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次: 虚数の意義 上: 3次方程式 前: 三次方程式を解く(その2)

三次方程式の判別式

南海  次のように考える.

$a,b$ を実数とし,三次方程式 $t^3+at+b=0$ の三つの解を $\alpha, \, \beta,\,\gamma$ とする. このとき

\begin{displaymath}
D=(\alpha-\beta)^2(\beta-\gamma)^2(\gamma-\alpha)^2
\end{displaymath}

をこの三次方程式の判別式という. $D$$a$$b$ で表そう.

\begin{displaymath}
\alpha+\beta+\gamma=0,\quad
\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha=a,\quad \alpha\beta\gamma=-b
\end{displaymath}

より

\begin{eqnarray*}
(\alpha-\beta)(\beta-\gamma)
&=& -\{\beta^2-\beta(\alpha+\ga...
...pha+\gamma)\}\\
&=& -(\beta^2+\beta^2+a+\beta^2)=-(3\beta^2+a)
\end{eqnarray*}

同様に

\begin{eqnarray*}
(\beta-\gamma)(\gamma-\alpha)&=&-(3\gamma^2+a)\\
(\alpha-\beta)(\gamma-\alpha)&=&-(3\alpha^2+a)
\end{eqnarray*}

\begin{eqnarray*}
∴\quad
D&=&-(3\alpha^2+a)(3\beta^2+a)(3\gamma^2+a)\\
&=&-...
...&-\{a^3+3\cdot(-2a)a^2+9\cdot(a^2)a+27b^2\}\\
&=&-(4a^3+27b^2)
\end{eqnarray*}

もし三次方程式が虚数解をもてば $D<0$ ,重解をもてば $D=0$ , 異なる3実数解をもてば $D>0$ となる.

耕一  この式の形は見たことがあります.

南海  次の形では入試問題などにもよく出される. つまり,相異なる三つの実数解をもつための必要十分条件を関数のグラフからも導く. 求めてみてほしい.

耕一  $f(t)=t^3+at+b$とおきます.$f'(t)=3t^2+a$なので,$a<0$が必要で,このとき

\begin{displaymath}
t=\pm\sqrt{\dfrac{-a}{3}}
\end{displaymath}

で極.したがって求める条件は

\begin{displaymath}
f\left(\sqrt{\dfrac{-a}{3}}\right)\cdot
f\left(-\sqrt{\dfrac{-a}{3}}\right)<0
\end{displaymath}

です.これから

\begin{displaymath}
\dfrac{4}{27}a^3+b^2<0
\end{displaymath}

です.

南海  $f'(t)=0$が相異なる実数をもち$f(t)$が極値をもつときは 二つの方法を比較することで,判別式$D$の意味がよくわかる.

$f(\alpha)f(\beta)$が負のときは $D>0$ で, 極大値と極小値が異符号であり,もとの三次方程式 $f(t)=0$ は3実数解をもつ. この積が0なら,$D=0$であり,$y=f(x)$$x$ 軸に接するので,$f(x)=0$は重解をもつ. 積 $f(\alpha)f(\beta)$が正のときは $D<0$ で実数根は一つしかない.

ついでに,二次方程式

\begin{displaymath}
ax^2+bx+c=0
\end{displaymath}

の判別式も解を $\alpha,\ \beta$として

\begin{eqnarray*}
(\beta-\alpha)^2&=&(\beta+\alpha)^2-4\alpha\beta\\
&=& \lef...
...( \frac{c}{a} \right)\\
&=& \frac{b^2-4ac}{a^2}= \frac{D}{a^2}
\end{eqnarray*}

となることに注意しよう.これが二次方程式のときの判別式の正体だ.

耕一 判別式とは,異なる根の差の平方の積 に,最高次数の係数の平方がかかったものなのでね.

\begin{displaymath}
a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_0=0
\end{displaymath}

の根を

\begin{displaymath}
\alpha_1,\ \alpha_2,\ \cdots,\ \alpha_n
\end{displaymath}

とすると, $\Pi$ で積を表すと,

\begin{displaymath}
D={a_n}^2\prod_{i<j}(\alpha_i-\alpha_j)^2
\end{displaymath}

平方しているのでどの二つを入れ替えても変わらず,根 $\alpha_1,\alpha_2,\cdots,\alpha_n$の対称式なので, 根と係数の関係からもとの方程式の係数で書けるのですね.



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