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双曲線関数

南海   懸垂線は実は双曲線と深い関係がある.それを考えていこう.

双曲線 $H\ :\ x^2-y^2=1\ (x>0)$は,実数$t$を用いて $x=\dfrac{e^t+e^{-t}}{2},\ y=\dfrac{e^t-e^{-t}}{2}$という媒介変数表示をもつ.

耕一 

\begin{displaymath}
\left(\dfrac{e^t+e^{-t}}{2}\right)^2-\left(\dfrac{e^t-e^{-t}...
...)^2=
\dfrac{e^{2t}+2+e^{-2t}}{4}-\dfrac{e^{2t}-2+e^{-2t}}{4}=1
\end{displaymath}

ですから, $\left(\dfrac{e^t+e^{-t}}{2},\ \dfrac{e^t-e^{-t}}{2}\right)$$H$上の点です.

さらに相加相乗平均の不等式から $1\le \dfrac{e^t+e^{-t}}{2}$,かつ

\begin{displaymath}
\lim_{t \to \pm\infty}\dfrac{e^t+e^{-t}}{2}=+\infty,\
\lim_{t \to \pm\infty}\dfrac{e^t-e^{-t}}{2}=\pm \infty,\
\end{displaymath}

です.$e^t,\ e^{-t}$はともに$t$の連続な関数ですから,$t$が全実数を動くと, $\left(\dfrac{e^t+e^{-t}}{2},\ \dfrac{e^t-e^{-t}}{2}\right)$$H$の全体を動きます. 双曲線 $C\ :\ x^2-y^2=1\ (x>0)$上の任意の$x$$y$は,実数$t$を用いて $x=\dfrac{e^t+e^{-t}}{2},\ y=\dfrac{e^t-e^{-t}}{2}$と表されます.

ということでいいでしょうか.

南海   同じ二次曲線である円 $C\ :\ x^2+y^2=1$の媒介変数表示として

\begin{displaymath}
x=\cos \theta,\ y=\sin \theta
\end{displaymath}

がとれることはよく知られている.ここで,『ド・モアブルの定理からオイラーの公式へ』を見てほしいのだが

\begin{displaymath}
\cos \theta+i\sin \theta=e^{i\theta}
\end{displaymath}

とかけるのだった.これによれば


つまり円 $C\ :\ x^2+y^2=1$は媒介変数表示

\begin{displaymath}
x=\dfrac{e^{i\theta}+e^{-i\theta}}{2},\ y=\dfrac{e^{i\theta}-e^{-i\theta}}{2i}
\end{displaymath}

をもつ.

耕一  双曲線 $H\ :\ x^2-y^2=1\ (x>0)$は,実数$t$を用いて

\begin{displaymath}
x=\dfrac{e^t+e^{-t}}{2},\ y=\dfrac{e^t-e^{-t}}{2}
\end{displaymath}

という媒介変数表示をもつというのと同じ形ですね.

ということは,この2つは$\sin ,\ \cos$と似ているということですか.

南海   その通り.実は $\cos \theta,\ \sin \theta$のことを三角関数というのにならって,

\begin{displaymath}
\dfrac{e^t+e^{-t}}{2},\ \dfrac{e^t-e^{-t}}{2}
\end{displaymath}

のことを双曲線関数という.そして双曲線のことを hyperbolic curve というのにちなんで,記号で

\begin{displaymath}
\cosh t=\dfrac{e^t+e^{-t}}{2},\ \sinh t=\dfrac{e^t-e^{-t}}{2}
\end{displaymath}

と表す.

耕一  双曲線の媒介変数表示になっていたということは

\begin{displaymath}
\cosh^2t-\sinh^2t=1
\end{displaymath}

ということですね.

南海   そうだ.さらに,三角関数との対比で双曲線関数の性質を調べよう.

三角関数の角$\theta$に対して $\dfrac{\theta}{2}$は単位円の斜線部分の面積だった.

それに対して第1象限にある双曲線$H$上の点 $\mathrm{P}(p,\ q)$をとる.また $\mathrm{A}(1,\ 0)$とする. また点$\mathrm{P}$から$x$軸に降ろした垂線の足を $\mathrm{Q}(p,\ 0)$とする. 点$\mathrm{P}$に対応する媒介変数値を$t$とする.線分 $\mathrm{OP},\ \mathrm{OA}$と, 点$\mathrm{A}$と点$\mathrm{P}$で切り取られる$H$の弧とで囲まれた図形の面積$S$がちょうど$\dfrac{t}{2}$ となる.

耕一  やってみます.

\begin{displaymath}
S=\bigtriangleup \mathrm{OPQ}-\int_1^py\,dx
\end{displaymath}

です.変数を$t$に置換し計算をします. $\bigtriangleup \mathrm{OPQ}=\dfrac{pq}{2}=\dfrac{e^{2t}-e^{-2t}}{8}$であり,さらに $\dfrac{dx}{dt}=\dfrac{e^t-e^{-t}}{2}$です.

南海   $t$$p$に対応して固定されているが,この$t$と媒介変数$t$をあえて混同している. わかっていてそうするのは構わない.

耕一  本当は文字を変えるのですが,結局同じことになります.

確かになりました.

ここで質問です.もともとラジアンの定義は円弧でした.双曲線の場合弧$\mathrm{AP}$ の長さは$t$でしょうか.

円の場合は0から$\theta$までの弧長は

\begin{displaymath}
\int_0^{\theta}\sqrt{\left(\dfrac{dx}{d\theta} \right)^2+\le...
...int_0^{\theta}\sqrt{\sin^2\theta+\cos^2\theta}\,d\theta=\theta
\end{displaymath}

です.双曲線関数の場合はどうなりますか.

南海   どうなるかやってみよう.弧$\mathrm{AP}$の長さを$L$としよう.

耕一 

\begin{eqnarray*}
L&=&\int_0^t\sqrt{\left(\dfrac{dx}{dt} \right)^2+\left(\dfrac{dy}{dt} \right)^2}\,dt\\
&=&\int_0^t\sqrt{\sinh^2t+\cosh^2 t}\,dt
\end{eqnarray*}

あれ,ルートが消えない.三角関数とまったく同じではないのですね.

南海   では加法定理はどうだろう.

耕一 


三角関数の加法定理とは少し違うのですね.

ついでにすでに計算はしていますが

\begin{displaymath}
\dfrac{d}{dt}\cosh t=\sinh t,\ \dfrac{d}{dt}\sinh t=\cosh t
\end{displaymath}

で,これも三角関数とは少し違います.


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