図のように $ x $ 軸から直線 $ y=p $ までは速度 $ v_1 $ で,
直線 $ y=p $ から直線 $ y=q $ までは速度 $ v_2 $ で直線に動く点がある.
原点Oから点Pまで動き,そこから点Qまで動くとする.
それぞれの直線の $ y $ 軸となす角を $ \theta_1 $ , $ \theta_2 $ とする.
OからQまでの移動にかかる時間が最小となるとき,
$ v_1,\ v_2 $ , $ \theta_1 $ , $ \theta_2 $ にどのような関係が成り立っているか.
史織 \[ \mathrm{OP}=\dfrac{p}{\cos\theta_1},\ \mathrm{PQ}=\dfrac{q}{\cos\theta_2} \] です.また, \[ l=p\tan\theta_1+q\tan\theta_2 \] が $ y $ 軸から点Qまでの距離で一定です. そして,OからQまでの移動時間は \[ T= \dfrac{p}{v_1\cos\theta_1}+ \dfrac{q}{v_2\cos\theta_2} \] となります.
南海 よく考えている. ただし,ここで角は鋭角を前提にしている.
その上で問題は, $ l $ が一定という条件の下で, $ T $ が最小となるとき,
$ v_1,\ v_2 $ , $ \theta_1 $ , $ \theta_2 $ が満たすべき条件を求めるということである.
$ l $ の式を $ \theta_1 $ で微分して
\[
\dfrac{p}{\cos^2\theta_1}+\dfrac{q}{\cos^2\theta_2}\cdot\dfrac{d\theta_2}{d\theta_1}=0
\]
である. $ T $ が最小なときは, $ T $ を $ \theta_1 $ の関数と考えたとき,極値になるので,
$ \dfrac{dT}{d\theta_1}=0 $ となる.つまり,
\[
\dfrac{dT}{d\theta_1}=
\dfrac{p\sin\theta_1}{v_1\cos^2\theta_1}+
\dfrac{q\sin\theta_2}{v_2\cos^2\theta_2}\cdot\dfrac{d\theta_2}{d\theta_1}
\]
である.
$ \dfrac{d\theta_2}{d\theta_1} $ を消去して,
\[
\dfrac{p\sin\theta_1}{v_1\cos^2\theta_1}+
\dfrac{q\sin\theta_2}{v_2\cos^2\theta_2}\left(-\dfrac{p}{\cos^2\theta_1}\cdot\dfrac{\cos^2\theta_2}{q} \right)=0
\]
これより
\[
\dfrac{\sin\theta_1}{v_1}=
\dfrac{\sin\theta_2}{v_2}
\]
を得る.これをスネルの法則という.
史織 これは必要条件ですね.
南海 その通り. この必要条件はどのように曲線を定めるのか. 最速降下曲線の満たすべき必要条件を求めよう.
関数 $ y=f(x) $ のグラフの曲線が最速降下曲線であるとする.
そして,曲線上の点 $ P(x,\ y) $ での速度が $ v $ であるとし,
曲線の点 $ P $ での接線と $ y $ 軸のなす角を $ \theta $ とする.
移動区間を $ x $ に関して小区間に分ける.
この小区間 $ [y_i,\ y_{i+1}] $ における平均速度を $ v_i $ ,
2点 $ (x_i,\ y_i) $ , $ (x_{i+1},\ y_{i+1}) $ を結ぶ直線と $ y $ 軸とのなす角を $ \theta_i $ とおくと,
\[
\dfrac{\sin \theta_i}{v_i}=
\dfrac{\sin \theta_{i+1}}{v_{i+1}}
\]
が隣りあうすべての区間で成り立つ.よって
\[
\dfrac{\sin \theta_i}{v_i}=一定
\]
である.ここで区間の分割を小さくし,
巾を0に収束させると,
\[
\dfrac{\sin \theta}{v}=一定,
\]
が必要である.また
\[
y'=\tan\left(\dfrac{\pi}{2}-\theta \right)
\]
なので,
\[
\sin\theta=\dfrac{1}{\sqrt{1+y'^2}}
\]
で $ v=\sqrt{2gy} $ であるから,
最速降下曲線の満たすべき必要条件として
\begin{equation}\label{eq01}
\dfrac{1}{\sqrt{2gy(1+y'^2)}}=c (一定) \cdots\cdots(1)
\end{equation}
となる.
このように必要条件として満たすべき微分方程式を導いたが,
いくつもの吟味すべき問題がある.
例えば,角 $ \theta $ は鈍角のことも起こりうるが,それは場合に分けて考えねばならない.