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微分と積分

南海  ここで大切なことがある. 積分を微分の逆演算として定義する現行教科書の方法では, 積分は微分あってはじめて定義されると思い込む.

青空学園でも,そのように考えていたが, 『解析基礎』を読んでそうでないことに気づいたいう, 投稿をもらったことがある.

僕は、理学部物理学科の3回生です。青空学園数学科の様々な記事を読ませていただき、心から感動しました。本当にありがとうございます。中でも特に感激したのが、「解析基礎」の記事です。僕は物理学科ですが、数学に非常に興味があり、数学科の授業をいろいろと履修しています。昨年、「ルベーグ積分」の授業を受講しました。しかし、単位はとれたものの、理解したとは全く言えない状態でした。具体的には次のような疑問が残りました。

などなどです。
いろいろなルベーグ積分の本を読みましたがすっきりすることはありませんでした。しかしあきらめずに勉強を続けていると結局、
ここがわかっていないのだと気付きました。そんなとき、インターネットで青空学園の記事を見つけたのです。そこで、「定積分は微分とは独立に定義されるもの」という、僕にとって革命的な記事に出会いました。感動と悔しさで涙が出ました(笑)。
確かに、高校数学では、定積分を原始関数の差で定義しています。だから、原始関数が存在するかどうかなんて考えもせずに、定積分を計算します。僕もその一人でした。このことが、ルベーグ積分がわからなかった根本の原因だったのです。計算方法の習得だけで根拠がわからなければ、やはりどこかで弊害が出てくるのですね。
「解析基礎」は全て読ませていただき、自分なりにノートにまとめています。まだ拝見できていない記事もありますが、今後もずっと、参考にさせていただくことになると思います。新しい記事も楽しみにしていますので、これからもよろしくお願いします。

史織  微分と積分は,歴史的にも,数学的にも,別々に定義される. 独立して定義されたものが,結びつくからこそ,「基本定理」なのですね.

南海  そうなのだ. 関数$f(x)$に対して定積分

\begin{displaymath}
\int_a^xf(t)\,dt
\end{displaymath}
これをxの関数とみるとき,不定積分という.は微分を用いずに定義される. これを$F(x)$とおこう.

一方,$F(x)$の微分もまた積分とは独立に定義される. すなわち,

\begin{displaymath}
\dfrac{d}{dx}F(x)=\lim_{h \to 0}\dfrac{F(x+h)-F(x)}{h}
\end{displaymath}

である.ところが,この二つが,

\begin{displaymath}
\dfrac{d}{dx}F(x)=f(x)
\end{displaymath}

と結びつく. これがが「微積分の基本定理」なのだ.

史織 すると,不定積分と原始関数はまったく別の概念なのですね.

南海 そうなのだ.そしてそれが実は一致する,これを主張するのが微分積分の基本定理をいうことでもある.

史織 ところが日本の教科書は「F'(x)=f(x)となる関数$F(x)$$f(x)$の不定積分,または原始関数という.」と書かれている.

南海 これではいちばん大切な発見が,次代に伝わらない.この発見は人間の歴史にとっても大変重要なことなのだが, 高校での定義ではこのことが伝わらない. しかし前にも言ったが,かつては違っていたのだ.

もとより証明をつけながら, 微分積分の世界を拓いてゆくことは簡単なことではない. これについては『解析基礎』を見て欲しい.

最後に,リーマン和に関する入試問題を紹介しておこう.

演習 1       [03京大後期理系5番] 極限 $\displaystyle \lim_{n \to \infty}\sum_{k=1}^{2n}(-1)^k\left(\dfrac{k}{2n} \right)^{100}$ を求めよ.

Aozora
2013-06-28