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日本国憲法第九条こそわれわれの自主憲法である
2004.1.20 

日本国憲法

第2章 戦争の放棄

第9条【戦争の放棄,軍備及び交戦権の否認】

日本国民は,正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し,国権の発動たる戦争と,武力による威嚇又は武力の行使は,国際紛争を解決する手段としては,永久にこれを放棄する。

前項の目的を達するため,陸海空軍その他の戦力は,これを保持しない。国の交戦権は,これを認めない。

  憲法改定に向けた動きが急である。日本国憲法第九条を破棄し、自衛隊派兵に対する制約と、アメリカとの共同軍事行動への制約を取りのぞこうとしている。この現在の動きはアメリカの世界戦略の一環である。アメリカと同盟を結ぶ軍事大国を東アジアに出現させようということである。アメリカ帝国主義による世界の再編成そのものである。

  改憲を推し進めようとするものが、国内的に用いる論法は、「日本国憲法というのは我々自身が作った法律ではない。占領下、米国人を中心にした外国人たちに押しつけられた法律だ。だから国民主権の行使として、憲法を改定しよう」である。これは改憲の真の意図をごまかし、多くの人間を改憲の土俵に引き入れるための主張である。それを明らかにするためには、日本国憲法成立の歴史を確認しなければならない。

  日本国憲法は、第二次世界大戦における反ファシズム連合の勝利、日本軍国主義などファシズム枢軸国の敗北の結果生まれた。天皇は人間宣言をし、財閥は解体され、社会主義者や民主主義者は獄中から解放され、非合法下にあった共産党も合法化され、逆に軍国主義者は公職を追放された。そして一九四七年五月三日に戦争放棄をうたった日本国憲法が公布された。第九条は、アジアへの侵略戦争にかり出され死んでいった多くの日本人、日本軍国主義によって殺され、また反ファシズムのたたかいに命をささげたアジアの人々の余りにも大きい犠牲のうえに生まれた。日本軍国主義と闘った世界の人民がかちとったものである。

  アメリカの占領政策はその後変化する。中国革命の進展と中華人民共和国の誕生を直接の契機として、アメリカの国家政策は反共産主義に転じていく。その過程でアメリカは日本を忠実な目下の同盟国とし、日本の再軍備を進める。軍国主義者の復活とその反対にレッドパージがはじまる。日本軍国主義の流れをくむ日本の保守主義者は早くも一九五四年には改憲を言いはじめる。そのときのうたい文句が「自主憲法制定」であった。

  ごまかされてはいけない。確かに第九条は、日本軍国主義の流れをくむ者にとっては「自主」でない。軍国主義者が公職を追放されている間に日本国憲法は公布された。彼らにとっては「押しつけられた」ものだろう。だがわれわれにとっては自らの犠牲のうえにかちとった自主憲法なのだ。

  大義なきイラク戦争を推し進めたアメリカは、道理をもって人々を納得させる力を失った。今、アメリカの力は軍事力だけである。日本軍国主義者とその流れをくむ今日の日本の支配層は、アメリカの軍事力一辺倒の世界の再編にすり寄り、この際憲法を改定し第九条を破棄しようとしている。その策動を見抜こう。

  軍事力が力ではない。大義とその下に団結する人々の力、これが本当の力である。これを欠いた帝国アメリカは衰退過程に入っている。これに対して、第九条は軍事力に頼らない道を示している。物質的繁栄よりも人間の尊厳を第一とし、人々の心を一つにした力を背景に道理をもって内外政治をおこなう。生産第一主義、物質万能主義、拝金主義、弱肉強食の世ではなく、人間性の豊かさと人間の尊厳と人間としての連帯と共生、ここに道がある。これが第九条の精神である。この精神は今こそ新しい。第九条に誇りをもって、新しい時代の大義を示そうではないか。