鳩山政権はやはり高校無償化から朝鮮学校を除外する方向だ。第三者機関を置くとか言っているが人選で決まるのだから形式に過ぎない。私は高校無償化から朝鮮学校を除外するのに反対だ。私は昔高校教員をしていた。何人もの在日朝鮮人の生徒を担任していた。その子らの家庭の歴史を聞くと、誰一人として好きこのんで日本に来た者はいない。一人は祖父が強制連行で日本に連れてこられた。日本による拉致である。一人はこれも祖父の代に土地を日本に奪われ仕方なく日本にわたってきていた。いま日本にいる朝鮮高校の生徒たちはもう在日四世という世代ではないだろうか。彼らの祖父母やそのもう一つ前の世代は、朝鮮半島が日本の植民地になったために仕方なく日本にきているのだ。望郷の思いを抱いて死んでいった祖父母たち。その彼らを高校無償化から除外するというのか。日本は北朝鮮とは戦後処理がすんでいない。この強制連行や植民地支配の歴史はまだ過去のことではない。
橋下知事は金正日の肖像をはずせという。私がはじめて担任した朝鮮人生徒の家を訪問するとその家には金日成の肖像が掲げてあった。30年前のことだ。生徒のお祖父さんは故郷で生活できず日本に来た。望郷の思い強く、しかし故郷に帰ることは現実には不可能だ。そのときせめて自分を失わないために金日成の肖像を掲げていたのだ。それがその家族の拠り所だったのだ。何の政治活動をするわけでもない人だった。そういう祖父母を見て育った朝鮮学校の生徒が金正日の肖像を見る目はわれわれとはまったく違うだろう。日本人の側はそのことを想像することができなければならない。橋下のような若い人が彼らの歴史を踏まえることなくあのようにいうことは人間として恥ずかしいことなのだ。どのような教育をするかは民族学校の自由である。その原則を日本の側はもたなければならない。日本もまた多くの日本人学校を世界の各国に置いている。お互い様ではないか。
鳩山政権はもし本気で東アジア共同体を言うのなら、まず北と戦後処理を話しあうべきなのだ。そのうえで、強制連行と拉致を、同じ二十世紀の残された問題として解決するしかないのである。前にも書いたが、たとえ国家の間で未解決の問題があっても、その下にある人々の基本的人権は守られねばならない。それが拉致に反対し拉致されたものを返せといってきた根拠だ。ところが今回もし拉致問題があるから無償化から除外するとなれば、この根拠が失われる。教育内容がどうのこうのは誰でも分かるように口実に過ぎない。大阪の橋本知事が正直に言ってるように、これは拉致問題が進展しないことへの報復以外の何ものでもない。しかし、もし無償化からの除外を決めれば、北にすれば行方不明者の調査をする必要もないことになる。もう拉致問題は永遠に解決しないだろう。
資料いくつか
「高校無償化」措置を朝鮮学校に適用することを求める大学教員の要請書
中井洽とは誰か――新政権人事に見る朝鮮人への弾圧強化政策
レイシズムを法制化する高校「無償化」法案に反対する
国連・人種差別撤廃委員会による日本審査概略
その他多くのリンクがここにある。
村野瀬玲奈の秘書課広報室