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■元谷前文に見る外因論 09/06/23

先日土曜日は京都に泊まった.泊まったのは「アパホテル京都駅 堀川通」.耐震偽造問題のあったホテルである.一部補強工事後営業再開だったはず.ホテルそのものは金額の割に悪くはなかった.これは念のために.実質の経営者が,例の田母神俊雄元航空幕僚長がその職を罷免されるもととなった懸賞論文を募集した人,つまり元谷外志雄氏である.田母神氏の論文を含む「懸賞論文受賞作品集」が各部屋においてある.その巻頭に元谷外志雄氏の「はじめに」が載っている.田母神俊雄氏のは前に雑誌で読んでいたが,時間があったので元谷氏はどんなことをいっているのだろうと,メモをとりながら「はじめに」を読んできた.

これを読んでの率直な感想は,模試のできが悪かったときにいろいろ原因を外に求めていいわけをする生徒の姿である.この三つの主張はどれも外因論である.「謀略で始めさせられた」,「暴発させられた」,「押しつけられた」と相手に「はめられて何々させられた」ということばかり言っている.しかし,はめられたというのなのら,なぜはめられたのか,その内部の要因は何だったか,まずそれを省みたうえで歴史的事実にもとずいて論じなければならない.元谷氏が右翼であれ軍国主義者であれ,それは個人の思想信条の問題で自由である.しかし,外因論に終始する論には聞くべくことが何もない.元谷外志雄氏は「いまこそ日本人は覚醒すべき時だ」と言っている.が,人に説教を垂れる前に元谷氏自身が少しは目を覚まし,歴史の真実と向きあう勇気をもたなければならない.

私は基本的に歴史を謀略やテロで変えることはできないと考えている.日本軍国主義はそれこそさまざまの謀略を用いて戦線を拡大し事態を打開しようとしたが,結局は敗北した.軍国主義が永続することはありえない.憲法九条は,日本やアジアの幾多の人々の犠牲のうえにわれわれがかちとったものである.もちろん当初アメリカ側に日本を非武装化しようという意図があったのは事実である.元谷外志雄氏はそこで日本は核武装すべきだと結論する.私は,軍事を必要としない政治力を培い能動的非武装をめざす.内部に道理にもとづく力があれば軍事は方法に過ぎない.いろいろいいわけをする外因論の生徒は力が伸びない.内からの力によってやっていこうという内因論の態度があらゆる面で大切だ.