玄関>転換期の論考

アメリカからの自立戦略を 07/12/12

  二〇〇七年は、イラク戦争での帝国アメリカの敗北と国際政治におけるアメリカの力の衰退、およびアメリカのバブル景気の崩壊と長期にわたる新型恐慌のはじまりという政治経済に両面での帝国アメリカの衰退が決定づけられた年となった。

  アメリカからの自立を実現し、人間としての尊厳をとりもどす政権、これは歴史の要求である。日本はアメリカからの自立を果たさなければならない。そのために、系統的かつ戦略的に準備を進めなければならない。この秋に明らかになったいくつかの事実からそれを再確認する。

  1) イギリスの国際戦略研究所(IISS)は九月十二日、年次報告「二〇〇七年版戦略概観」を発表した。同報告は、帝国アメリカのイラク戦争敗北で、アメリカが国際社会で影響力を決定的に失ったことを確認し、従来親米であった湾岸諸国やアジアでも、アメリカに依存しない外交と安全保障政策が模索され、国際政治の底流が決定的に変化したと分析した。

  以下は『しんぶん赤旗』九月十四日から。

   報告は、「イラク侵略以来米国の著しい権威の失墜の影響が世界で感じられている」と指摘。特に、湾岸諸国が「主要同盟国であり、安全の保証人である米国の明瞭(めいりょう)な弱体化とイランの台頭に直面」し、「将来の自衛策を講じている」と述べ、例として、サウジアラビアが中国とロシアとの関係強化に動いていることを挙げました。

   また、東アジア、東南アジアについて、米国との関係を重視しながらも、「新たな安全保障関係や地域メカニズムを追求しつつあり、それには、米国が含まれないものもある」と述べ、注目しました。

   報告は、米国のイラク戦略について「これまでのすべてが間違った仮定に基づいており、成功を勝ち得ないのはあまりにも明瞭となった」と述べ破たんを強調しました。

   アフガニスタンについても「成功するかどうかで悲観的な見方が広がっている」「自爆攻撃が急増し、武装勢力や過激主義が、これまで平和的だった地域に広がっている」として、情勢の悪化を指摘。また、民間人死者を増大させる米軍の作戦は「逆効果だ」と、欧州諸国は「遺憾に思ってきた」と述べ、同盟諸国の間でも、米軍の軍事作戦に反発が広がっていることを記しました。

  帝国アメリカは歴代の帝国と同じ道、つまり「帝国主義は戦争を通じて崩壊する」という道を歩んでいる。イラク戦争を通じて、地球上最後の帝国、そのアメリカが崩壊しつつある。アメリカはもう立ち上がれない。アメリカのバブル経済ははじけ、双子の赤字は膨れあがり、早晩ドルの崩壊は避けられない。

  世界はアメリカから離れ生き延びる術を模索している。世界の至る所で反乱が起こっている。アメリカはもう政治的にも、経済的にも、そして軍事的にも「昔日のアメリカ」ではない。十一月末の「中東和平会議」はイラク戦争敗北の象徴でしかない。

  ところが、この中にあって日本の福田自民党政権は、破綻した帝国アメリカのあいもかわらず従属し、奴隷の如くに媚びへつらっている。福田政権はイラク戦争に加担し、属国の如くアメリカに従い、没落するアメリカと心中の道を選択した。これだけ多くの問題を国内にかかえながら、福田内閣はそれらの問題を放置して、ひたすらインド洋における給油問題に走っている。

  2) 今年も一〇月十八日、毎年恒例の「年次改革要望書」というのが、米国から日本国へ届いた。

  これは、正式は「「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく要望書」(The U.S.-Japan Regulatory Reform and Competition Policy Initiative)」といって、本年度分は、2007年10月18日日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書である。

  これは一九九三年のクリントン大統領と宮沢首相との首脳会談ではじまった。その仕組みとは、(1)毎年秋に、政治・経済のあり方について、アメリカが文書で注文をつける、(2)その注文書にそって、日本政府がその実施方を検討し、実行に移してゆく、(3)その実行状況をアメリカ政府が総括し、翌年春、その成果をアメリカ議会に報告する。というものである。
このシステムは、いまも続いている。日本政府はこれを受け取ると、これは農水省の分、これは経産省の分というように仕分けして各省にくばり、担当の省庁がその対応策を研究して、できるものから実行に移してゆく、その進行状況を日米の担当者が定期に集まって点検し、翌年三月には、アメリカ政府がその全成果を「外国貿易障壁報告書」にまとめて議会に報告する。合意の翌年九四年から始まり、「郵政民営化」もこのシステムを通じて要求された。

  二〇〇七年分では、規制改革路線の継続を迫るもので、具体的には、次のことを求めている。
(1)米企業が強みを持つ医療機器や医薬品分野の市場開放。(2)銀行窓口での保険商品販売については今年12月までに全面解禁する。(3)物流コストの引き下げ。(4)郵政関連では、ゆうちょ銀行やかんぽ生命保険と民間企業との間で課税や当局による監督基準を同一にする、郵便事業の通関手続きで差別的な取り扱いをしない。

  これは内政干渉であり、これを受け入れているということは完全に日本がアメリカの属国であるということである。このような上下関係が制度化されている国は、日本以外にはない。これが今の日米関係である。年次改革要望書によって小泉改革が進められ、新自由主義という剥き出しの資本主義経済となり、階級格差が拡大、出口なき「働いても貧乏人」が大量に生み出されたのである。

  ここからの結論は明白である。

  日本は真の独立と平和が求められている。日米同盟を断ち自立を果たすという基本戦略のもと、アメリカ政府と粘り強く交渉しまた闘い、内政干渉をやめさせ、米軍基地を返還させねばならない。その事実を踏まえ日米安保条約の破棄に進まねばならない。また、日本政府は膨大なアメリカ国債を保持している。これは遠からず二束三文になる。歴代の自民党政権は低金利を続け破綻しつつあるアメリカに資金を供給してきた。またアメリカ国債を買い続けてきた。国民の財産をたたき売る行為である。系統的にアメリカ国債を手放し、国民の資産を守らなければならない。

  働き人がまっとうな評価を受け、人間としての尊厳を取りもどせる政治を回復しなければならない。地方がゆとりを持って穏やかに繁栄する仕組みを生み出すことは可能である。

  3) 思いやり予算日米合意。一体何が思いやり、か。駐留アメリカ軍の費用を世界中のアメリカの同盟国が少しは現地政府が負担しているが、それら現地政府負担総額の実に52%は日本政府が負担している。日米地位協定にさえよらない、法的根拠の全くない予算である。光熱費や土地代まで含めて5000億円規模である。日本国内では生活保護費の切り下げに象徴されるように「弱者切り捨て」政策を進めながら、その一方で、毎年膨大な法的根拠のない奉賛金を上納しているのである。アメリカ軍のグアム移転では総計5兆円規模の負担を日本が負う。

  これが今の日米関係である。そしてその帝国アメリカは凋落しつつある。日本はこのままアメリカと心中するのか。