二〇二〇年初頭にはじまる、新型コロナウイルスという疫病の世界的な蔓延は、新自由主義段階の資本の放埒な世界支配と改造の結果である。社会主義崩壊後のこの四半世紀、資本の本性をむき出しにした新自由主義が野放図に世界を支配し改造してきた。その結果、資源開発、人口の増加、航空機の発達、経済活動の増加などを通して、動物居住地域と人との接触機会がますます高まり、新しい疫病が蔓延する可能性は高くなり、それが瞬く間に世界に拡散する。疫病の流行そのものは、今後もまた出てくる。
この新型コロナウイルスは、新自由主義の下に公的医療体制を破壊してきたイタリアやフランス、そしてアメリカで大きく拡大している。さらにまた、南米やインド、アフリカにも広がっている。したがって、これは資本の放埒さをそのままに解決することはありえない。利益を貪ってきた多国籍企業の弱肉強食のやり方ではどうにもならないところに来ている。
後に詳述するが「人新世」という地質学上の概念がある。地質学の時代区分で、人類が地球の地質や生態系に重大な影響を与えるようになった段階を意味し、一九四五年のアメリカの核実験を起点とするという意見が多数である。今回の疫病の蔓延はまさにこの人新世に起こった。野放図に世界を支配し改造してきたことに対する生態系の側からの揺り戻しである。
この中にあって、日本はかぎりなく没落してゆく。以下は二〇二〇年四月の『日刊ゲンダイ』による。
一人当たりGDPの世界順位でも、九〇年代は常に一桁で二〇〇〇年には二位だったのが、安倍政権になってからは、民主党政権時代の十位台から一気に下降し、一八年は二十六位。アジア・中東では七位。一位マカオは日本の二倍、三位のシンガポールでも一・六倍もある。
日本の大学はアジアだけで見ても(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション・ランキング)、十位に入るのは八位の東大のみ。二十位でも、中国六校、韓国五校、香港五校と比べて日本は二校である。経営大学院(MBA)の世界ランキングでも、百位までに日本はない。
最近の調査(科学技術振興財団)では、先端百五十一分野の有力論文数の各分野一位は全て米国と中国だった。日本は二位に入る分野さえなく、五位以内に入れたのもわずか十九分野。最重要分野といわれるAIでは、世界十位と大きく遅れている。
世界で競争できない理由の一つに英語力の欠如があるが、こちらも、調査対象百カ国中、日本は五十三位(EFEPI英語能力指数)。アジア二十五カ国中でも十一位。韓国六位、ベトナム七位、中国九位より下である。
情報通信技術(ICT)を利用した教育を頻繁に行う中学教師の割合は、一位デンマークの九十%に対して、日本は十八%。経済協力開発機構(OECD)加盟国等四十七カ国中四十六位である。
これがアベ政治の結果であり、根なし草近代の結末である。この記事があげている指標において、間違いなく日本は没落し続ける。