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条件付確率


南海  この節の後半は数学Cで習う範囲なのだが,数Aの確率の理解のためにもぜひ押さえておきたい.

確率空間$(U,\ p)$と2つの事象$A$$B$があるとする.

確率$p$に対して,事象$A$が起こったという前提のもとで$B$が起こる確率を考える.

史織  事象$A$が起こったことが前提なので,$p_A(A)=1$でなければならない. 事象$A$が起こったという前提のもとで$B$が起こるので,$U$の部分集合として事象は$A\cap B$です. この事象$A\cap B$が事象$A$の確率を1としたとき,どのような確率で起こるかが $p_A(B)$だから,$p_A(A)=1$とあわせて

\begin{displaymath}
p_A(B)=\dfrac{p(A\cap B)}{p(A)}
\end{displaymath}

です.

南海  そういうことだ.$A$が起こるという条件の下での確率なので条件付き確率という.

条件付き確率$p_A$は,集合$A$を標本空間とする確率になっている.

つまり,標本空間$U$を狭めて,集合$A$を新たな標本空間とし, $A$に含まれる$B$の要素$A\cap B$の確率$p_A$$p_A(A)=1$となるように $p_A(B)=\dfrac{p(A\cap B)}{p(A)}$ で定義する.このとき$(A,\ p_A)$が新たな確率空間となる.

史織  確認してみます.確率の定義の条件をみたせばよいのですね.$B\subset A$に対しては$A\cap B=B$

  1. $p_A(B)=\dfrac{p(A\cap B)}{p(A)}\ge 0$
  2. $p_A(A)=\dfrac{p(A\cap A)}{p(A)}=\dfrac{p(A)}{p(A)}=1$
  3. $B,\ C\subset A$ $B\cap C=\emptyset$のとき

    \begin{displaymath}
p_A(B\cup C)=\dfrac{p(B\cup C)}{p(A)}=\dfrac{p(B)+p(C)}{p(A)}=p_A(B)+p_A(C)
\end{displaymath}

$B$$C$$A$の部分集合でなくても $(A\cap B)\cap (A\cap C)=\emptyset$なら $A\cap(B\cup C)=(A\cap B)\cup(A\cap C)$なので

\begin{eqnarray*}
p_A(B\cup C)&=&\dfrac{p(A\cap(B\cup C))}{p(A)}\\
&=&\dfrac{p(...
...)}\\
&=&\dfrac{p(A\cap B)+p(A\cap C)}{p(A)}\\
&=&p_A(B)+p_A(C)
\end{eqnarray*}

です.

南海  それは $B,\ C\subset A$ $B\cap C=\emptyset$のときの証明の中で済んでいる. しかしいろいろやってみることは大切だ.

なお,根元事象が同様に確からしく,集合の要素の個数で確率が決まるときは,

\begin{eqnarray*}
p_A(B)&=&\dfrac{p(A\cap B)}{p(A)}
=\dfrac{\dfrac{n(A\cap B)}{n(U)}}{\dfrac{n(A)}{n(U)}}\\
&=&\dfrac{n(A\cap B)}{n(A)}
\end{eqnarray*}

これを見れば$A$自身を標本空間とする確率であることは明らかだ.

そこで大切なこと.



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