空間に五つの球がある.その半径を
とする.
互いに外接しているとき,これらの五つの半径の間に
が成り立つ.四つの球が互いに外接し,これらが第五の球に内接しているとき,
これらの五つの半径の間に
が成り立つ.
太郎 こうなると余弦定理でやっていくのはほとんど無理です.
南海 和算家はこのような場合も結論を得ていた. まったく驚くべきことである.
太郎 さらに一般の次元に拡張できるのですか.
南海 できる.そのために次元空間について, 直接必要ではないことも含めてまとめておこう.
次元ユークリッド空間はまたベクトル空間でもあり, ベクトルとしての和・差,および実数倍が定まることは, 2次元3次元の場合と同じである. 特に点と原点 を始点とするベクトル が同一視できることなども, 2次元3次元の場合と同じである. ベクトル空間と見るときはの要素を や のようにも表す. 矢線はつけないことも多い(「線型代数の考え方」ではつけていない)が, ベクトルであることを明確にするためここでは 式の書き方をしよう.
このことに注意すると,
二点,の距離
はベクトル
の大きさでもある.
太郎 ベクトル , とすると
南海 平面を考える前にまずの部分空間 を定義しなければならない. の部分集合がの加法と定数倍に関して それ自体ベクトル空間であるとき, をの部分空間という.
言い換えると
太郎 平面ベクトルにおいて原点を通る直線, 空間ベクトルにおいて原点を通る直線や 原点を通る平面が,このような条件を満たすのではないでしょうか.
南海 そうだ. さて部分空間が与えられたとき,
太郎 平面ベクトルでが原点を通る直線ならはそれと直交し原点を通る直線になります. 空間ベクトルでが原点を通る直線ならはそれと直交し原点を通る平面になります.
太郎
とするとこの条件は
南海 超平面をベクトル の集合と見れば, このベクトルの加法を加法とする次元のベクトル空間を 点通るように平行移動したものである. だから平面という概念は, 次元空間の部分空間(を平行移動したもの)と一般化することができる.
南海 以上の準備のもとで円定理を一般の場合に拡張する. それが次の定理だ.
太郎 とんでもなく難しいように思われます.
南海 このような円定理がどのようなところからやってくるのかを考えなおすことで, 次元へ一般化する方法を見出そう.
(1)
4個のベクトル
,
,
,
に対し,行列と行列式
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