本来は
このように聞きました.
では収束の定義がはっきりすればの左辺の収束が証明できるのでしょうか.
南海 いやそれほど簡単ではない.
「実数とは何か」で話した実数の連続性を根拠にしなければならない. 次のことが示される.
このとき数列は収束する.
このような数列を「単調増加有界数列」という.単調減少で下に有界なときは,すべての項の符号を逆にして考えれば 「単調増加」で上に「有界」な数列になる.したがってこの定理を一言でいえば,「単調有界数列は収束する」 ということである.
「実数の連続性と代数学の基本定理」で,閉区間で定義された連続関数には最大値と最小値があることの証明の 概略を示した.その証明の概略のなかで, 閉区間内に無数の点の集合があれば,には集積点が存在することを,概略で示した. 集積点とは,を含むどのように小さい区間をとっても,その区間のなかにの要素が 無数に存在するような点である.
証明 「単調有界数列は収束する」ことの証明は次のように論証される.
よって数列はに収束する.□
証明 数列が単調増加で有界であることを示せばよい.
のときその一般項は
よって数列が単調増加かつ有界なので,確かに収束する.□
この極限値を自然対数の底といいと表すのだった.
この証明には区間縮小法による方法もある.「実数の連続性と代数学の基本定理」で 紹介したが次のことが成り立つ.実はこのような共通の要素が存在することが実数の連続性に他ならないのだ.
区間縮小法
閉区間
において,
先の証明のように二項定理を用いても出来るのだが,いろいろ役立つ便利な補題を紹介しよう.
史織 これは相加相乗平均の関係不等式です.とが異なるので等号は成立しません.
南海
補題を
で用いると,
なので,
次に
補題を
で用いると,
また
なので
したがって区間 に区間縮小法を適用すると,2つの数列 は同一の極限に収束することがわかる.□
史織 これでの値もある程度計算できますね.
ここで例題を一つ.
史織
南海 そう.
史織
以上のの定義から
のときは
とおく.
南海
史織
逆数をとって
これから
ところが
のときは.
南海 これではじめての微分ができるのだ.
史織
のときなので
南海 これで自然対数の底を定義しの微分を求めたので,従来通りやに関する 微積分ができる.