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凸函数の性質を使うもの

まずはもっとも一般的な凸関数を使うものである. (2)の部分は98年大阪市立大学後期試験に出題されている.

方法 1
     関数 $f(x)$ が2回微分可能で$f''(x)<0$ を満たしているとする. また $n$$n\ge 2$ なる自然数とする.
  1. $p+q=1$ を満たす任意の正の数$p,\ q$ と,関数の定義域の任意の$x,\ y$に対して,

    \begin{displaymath}
pf(x)+qf(y)\le f(px+qy)
\end{displaymath}

    が成り立つことを平均値の定理を用いて示せ.

  2. $p_1+p_2+ \cdots +p_n=1$ を満たす任意の正の数 $p_1,p_2, \cdots ,p_n$と, 定義域内の任意の実数 $x_1,x_2,\cdots ,x_n$ に対して

    \begin{displaymath}
p_1f(x_1)+p_2f(x_2)+ \cdots +p_nf(x_n)\le f(p_1x_1+p_2x_2+ \cdots +p_nx_n)
\quad \cdots\maru{1}
\end{displaymath}

    が成り立つことを示せ.
  3. $f(x)$ として適切な関数を選ぶことにより

    \begin{displaymath}
G_n\le A_n
\end{displaymath}

    を示し,等号が成立する場合を述べよ.

  1. $x=y$ のときは等号が成立する.

    $x<y$ とする.このとき $x<px+qy<y$ である.

    区間 $[x,\ px+qy]$ で平均値の定理を用いると, $x<c_1<px+qy$

    \begin{displaymath}
f'(c_1)=\dfrac{f(px+qy)-f(x)}{(px+qy)-x}=\dfrac{f(px+qy)-f(x)}{q(y-x)}
\end{displaymath}

    となるものが存在する. $p-1=-q$ を用いた.

    同様に区間 $[px+qy,\ y]$ で平均値の定理を用いると, $px+qy<c_2<y$

    \begin{displaymath}
f'(c_2)=\dfrac{f(y)-f(px+qy)}{y-(px+qy)}=\dfrac{f(y)-f(px+qy)}{p(y-x)}
\end{displaymath}

    となるものが存在する. $1-q=p$ を用いた.

    $f''(x)<0$$c_1<c_2$ であるから $f'(c_1)>f'(c_2)$ .つまり

    \begin{displaymath}
\dfrac{f(px+qy)-f(x)}{q(y-x)}>\dfrac{f(y)-f(px+qy)}{p(y-x)}
\end{displaymath}

    これから

    \begin{displaymath}
pf(x)+qf(y)<f(px+qy)
\end{displaymath}

    従って題意の不等式が成立し等号成立は $x=y$ のときである.
  2. 数学的帰納法で示す.

    $n=2$ のときは(1)から成立.

    $n$個の場合に成立するとし $n+1$ 個の場合に成立することを示す.

    $q=p_1+p_2+\cdots+p_n$ とおく. $q+p_{k+1}=1$ であることに注意する.

    \begin{eqnarray*}
&&p_1f(x_1)+p_2f(x_2)+ \cdots +p_nf(x_n)+p_{n+1}f(x_{n+1})\\ ...
...{n+1}\right)\\
&\le& f(p_1x_1+p_2x_2+ \cdots +p_{n+1}x_{n+1})
\end{eqnarray*}

    ゆえに $n+1$ の場合も成立した.等号成立は $x_1=\cdots=x_{n+1}$ のとき.

    よって一般の $n$ に対して題意が示された.

  3. $f(x)=\log x$ とする. $f'(x)=\dfrac{1}{x},\ f''(x)=-\dfrac{1}{x^2}<0$ である.

    $p_1=p_2=\cdots=p_n=\dfrac{1}{n}$ で(2)の結果を用いる.

    \begin{displaymath}
\dfrac{\log a_1+\log a_2+\cdots+\log a_n}{n}
\le \log \left(\dfrac{a_1+a_2+\cdots+a_n}{n} \right)
\end{displaymath}


    \begin{displaymath}
∴ \quad \log (a_1a_2\cdots a_n)^{ \frac{1}{n}}
\le \log \left(\dfrac{a_1+a_2+\cdots+a_n}{n} \right)
\end{displaymath}

    つまり $G_n\le A_n$ が示された.等号成立は $a_1=\cdots=a_n$ のとき.□

方法 2 (1の別証)
     関数 $f(x)$ が2回微分可能で$f''(x)<0$ を満たしているとする. 定義域内の任意の$x,\ t$に対して

\begin{displaymath}
f(x)\le f'(t)(x-t)+f(t)
\end{displaymath}

が成立することを示せ.

これを $x=x_1,\ x_2,\ \cdots,\ x_n$ および $\displaystyle t=\sum_{k=1}^np_kx_k$ で用いることにより1を示せ.


\begin{displaymath}
F(x)=f(x)-\{f'(t)(x-t)+f(t)\}
\end{displaymath}

とおく.

\begin{displaymath}
F'(x)=f'(x)-f'(t),\ \quad F''(x)=f''(x)
\end{displaymath}

$F'(t)=0$$F''(x)<0$ であるから $F(x)$$x=t$ で極大かつ最大である.

$F(t)=0$ であるから, 定義域内の任意の $x$ に対し$F(x)\le 0$ が成立する. 等号が成立するのは $x=t$ のときのみである.

つまり,定義域内の任意の$x,\ t$に対して

\begin{displaymath}
f(x)\le f'(t)(x-t)+f(t)
\end{displaymath}

が成立することが示された.

$\displaystyle t=\sum_{k=1}^np_kx_k$として, $x$$x=x_k$ を代入し, $p_k$ をかけて $k=1,\ 2,\ \cdots,\ n$ について加える.

\begin{eqnarray*}
\sum_{k=1}^n p_kf(x_k)&\le& \sum_{k=1}^n p_k\{f'(t)(x_k-t)+f(t...
...(t) \sum_{k=1}^n p_k\\
&=&f(t)=f\left(\sum_{k=1}^np_kx_k\right)
\end{eqnarray*}

つまり1が示された.等号成立は各 $k$ に対する不等式で等号が成立するときであり, $x_k=t\ (\ k=1,\ 2\cdots,\ n\ )$ ,つまり $x_1=x_2=\cdots=x_n$ のときである.□

注 相加平均,相乗平均の不等式を導くだけなら,はじめから $p_k=\dfrac{1}{n}$ で 示せばよい.これは96年京都教育大学で出題されている.

この方法の優れているところは,数学的帰納法を使うことなく示せることである. 相加平均,相乗平均の不等式を導くために1の形まで示すのは,そうしないと 帰納法ができないからである.


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