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テロ対策特措法延長問題 07/09/22

  テロ対策特措法のを延長し、インド洋での海上自衛隊の給油活動を続けようとする日本政府と帝国アメリカは,国連安保理を舞台に浅はかな猿知恵を使い、結局、国際政治の物笑いになった。賛成はした中国やフランスも底の浅い日本外交を軽蔑している。

  ことは、アフガニスタンで活動する国際治安支援部隊(ISAF)の派遣を1年延長する決議だった。01年に始まったこの部隊は、1年ごとに全会一致で活動の継続を決議してきた。今年もそうなるはずだった。この国連安保理の決議に、海上自衛隊が参加している米主導の対テロ作戦「不朽の自由」(OEF)の海上阻止行動に対する「謝意」が盛り込まれた。これにロシアが反発して棄権に回り、全会一致の慣例が崩れてしまった。 ロシアの言い分は、米主導の多国籍軍がやっているOEFは国連の枠組みの外のことであり、安保理はその詳細を承知していない。それを突然、前文とはいえ決議に含めろと言われても判断しかねる、ということで至極まっとうなことであった。確かに、ISAFは明確な国連決議に基づき、アフガン和平のために設置された。一方、OEFは米国が9・11テロ直後から自衛権の行使として始め、各国が加わった。二つの成り立ちは違う。筋違いの「謝意」がまぎれこんできたのは、日本の事情からだった。

  参院選挙で敗れた自民党は、国際公約だとしてなんとしてもテロ対策特措法を延長しようとしている。そのための見えすいた芝居が「謝意」を紛れ込ませることであった。そして、ロシアの反発を予想もできず、よけいに傷口をひろげた。日本外交の失敗である。これで自民党が画策してきた日本の安保理常任理事国入りも遠のいたと見るべきだ。国内政治のために、全会一致で行われてきたISAF派遣延長決議で初めて棄権を出したのである。安保理の統一より国内政治を優先したのだ。誰が常任理事国入りに賛成するだろうか。

  自民党は国際公約だというが、外で言えば何でも公約になるのなら、言ったものがちだ。国内で議論があるのに勝手に公約した安部首相の責任が問われるべきものだ。海外で言ったらなんとしても守らなければというのは島国の悲しい性根に過ぎない。22日には次のニュースも入っている。

  国連のケーニヒス・アフガニスタン担当事務総長特別代表は21日、国連本部で記者会見し、19日に採択されたアフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)の延長決議について、米国主導の「不朽の自由作戦(OEF)」への謝意を示した部分に、日本が給油などで参加する海上阻止活動への言及が盛り込まれたことが、ロシアが棄権した原因だとの認識を示した。

  ケーニヒス氏は、同決議は全会一致で採択されることが望ましかったとした上で、「ロシアとその他の国の対立は、これまでになかった国際支援の一つの要素への言及をめぐるものだ」と述べた。日本の高須幸雄国連大使は20日の記者会見で、「ロシアの棄権は(ドイツの国内事情で)採決を急いだからだ」との認識を示していた。

  高須大使は、まったくよく言うよ、である。これでドイツも自民党政府を内心で軽蔑である。日本外交はどうしてこのように浅はかで見苦しいのであろうか。

  『テロ対策特措法』とは正確には「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法(平成13年11月2日法律第113号)}という長ったらしい名前をもつ特措法だ。テロ対策特措法の下で自衛隊は何をしてきたかは以下などに詳しい。◇テロ対策特措法の下で自衛隊は何をしてきたか

  この問題は、9・11の本質からふり返らなければならない。それが次のいずれかであることは、もはやアメリカ国民も認めるところだ。

(1)9・11当時多発テロは帝国アメリカの自作自演であった。
(2)アメリカ政府はテロ情報をつかみつつ、これを黙認した。

  これらは以下に詳しい。◇9・11事件は謀略か−21世紀の真珠湾攻撃とブッシュ政権(緑風出版) ◇9・11事件の省察―偽りの反テロ戦争とつくられる戦争構造(凱風社) ◇9/11 Press for Truth 日本語版公式サイト  ◇9・11事件の真相と背景 ◇9・11事件の真相(PDF)

  おそらく事実は(1)と(2)の間にあるのだろう。9・11は凋落をはじめた帝国アメリカが打った謀略であり、これを機にアフガン戦争、イラク戦争と戦火は拡大した。アフガン戦争はアメリカが有志連合を率いて単独ではじめたものだ。国際治安支援部隊(ISAF)の派遣はその後混乱するアフガン情勢を踏まえて国連が派遣したものである。これ自体、アメリカとの覇権争いの側面もあるのだが、とにかく自衛隊はISAFに参加するのではなく、アメリカの単独戦争に参加し、補給活動をしているのだ。これに参加しているパキスタン・ムシャラク政権がアメリカに補給されたのでは国内的にもたないから、日本が補給しているのだ。

  しかし世界はもはや帝国アメリカの思うようにはならない。アフガニスタンでもイラクでもブッシュ米政権の先制攻撃戦略は破たんした。かつて日本軍国主義は謀略によって柳条湖事件・盧溝橋事件を起こし、居留民保護の名目で戦火を拡げ、最後には敗北した。帝国は戦争によって滅亡する。9・11事件は帝国アメリカが具体的に滅亡をはじめた画期である、後世、歴史にはそのように書かれるだろう。そんなアメリカにつき従う目下の同盟者・日本政府は奴隷そのものであり、売国奴の浅ましくも醜い姿をさらしている。

  日本人民はこの政府をのりこえる智慧を生みださなければならない。不可能ではないと考え、これまで準備してきた。一人一人の力は小さい。力をあわすことがもしできなければ、それはそれでまた、一つの教訓を残すだろう。