next up previous
次: 円と円の場合 上: 特別な場合に閉形定理を計算で示す 前: 特別な場合に閉形定理を計算で示す

放物線と円,$n=3$の場合

南海  これをできるだけ問題の形にまとめるので,それぞれ計算していってほしい.

これを,

方法A
特定の点$\mathrm{P}$で成立するための定数に関する必要条件を求め, それが任意の点で成立するための十分条件でもあることを示す方法.
方法B
$C_1$上の点から多角形ができるために満たすべき方程式を求め, 少なくとも一つ成立する点があればそれが恒等式とならねばならず, そのための定数に関する条件が定まり, そのとき,恒等式であるので任意の点で成立することを示す方法.
の両方でやってみよう.

例 1.7.4  

$C_0$を円$x^2+y^2=1$とし,$C_1$を放物線 $C_1:y=ax^2-b$ を考える. ここで定数は条件 $a>0,\ a+\dfrac{1}{4a}<b$を満たしているとする.

$x$ 座標が $\pm 1$ と異なる $C_1$ 上の点 $\mathrm{P}(t,\ at^2-b)$ から $C_0$ にひとつの接線をひき, その延長が再び $C_1$ と交わる点を $\mathrm{Q}(s,\ as^2-b)$ とする. $\mathrm{Q}$ から $C_0$$\mathrm{PQ}$とは異なる接線をひき, その延長が再び $C_1$ と交わる点を $\mathrm{R}$ とする. $\mathrm{R}$ から $C_0$$\mathrm{QR}$ とは異なる接線をひき, その延長が再び $C_1$ と交わる点を $\mathrm{S}$ とする.

  1. $C_0$$C_1$は共有点をもたないことを示し, $C_1$ 上の二点 $\mathrm{P}$$\mathrm{Q}$ に対し, 直線 $\mathrm{PQ}$$C_0$ と接するための$t$$s$に関する条件を求めよ.
  2. $\mathrm{S=P}$となるために$t$が満たすべき必要条件を求めよ.
  3. [方法A]$\mathrm{P}$$(0,-b)$として,$\mathrm{S=P}$となる定数に関する必要条件を求め, この条件が成立するとき,$x$ 座標が$\pm 1$と異なる$C_1$上の任意の点$\mathrm{P}$ に対して, 常に $\mathrm{S=P}$ となることを示せ.
  4. [方法B]ある点$\mathrm{P}$$\mathrm{S=P}$となれば, (2)の方程式が恒等式になることを示し.そのための定数に関する条件を求め, そのとき任意の点$\mathrm{P}$$\mathrm{S=P}$となることを示せ.

拓生  やってみます.

解答

(1) $\left\{
\begin{array}{l}
x^2+y^2=1\\
y=ax^2-b
\end{array}\right.$において$x^2$を消去する.

\begin{displaymath}
\dfrac{y+b}{a}+y^2=1
\end{displaymath}

この判別式について

\begin{displaymath}
D=\dfrac{1}{a^2}-\dfrac{4b}{a}+4
\end{displaymath}

ゆえに条件 $a+\dfrac{1}{4a}<b$のときは$D<0$である.$C_0$$C_1$は共有点をもたない.


$\mathrm{P}(t,\ at^2-b),\ \mathrm{Q}(s,\ as^2-b)$とする.直線$\mathrm{PQ}$の式は

\begin{displaymath}
(s-t)(y-at^2+b)=(as^2-at^2)(x-t)
\end{displaymath}

である.$s\ne t$なので両辺$s-t$で約して整理すると,

\begin{displaymath}
a(s+t)x-y-ast-b=0
\end{displaymath}

となる.この$\mathrm{PQ}$$C_0$に接する条件を求める.

\begin{displaymath}
\dfrac{\vert-ast-b\vert}{\sqrt{a^2(s+t)^2+1}}=1
\end{displaymath}

つまり

\begin{displaymath}
(ast+b)^2-a^2(s+t)^2-1=0
\end{displaymath}

これが求める条件である.

(2)

$\mathrm{P}(t,\ at^2-b)$とする.

\begin{displaymath}
T(s,\,t)=(ast+b)^2-a^2(s+t)^2-1
\end{displaymath}

とおく.$T(s,\,t)=0$$s$の二次方程式とみる. その解$s_1$, $s_2$に対して, $\mathrm{Q}(s_1,\,a{s_1}^2-b)$ $\mathrm{R}(s_2,\,a{s_2}^2-b)$とする.

これは点$\mathrm{P}$を通り$C_0$に接する直線を2本引いたとき,その接線の$C_1$との交点の座標である.

$\mathrm{S=P}$となることは,$\mathrm{QR}$が再び$C_0$と接すること,すなわち

\begin{displaymath}
T(s_1,\,s_2)=0
\end{displaymath}

と同値である.


\begin{displaymath}
T(s,\,t)=a^2(t^2-1)s^2+2a(b-a)ts+b^2-a^2t^2-1
\end{displaymath}

で,$t\ne \pm 1$であるから

\begin{displaymath}
s_1+s_2=\dfrac{-2a(b-a)t}{a^2(t^2-1)},\ \ s_1s_2=\dfrac{b^2-a^2t^2-1}{a^2(t^2-1)}
\end{displaymath}

\begin{eqnarray*}
T(s_1,\,s_2)&=&\left(\dfrac{b^2-a^2t^2-1}{a(t^2-1)}+b \right)^...
...(b-a)t^2+b(b-a)-1\}^2-4a^2(b-a)^2t^2-a^2(t^2-1)^2}{a^2(t^2-1)^2}
\end{eqnarray*}

したがって$\mathrm{S=P}$となるための $\mathrm{P}(t,\ at^2-b)$に関する必要十分条件は

\begin{displaymath}
\{a(b-a)t^2+b(b-a)-1\}^2-4a^2(b-a)^2t^2-a^2(t^2-1)^2=0
\end{displaymath}

である.以下このように$t$に関する条件を示す式を$H(t)$とおこう.

\begin{displaymath}
H(t)=\{a(b-a)t^2+b(b-a)-1\}^2-4a^2(b-a)^2t^2-a^2(t^2-1)^2
\end{displaymath}

(3)

対称性から$\mathrm{S=P}$となるために点$\mathrm{Q}$$y$座標は1でなければならない. $\mathrm{Q}\left(\sqrt{\dfrac{b+1}{a}},\ 1 \right)$とする.

直線$\mathrm{PQ}$が円$C_0$に接すればよい.$\mathrm{PQ}$の傾きは

\begin{displaymath}
\dfrac{b+1}{\sqrt{\dfrac{b+1}{a}}}=\sqrt{a(b+1)}
\end{displaymath}

であるから

\begin{displaymath}
\mathrm{PQ}:y=\sqrt{a(b+1)}x-b
\end{displaymath}

これが$C_0$と接するので,中心との距離が半径に一致する.

\begin{displaymath}
\dfrac{\vert b\vert}{\sqrt{a(b+1)+1}}=1
\end{displaymath}

これから$b^2=a(b+1)+1$,つまり$b^2-1=a(b+1)$.条件から$b>0$なので,$b+1\ne 0$

\begin{displaymath}
b-a=1
\end{displaymath}

南海  名古屋大学の問題は確かにこの条件を満たしてる.

拓生  はい.

$b-a=1$のとき(2)の条件は

\begin{displaymath}
(at^2+a)^2-4a^2t^2-a^2(t^2-1)^2=0
\end{displaymath}

となり,左辺は恒等的に0なので,任意の$t$で成立する. つまり任意の点$\mathrm{P}$で, $\mathrm{P}=\mathrm{S}$が成立し, 条件$b-a=1$が十分条件であることが示された.

(4)

(2)の条件式$H(t)$を変形する.

\begin{eqnarray*}
H(t)&=&a^2\{(b-a)^2-1\}t^4+2[ab(b-a)^2-a(b-a)-2a^2(a-b)^2+a^2]t^2\\
&&\quad \quad \quad \quad +\{b(b-a)-1\}^2-a^2
\end{eqnarray*}

ここで$t^2$の係数の$[\quad ]$内は


また定数項は


ゆえに

\begin{displaymath}
H(t)=(b-a-1)(b-a+1)\{a^2t^4+2a(b-2a)t^2+b^2-1\}
\end{displaymath}

となる.

ここで$t$の複二次式$H(t)$の判別式をとると

\begin{eqnarray*}
D/4&=&a^2(b-2a)^2-a^2(b^2-1)\\
&=&a^2(4a^2-4ab+1)
\end{eqnarray*}

$a+\dfrac{1}{4a}<b$より,$D<0$である.つまり(2)の条件式は実数解をもたない. ところが少なくとも一つ$\mathrm{S=P}$となる点$\mathrm{P}$が存在した. つまり(2)の条件式に実数解が存在する. (2)の条件式は4次式で,少なくとも5つの解をもつので恒等的に0で係数はすべて0となり, $(b-a-1)(b-a+1)=0$である. $a+\dfrac{1}{4a}<b$なので$b=a+1$である.

このとき任意の点$\mathrm{P}$に対して(2)の条件式が成立し,$\mathrm{S=P}$となる.□


next up previous
次: 円と円の場合 上: 特別な場合に閉形定理を計算で示す 前: 特別な場合に閉形定理を計算で示す
Aozora Gakuen