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弧長と三角関数

美樹 角を円弧の長さで定義しました. 一方$y=f(x)$の曲線の長さもわかりました.

すると次の関係が成りたつはずです.

円の方程式は $y=\sqrt{1-x^2}$です.


\begin{displaymath}
y'=\dfrac{-2x}{2\sqrt{1-x^2}}=\dfrac{-x}{\sqrt{1-x^2}}
\end{displaymath}

より

\begin{displaymath}
1+{y'}^2=1+\dfrac{x^2}{1-x^2}=\dfrac{1}{1-x^2}
\end{displaymath}

ですから角$\theta$に対応する弧長が$\theta$になるので

\begin{displaymath}
\theta=\int_{\cos\theta}^1\sqrt{1+{y'}^2}\,dx=
\int_{\cos\theta}^1\dfrac{1}{\sqrt{1-x^2}}\,dx
\end{displaymath}

$y$方向に積分するのも同じなので

\begin{displaymath}
\theta=\int_0^{\sin\theta}\dfrac{1}{\sqrt{1-y^2}}\,dy
\end{displaymath}

も成りたつはずです.

南海 その通りである.

積分変数を$t$にそろえ,$\cos\theta=x$とおくと, $\theta=\cos^{-1}x$と逆関数で表される.$\sin$も同様である. つまり

\begin{eqnarray*}
\sin^{-1}x&=&\int_0^x\dfrac{1}{\sqrt{1-t^2}}\,dt\\
\cos^{-1}x&=&\int_x^1\dfrac{1}{\sqrt{1-t^2}}\,dt
\end{eqnarray*}

これは積分による三角関数の逆関数の定義である. 弧長による三角関数の定義という考え方は,現代数学に通じる新しい数学が18世紀から19世紀にはじまる一つの入り口だった.

美樹 三角関数の定義は一つではないのですね.

そうか. 『数学対話』『関数の展開とオイラーの公式』に 三角関数を級数で定義することが書かれていました.

南海  そこでは三角関数を

\begin{displaymath}
e^{ix}=\cos x+i\sin x
\end{displaymath}
として,つまり$e^{ix}$の実数部分と虚数部分として定めている.そこでは加法定理の別の証明を与えている.例1.2.1を見てほしい.この先は新しい世界だ.
Aozora Gakuen