拓生 どんな問題ですか.
秀樹
いちばんはっきりしている例でいうと, が実数全体を動くとき,
点を満たすことはいろんなやり方でわかりますが,だけにはなれず, 円からこの点を除外しなければならないのです.
座標は と変形できるから,確かににはなり得ないのだけれ ど何かわざとらしい変形で,よく見落とします.
南海 除外点とはどんな点なんだろう.
秀樹 どんな点といわれても除外されて無い点なんですが.
拓生 でもって次のようにのときの極限です.
秀樹 無限の点なんてあるのかなあ.
南海 たとえば中学生に「二乗して負になる数は」と聞いたら「あるはずない」 というだろうけれど,複素数を習えばちゃんとあるわけだから,この場合も何かある可能性がある.
拓生 複素数のときはとはじめは無理に作ったようですが, 実際は複素数の方が自然で広い世界だった….
この場合も無限遠点を作ってしまえばいい. が実数 全体と無限遠点を動くとき, 軌跡は円全体になる….
秀樹 作るといってもそんな勝手にできるのだろうか.
南海 少なくとも数学的に式でとらえることができて,これまでの実数 と一体になったものでなければならない. 結局は,計算できるものとしてとらえることができたとき,現実にそれは存在するといえる.
拓生 どうするのでしょうか.
南海 それのヒントになることは,実はすでに君たちはよく知っているのだよ. あるやり方では「無限」の場合がとらえられないが,あるやり方では「無限」の場合を含めて 統一的にやれることがあっただろう.
秀樹 直線をと表せば, 軸に平行なの型の直線は傾きが無限 のときになり,別に扱わなければならないが,直線をと表せば, 軸に平行な 場合を含めて一つの式で表せる.
拓生 直線をと三つの数の組 で表すと,
南海 そう.
拓生 無限遠点をとらえるためには,でない 数の組を考える. ならとは 同じ点を表すとする.すると,ならと は同 じ点だから,である全体は と対応させれば実数全体と一致 する.の点は結局で定まる1点で,これが無限遠点です.
秀樹
軌跡の式とうまくあうかな.
を代入して
分母を整理すると,
南海 このやり方で実数全体と無限遠点をあわせたものを「射影直線」といいます.
秀樹 媒介変数が射影直線の全体を動くとき, 軌跡が円全体になるのか.この方がずっとすっきりする.
拓生
でも直線上の点が二つの数の組で表されるのなら,
平面上の点 も三つの数の組
そうかこれが「射影平面」ですね,つまりでない数の組 を考える. なら と は 同じ点を表すとする.すると,なら と は同じ点だから,で ある全体は普通の平面になる.のときは になる …,これは何だ, あっ,そうか射影直線になる.
この場合は無限遠直線ということですね.
秀樹 どのみち だから同じことだと思うけど.
拓生 この場合はね.
秀樹 平行な二直線は無限遠点で交わるということになるのでしょうか.
拓生
やってみましょう.平行な二直線を
射影平面の座標を
とする.のときは
でこれが今までの平面になる.だから,
直線の式を射影平面の式にするために,
を代入し
て分母を払うと,
南海 話はつきないようであったが,射影平面が定義されたので, とりあえずもう一つの話をしなければならない.