4月20日にメキシコ湾にある石油メジャーBPの採掘現場から石油が流出しはじめて2ヶ月を超えた。この2ヶ月、毎日毎日火山の噴火のように石油がメキシコ湾に流出してきた。深海は高圧であり、そこから噴出する石油の圧力は途方もなく大きい。メキシコ湾の深くにたまった石油はこの先ハリケーンで湾内をめぐり、大西洋に出て欧州の大西洋岸、あるいは地中海にも押し寄せるのではないかと言われている。これについては 「Gulf Oil Spill "Could Go on for Years and Years」 にも記事があり、その翻訳が 「メキシコ湾の原油流出はこれから何年も続く」 にある。ここに今後被害の予想される地域が出ている。
この事故は1986年のチェルノブイリ原発事故、あるいはそれ以上の歴史上最大の環境的な大災害になりつつある。チェルノブイリ原発では、事故発生時に4号炉で動作試験が行われていた。しかし、責任者の不適切な指示や、予期せぬ事態の発生により、不安定状態から暴走に至り、最終的に爆発した。事故後の政府の対応の遅れなどが重なり被害が甚大化・広範化し、史上最悪の原子力事故となった。当時のソ連邦の社会的・技術的な退廃が根底にある。今回の石油流出もBPが安全への配慮よりも経費削減を優先した結果であり、その後、BPもアメリカ政府も事態の深刻さを見誤って責任をなすりつけあい対応が後手に回った。今も噴出は続いており、回収はおぼつかない。
メキシコ湾石油流出事故は歴史的な意義においても、現代のチェルノブイリ原発事故となるのではないか。ソ連は1991年に崩壊した。チェルノブイリ原発事故から5年後であった。ソ連崩壊の直接の原因はアフガン戦争とチェルノブイリ原発事故であった。アフガン戦争ーチェルノブイリ原発事故―ソ連崩壊。アフガン戦争ー石油流出ー?。そう考えると、昨日アメリカのアフガン駐留司令官解任は示唆的である。アメリカのアフガン戦争、イラク戦争も泥沼である。これは今後NATOの解体に帰結するかも知れない。それ以上にアメリカ本体がどのようになるのか。今はそういう段階である。「流血と流油 「抑止力」効かず 崩壊寸前のアメリカ」のような記事も出るようになった。そこに引用されているジェームズ・キャロルの一文は考えさせられる。
ソ連邦と「社会主義陣営」の崩壊は、チェコ、ポーランドなどの民主化運動、ハンガリーなどの人民の逃散、ベルリン蜂起等の大衆運動が力であった。沖縄の怒りと反基地闘争は、ギリシアやスペインなど南欧の労働運動などとともに、NATOや日米同盟など、アメリカを盟主とする諸同盟を解体させる原動力のひとつになってゆく。歴史がこのように動くことは、好き嫌いや願望の問題ではなく客観的な歴史過程の問題だ。歴史は到達すべき段階にまで必ず到達する。
日本は参議院選挙である。本来、争点はアメリカ後の世界で日本はどのように進むのか、でなければならなかった。しかしいつまでもアメリカにすがりたい日本の官僚が押し戻してきて、今回それは争点になっていない。この問題に正面から取りくむ政権ができるまで日本政治は紆余曲折をくりかえす。