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二次曲線の接線

秀樹  円の接線についてのおもしろい性質が演習で出てきたがどうもふにおちない.

拓生  どういうこと.

秀樹  図と問題を見て下さい.

例 1.6.1        $\mathrm{P}$ から二本の接線を引く.接点を$T_1,\ T_2$とする.直線$T_1T_2$上の任意の点 $\mathrm{Q}$ をとる.$\mathrm{Q}$ から二本の接線を引く.接点を$S_1,\ S_2$とする.すると $\mathrm{P}$ は再び直線$S_1S_2$の上にある.

証明

円の方程式を$x^2+y^2=1$として一般性を失わない. $\mathrm{P}$$\mathrm{Q}$ の座標を $(p_1,\ p_2),\ (q_1,\ q_2)$とする.

  1. 直線$T_1T_2$の方程式を求める.接点の座標をそれぞれ, $(t_1,\ u_1),\ (t_2,\ u_2)$とする.接線の方程式は

    \begin{eqnarray*}
t_1x+u_1y&=&1 \\
t_2x+u_2y&=&1
\end{eqnarray*}

    これらが $\mathrm{P}$ を通るので,

    \begin{eqnarray*}
t_1p_1+u_1p_2&=&1 \\
t_2p_1+u_2p_2&=&1
\end{eqnarray*}

    である.ところがこれは,直線$p_1x+p_2y=1$$T_1,\ T_2$を通ることを示している. つまり直線$T_1T_2$の方程式は$p_1x+p_2y=1$である.
  2. 同様に直線$S_1S_2$の式は$q_1x+q_2y=1$である.

    $\mathrm{Q}$ が直線$T_1T_2$の上にあるので, $p_1q_1+p_2q_2=1$である. ところがこの式は $\mathrm{P}$$q_1x+q_2y=1$の上にあることを示している.□

拓生  何がふにおちないのですか.

秀樹  (1)でも(2)でも係数と変数の位置が入れ替わっています. たまたまうまくいっただけではないのか,と思うのです.

拓生  だ円や双曲線,放物線の接線の式は?

秀樹  だ円,双曲線,放物線

\begin{displaymath}
\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1,\ \dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1,\ y^2=4px
\end{displaymath}

の上の点 $(x_1,y_1)$ での接線は,

\begin{displaymath}
\dfrac{x_1 x}{a^2}+\dfrac{y_1 y}{b^2}=1,\
\dfrac{x_1 x}{a^2}-\dfrac{y_1 y}{b^2}=1,\
y_1y=2p(x_1+x)
\end{displaymath}

です.

拓生  これらの式は, $(x_1,\ y_1),\ (x,\ y)$ に関して対称です.

秀樹  そうか,たまたまではなく,二次曲線の性質なのか.

拓生  二次曲線は一般には

\begin{displaymath}
ax^2+2hxy+by^2+2lx+2my+c=0
\end{displaymath}

という形をしている.このときの接線の式は….

秀樹  数IIIの微分で習ったことを用いて計算する.

まず $ax^2+2hxy+by^2+2lx+2my+c=0$の両辺を $x$ で微分すると

\begin{displaymath}
2ax+2hy+2hx\dfrac{dy}{dx}+2by\dfrac{dy}{dx}+2l+2m\dfrac{dy}{dx}=0
\end{displaymath}

つまり, $(hx+by+m)\dfrac{dy}{dx}=-(ax+hy+l)$.したがって,点$(x_1,y_1)$ における接線の方程式は

\begin{displaymath}
(hx_1+by_1+m)(y-y_1)=-(ax_1+hy_1+l)(x-x_1)
\end{displaymath}

これは$hx_1+by_1+m=0$のときも成立する.

ここで, $ax_1^2+2hx_1y_1+by_1^2+2lx_1+2my_1+c=0$ を用いて整理すると,

\begin{displaymath}
axx_1+h(yx_1+xy_1)+byy_1+l(x_1+x)+m(y_1+y)+c=0
\end{displaymath}

になる.ああ,やはり対称だ.

すると,先の円についての演習問題【 $\mathrm{P}$ から二本の接線を引く.接点を$T_1,\ T_2$とする. 直線$T_1T_2$上の任意の点 $\mathrm{Q}$ をとる. $\mathrm{Q}$ から二本の接線を引く.接点を $S_1,\ S_2$とする.すると $\mathrm{P}$ は再び直線$S_1S_2$の上にある 】 は任意の二次曲線 で成り立つのか!

拓生  でも二次曲線を一般的に考えると,二本の接線が平行になることもある. そのときも射影平面で考えると無限遠点で交点はある!



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