \] の $ n $ 個の値が方程式 $ @ $ の解である. 方程式 $ @ $ は $ x^n $ の係数が $ 2^{n-1} $ で, 定数項が $ n $ が偶数のとき $ (-1)^{\frac{n}{2}}-\cos(n\theta) $ ,奇数のとき $ -\cos(n\theta) $ である. よって, $ n $ 個の解の積と係数の関係から \begin{eqnarray*} &&(-1)^n\cos(\theta)\cos\left(\theta+\dfrac{1}{n}2\pi \right)\cos\left(\theta+\dfrac{2}{n}2\pi \right) \cdots\cos\left(\theta+\dfrac{n-1}{n}2\pi \right)\\ &=&\left\{ \begin{array}{ll} \dfrac{(-1)^{\frac{n}{2}}-\cos(n\theta)}{2^{n-1}}&(n:偶数)\\ -\dfrac{\cos(n\theta)}{2^{n-1}}&(n:奇数) \end{array} \right. \end{eqnarray*} となり, 任意の自然数 $ n $ と実数 $ \theta $ に対して \begin{eqnarray*} &&\cos(\theta)\cos\left(\theta+\dfrac{1}{n}2\pi \right)\cos\left(\theta+\dfrac{2}{n}2\pi \right) \cdots\cos\left(\theta+\dfrac{n-1}{n}2\pi \right)\\ &=&\left\{ \begin{array}{ll} \dfrac{(-1)^{\frac{n}{2}}-\cos(n\theta)}{2^{n-1}}&(n:偶数)\\ \dfrac{\cos(n\theta)}{2^{n-1}}&(n:奇数) \end{array} \right. \end{eqnarray*} となることが示された.
※ 『数学対話』の「チェビシフの多項式」を参照のこと.