拓生 最近,三つのよく似た問題に出会いました.まず問題を見て下さい.
放物線上に相異なる三点, , , がある. 原点を中心とする半径1の円をとし, 直線,直線はそれぞれに接するとする. このとき,直線もまたに接することを証明せよ.
円を内部に含む楕円 がある. 上の一点 からにひとつの接線をひき, その延長が再びと交わる点をとする. からにとは異なる接線をひき, その延長が再びと交わる点をとする. からにとは異なる接線をひき, その延長が再びと交わる点をとするととなった. このときをの関数として表わせ.
円を, 楕円 をとする. 上のどんな点に対しても,を頂点にもち, に外接してに内接する平行四辺形が存在するための必要十分条件を で表せ.
南海 とりあえず三つの問題自身はできたか.
拓生 はい.名古屋大,京大の問題は難しくありません.東大のも何とかなりました.
南海 拓生君は次のような解答を示した.
例題1.1解答
直線の式は,
例題1.2解答
となるということは,から円に二つの接線を引き,楕円との交点 を,とするとき,直線が再び円に接する,ということである. が軸上の点であり,円も楕円も軸対称の位置にあるので, 直線が再び円に接するのは,との座標がのときである.
従って題意をみたすとはあるとすれば一組のみであるから,
とをその座標が -1 の楕円上の点とするとき,
が円と接することが
となるための条件である.
である.
の式は,
例題1.3解答
[必要条件]
をとし,
とする.
を頂点の一つとする平行四辺形が存在するためには,円と楕円がともに軸,
軸に関して対称であるから,が円に接しなければならない.
交点は
南海 東大の問題は,円に外接する平行四辺形は菱形であること使えばもっと簡単にできる.しかしそれは受験数学的な方法でポンスレの定理に対する個別の対応になる. 上のように一般的に考えて解くことは大切なことだ.
拓生 と順にとって になるのと, から二つの接線とを引いたとき, もまた円に接することとは同値です. それは,外部の点から円への接線がちょうど2本引けることからわかります.
そこで,京大の問題は, を特別な点としたときとなる条件を求めよというものです. 一方,名大の問題は三点が一般的に文字で与えられているのですから,を どこにとっても,となるというのです. また東大の問題は4点について,二つの問題の中間を主張していて,平行四辺形という条件 にしぼれば,常に同様のことが成り立つ,と主張しています.ある4点を頂点とする平行四辺形が存在することから必要条件を求め, そのときつねに指定された点を頂点とする平行四辺形が存在 することを示すのですから.
それぞれ類似のことを証明させようとしていますが,また同時に少しずつ違っていて, どのようなことが成り立つのか,背景にどのような事実があるのか,はっきりわかりません.
南海 問題とされていることがそれぞれ違うのは,入試問題としての難易を調節するためである. こういうときにいちばんいいのは,「できるだけ一般的にとらえ,具体的に考える」ことだ.
拓生 東大の問題も必ずしも平行四辺形でなくても四辺形で成り立つ,のですか.
南海 いや,東大の問題では次のことに注意すれば結局は菱形しかないことがわかる.
同心の円と楕円があり,円が楕円の内部にあるとする. 円に外接し楕円に内接する四角形は結局のところ平行四辺形しかない.円に外接する四角形の隣りあう辺の長さは等しい.一方円も楕円も原点に関して対称なので, 必ずひし形になる.
拓生 なるほど.すると一般に,
円と二次曲線で,ある点から順に接線を引いて,3回目 (ないしは4回目)の点についてになれば, をどこにとっても常にとなる.が成り立つということでしょうか.
南海 その通り. 放物線と楕円が出てきたので,そこを「二次曲線」ととらえたのも大変よろしい.
南海 しかしさらに一般化すれば,中の円も「二次曲線」にしたくなる. また,3および4で成り立つのだから,これを一般ににしたくなる. 二つの二次曲線が置かれた位置関係も制限が必要ない. 一般に二つの二次曲線と3以上の自然数に関して,
上のある点を頂点の一つとし, に外接しに内接する角形が少なくとも一つ存在すれば, 任意の点についてそれを頂点の一つとする同様の角形が存在する.ことが成り立つと推測される. これは,ポンスレの閉形定理, あるいは略してポンスレの定理とよばれている. 一般の場合,複素射影幾何の場で証明される.これは後に考えたい. まず,上の三つの入試問題をそれぞれ一般的に考えよう.