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楕円の場合

$a$$b$$a>b$の正の定数とする$xy$平面上に楕円 $C:\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$がある.

楕円の媒介変数表示では,角が必要である.そこで,$t$の代わりに$\theta$を用いる. これによって曲線$C$は, $f(\theta)=a\cos\theta$ $g(\theta)=b\sin\theta$の媒介変数表示をもつ.

$0<\theta<2\pi,\ \theta\ne \dfrac{\pi}{2},\ \pi,\ \dfrac{3\pi}{2}$のとき, 点 $\mathrm{Q}(a\cos\theta,\ b\sin\theta)$での法線の方程式を求める.

$\mathrm{P}(X,\ Y)$$C$上の点 $\mathrm{Q}(a\cos\theta,\ b\sin\theta)$に対し, 直線$\mathrm{PQ}$が,点$\mathrm{Q}$での$C$の法線であるとする.

$\mathrm{Q}$での$C$の接線は

\begin{displaymath}
\dfrac{\cos\theta}{a}x+\dfrac{\sin\theta}{b}y=1
\end{displaymath}

である.その法線方向が $\left(\dfrac{\cos\theta}{a},\ \dfrac{\sin\theta}{b} \right)$である.

$\overrightarrow{\mathrm{PQ}}=(a\cos\theta-X,\ b\sin\theta-Y)$がこの法線方向と平行であるので,

\begin{displaymath}
\dfrac{\cos\theta}{a}\left(b\sin\theta-Y \right)-
\dfrac{\sin\theta}{b}\left(a\cos\theta-X \right)=0
\end{displaymath}

$0<\theta<2\pi,\ \theta\ne \dfrac{\pi}{2},\ \pi,\ \dfrac{3\pi}{2}$なので,

\begin{displaymath}
a^2-b^2=\dfrac{aX}{\cos\theta}-\dfrac{bY}{\sin\theta}
\end{displaymath}

である.

この包絡線を求める.

$C$上の点 $\mathrm{Q}(a\cos\theta,\ b\sin\theta)$での法線が,求める包絡線と接する点を $(x(\theta),\ y(\theta))$とする.このとき,

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
a^2-b^2=\dfrac{ax}{\cos\theta}-\dfrac{b...
...cos^2\theta}+\dfrac{by\cos\theta}{\sin^2\theta}
\end{array}
\end{displaymath}

が成り立ち,この解が包絡線を媒介変数$\theta$で表したものである. これを解いて

\begin{displaymath}
ax=(a^2-b^2)\cos^3\theta,\ \quad
by=(a^2-b^2)\sin^3\theta
\end{displaymath}

媒介変数を消去して

\begin{displaymath}
(ax)^{\frac{2}{3}}+(by)^{\frac{2}{3}}=(a^2-b^2)^{\frac{2}{3}}
\quad \cdots\maru{3}
\end{displaymath}

を得る.

さらなる性質

縮閉線上の点での接線は,伸開線との交点における伸開線の接線と直交している. 縮閉線上の同じ点から,他にも伸開線に法線が引ける場合もある.
楕円の場合,今求めた縮閉線で定まる領域

\begin{displaymath}
(aX)^{\frac{2}{3}}+(bY)^{\frac{2}{3}}<(a^2-b^2)^{\frac{2}{3}}
\quad \cdots\maru{4}
\end{displaymath}

は,楕円に少なくとも4本の法線が引けるような点 $(X,\ Y)$の満たすべき必要十分条件という特徴づけをもつ.
さらに, $ B $ は3本の法線が引けるような点$(X,\ Y)$の満たすべき条件となる.

それを示そう.

$0<\theta<2\pi,\ \theta\ne \dfrac{\pi}{2},\ \pi,\ \dfrac{3\pi}{2}$とする. 平面上の点 $\mathrm{P}(X,\ Y)$から$C$上の点 $\mathrm{Q}(a\cos\theta,\ b\sin\theta)$に少なくとも4本の異なる法線が引けるとする. このような点$\mathrm{P}$の集合は,不等式$\maru{4}$で表される領域となる.

証明

$X>0,\ Y>0$とする. このとき,点 $\mathrm{P}(X,\ Y)$を通る法線となる$C$上の点を $(a\cos\theta,\ b\sin\theta)$ とすると, $\theta\ne 0,\ \dfrac{\pi}{2},\ \pi,\ \dfrac{3\pi}{2}$である.

$0<\theta<2\pi,\ \theta\ne \dfrac{\pi}{2},\ \pi,\ \dfrac{3\pi}{2}$に対して, $f(\theta)=\dfrac{aX}{\cos\theta}-\dfrac{bY}{\sin\theta}$とおく.

\begin{eqnarray*}
f'(\theta)&=&\dfrac{\sin\theta}{\cos^2\theta}aX+\dfrac{\cos\t...
...\dfrac{aX\sin^3\theta+bY\cos^3\theta}{\sin^2\theta\cos^2\theta}
\end{eqnarray*}

$f'(\theta)=0$となる$\theta$ $\dfrac{\sin^3\theta}{\cos^3\theta}=-\dfrac{bY}{aX}$となるとき,つまり, $\tan\theta=-\left(\dfrac{bY}{aX} \right)^{\frac{1}{3}}$のときである.

$-\left(\dfrac{bY}{aX} \right)^{\frac{1}{3}}<0$より,これをみたす$\theta$は, $\dfrac{\pi}{2}<\theta<\pi$ $\dfrac{3\pi}{2}<\theta<2\pi$に1個ずつある. それを$\theta_1$$\theta_2$とする.

$\dfrac{\pi}{2}<\theta<\pi$のとき,$\sin\theta$$\cos\theta$も減少するので, $f'(\theta)$$\theta_1$で正からに負に変わり,$\theta_1$で極大,

$\dfrac{3\pi}{2}<\theta<2\pi$のとき,$\sin\theta$$\cos\theta$も増加するので, $f'(\theta)$$\theta_2$で負から正に変わり,この$\theta_2$で極小である.

したがって, $a^2-b^2=f(\theta)$が異なる4つの解をもつのは

\begin{displaymath}
a^2-b^2>f(\theta_2)
\end{displaymath}

のときであり,3つの解をもつのは \[ a^2-b^2=f(\theta_2) \] のときである.

$\tan\theta_2=-\left(\dfrac{bY}{aX} \right)^{\frac{1}{3}}$より,

\begin{displaymath}
\cos^2\theta_2=\dfrac{(aX)^{\frac{2}{3}}}{(aX)^{\frac{2}{3}...
...ac{(bY)^{\frac{2}{3}}}{(aX)^{\frac{2}{3}}+(bY)^{\frac{2}{3}}}
\end{displaymath}

ここで, $\cos\theta_2>0$ $\sin\theta_2<0$なので,

\begin{displaymath}
\cos\theta_2=\dfrac{(aX)^{\frac{1}{3}}}{\sqrt{(aX)^{\frac{2...
...^{\frac{1}{3}}}{\sqrt{(aX)^{\frac{2}{3}}+(bY)^{\frac{2}{3}}}}
\end{displaymath}

となる.よって,

\begin{eqnarray*}
f(\theta_2)&=&
\dfrac{aX\sqrt{(aX)^{\frac{2}{3}}+(bY)^{\frac...
...{\frac{2}{3}}+(bY)^{\frac{2}{3}}\}^{\frac{3}{2}}\\
&<&a^2-b^2
\end{eqnarray*}

これより,不等式$\maru{4}$が示された.

$X$$Y$のいずれかが負であるときも,図形の対称性と不等式の対称性から, 同様の関係が成り立つ.

$X>0$$Y=0$のとき

平行条件$\maru{1}$

\begin{displaymath}
\dfrac{\cos\theta}{a}\left(b\sin\theta \right)-
\dfrac{\sin\theta}{b}\left(a\cos\theta-X \right)=0
\end{displaymath}

となり, $\theta=0,\ \pi$のとき成立し, さらに $\theta\ne 0,\ \pi$のときは

\begin{displaymath}
\cos\theta=\dfrac{aX}{a^2-b^2}
\end{displaymath}

となる.さらに,この$\theta$が2個とれるのは, $\left\vert\dfrac{aX}{a^2-b^2} \right\vert<1$のときで, このとき条件$\maru{4}$成り立つ.

$X=0$$Y>0$のときも同様である.

$X=Y=0$なら法線は$x$軸と$y$軸にとれ,対応する点は4個ある.$X=Y=0$$\maru{4}$をみたす.

以上から,平面上の点$\mathrm{P}$から少なくとも4本の異なる法線が引ける条件が, $\maru{4}$であることが示された.
3本引ける条件も同様に示される.

関連入試問題が2020年東大理科6番 である.

6番では,楕円は

\begin{displaymath}
C:\dfrac{x^2}{2}+y^2=1
\end{displaymath}

である.$a^2=2,\ b=1$なので,縮閉線は

\begin{displaymath}
(\sqrt{2}x)^{\frac{2}{3}}+y^{\frac{2}{3}}=1
\end{displaymath}

となる.これに対して $0<r<1$を満たす実数$r$に対して,不等式

\begin{displaymath}
2x^2+y^2<r^2
\end{displaymath}

が表す領域を$D$とする. 本問は$D$が領域

\begin{displaymath}
(\sqrt{2}x)^{\frac{2}{3}}+y^{\frac{2}{3}}<1
\end{displaymath}

に含まれるための$r$の最大値を問うている.

この形に限定した最大値なので,あくまで十分条件でしかない.

$r=\dfrac{1}{2}$のときの図は次のようになる.




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Aozora 2020-07-12