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合同であることを示す関係式
は,
整数の和差積に関して,等式の場合と同じく次のことが成り立つ.
定理 10
以下,各文字は整数を表す.
ならば
|
(1) |
である.一般に
で
が
に関する整数係数の整式ならば
|
(2) |
証明
仮定によって
の倍数である.
ゆえに
は の倍数である.また,
も の倍数である.すなわち(1)が示された.
(1)から
なら次のことが成り立つ.
1) 任意の整数 に対して
.
2) 数学的帰納法と組みあわせて自然数に対し
.
ふたたび(1)から
である.
もういちど(1)から
となり
(2)が示された.
(証明終わり)
合同式に関する二つの定理を紹介する.
第一は数の等式での命題
に対応するものである.
定理 11
証明
仮定から は の倍数つまり整数 で
となるものがある.
と は互いに素なのでこれから が の倍数であることがわかる.つまり
が示された.
(証明終わり)
第二は,逆数の存在に関するものである.
定理 12
と
が互いに素なとき
となる整数
が存在する.
証明
とが互いに素なので,一次不定方程式
は整数解
をもつ.
なのでが条件を満たす整数である.
(証明終わり)
注意 2
ここは高校数学範囲を越えることであるが,定理
10の意味は,2つの剰余類からそれぞれそこに属する整数をとりだし,
その加法や乗法をおこなうと,その和や積の属する剰余類は,とりだした整数によらず確定する,ということである.この結果,剰余類の間に加法や乗法を定めることができる.
合同式(
1)は,このようにつかんではじめてその意味がわかる.
Aozora
2015-03-02