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■ 歴史の曲がり角 11/11/13

2011年そして来年2012年は、後の世から見れば、あのとき歴史は大きく曲がったのだといわれるようなときになるだろう。しかし、ではどちらに曲がるのかは、未だ決していない。すべてはこれから、それが現段階である。

▼野田首相が、TPP参加を表明した。その会見のあと、彼は真っ先に東京に滞在していたキッシンジャーに報告している。まったくこれは、悪代官がご主人様の代理人に、「遅ればせながらTPPに参加させてもらいます」と報告し、「ごくろうであった」と声をかけられている図である。さっそくアメリカは、「牛肉・車・日本郵政」 米、二国間協議で見直し提起へと、動いている。その中心は郵政であり、ここにある円資産をアメリカに持ちだすことが狙いである。アメリカはTPPでの合意を待つこともできない。

これを見ると逆にアメリカの焦りがよくわかる。しかし、すべてはこれからである。ここからは内政である。また、これまでに参加を表明しているアジア各国とアメリカとの交渉もまだまとまってはいない。ただ、最悪のことは考えておかねばならない。それは、すでに書いてきたように、金融の自由化の名の下、日本郵政にも外資が入り込み、金融危機を起こして郵政を揺さぶり,それを税金で穴埋めするという形で、日本の金融資産がアメリカに流れる。それがいまEUで起こっていることである。あれは、結局EUの税金をアメリカ金融資本に流すということであり、そのことに気づいた多くの人々が、蜂起している。それがまたアメリカ内にもおよんでいる。一ヶ月のTPP騒動は日本の政治地図を皆の前に明らかにした。これはいいことだ。野田政権が完全なアメリカ隷属政権であることが明白になり、さらに凋落するアメリカが年老いたキッシンジャーを日本に派遣するほど追いつめられていること,等々が明らかになった。

▼「大阪の将来を、府民の皆さんに選択していただく機会を設定した」─10月22日、大阪府の橋下徹知事は、府議会に辞職願を提出。大阪市長選挙へ出馬した。大阪府・市首長選挙の両方で勝利を狙う。橋下と「大阪維新の会」は「大阪都構想」と、「教育基本条例」「職員基本条例」の実現を掲げている。何か現状を打破してくれるのではないかという期待を受けて、選挙も優勢に進めている。しかしこれは小泉の郵政改革選挙と同じである。いちばんその改革で被害を受けるものが、支持をする。公務員への反感を最大限に利用している。

彼の政治哲学は独裁であり、それはまさに現代のファシズムである。もとより、このようなファシズムが出てくるとことを許したわれわれの側の問題は十分に考えなければならない。それはともかく、歴史の類似をたどれば、現在はかつてヒトラーがミュンヘンでワイマール共和国に対して一揆を起こした段階である。彼はここを足がかりに国政に出ようとする。実際、危機の深まりの中でのし上がることもありうる。最悪のことを考えねばならない。あの手法で石原都政と連携し、弱肉強食の新自由主義を教育分野や厚生福祉分野に行きわたらせ、そして、アメリカに登場するファシズムと連携するだろう。そうなっても最後はヒトラーと同じことになる。しかしあまりにも犠牲が大きい。ファシズムの芽は大阪で摘むべきだ。大阪の市長選、知事選もまた一つの曲がり角である。

▼しかしこのような日本内外の状況よりも大きい問題は、イスラエルとイラン、そしてシリアに関する問題である。今年の春から続く一連のアラブの春の結果、エジプトはもはや親イスラエルではない。ここにきてにわかにイランの核疑惑が大問題となりつつある。国際原子力機関(IAEA)が最近の報告書の中でイランの核兵器開発の疑惑についてはじめて「具体的な根拠」を示した。イランは否定している。しかし米国は対イラン追加制裁を行うといいはじめている。もはやアメリカにその余力はないが、この機にイスラエルがイランを攻撃する危険性が高まっている。起こりえない事ではない。

まさかそれはないだろうと考えられてきた。それは最終戦争になりかねないからだ。しかし、米国金融資本主義の破綻が現実になり、アラブの革命が広がりイスラエルが孤立している。シリアやサウジ政権まで倒れば、アメリカとイスラエルの中東支配は終わる。強欲資本主義が最後にゆくつくのは戦争だ。それが歴史の教訓である。起こりえないことが起きる危機の深まりである。イスラエル問題がどのように歴史を曲がるのか、それがおそらくは最大の問題であり、すべてはそれと連動するだろう。

▼そして来年、沖縄の怒りは爆発する。これを受けてここからすべてを裏返すような日本の変化が起こる。またそうならなければならない。さらにまた、日本の天皇制問題が曲がり角に来ている。アメリカに従属しその価値観のもとにあったた戦後の天皇制がその役割を終えようとしている。ここからどのようにな方向に進むのか。この問題もまた曲がり角に近づきつつある。

▼世界の趨勢は帝国アメリカの凋落であり、カネがすべてという世のあり方のゆきづまりである。年末から2012年はアメリカの財政危機が再発する。経済は人間にとって方法であり手段であって目的ではない。人間は生きるために経済を組織し、力をあわせて働くものだ。逆ではない。人間の原理にもとづく世のあり方を求めて、世界は動いている。これが歴史の基調である。われわれは今、歴史の曲がり角を否応なく生きているのだということを知ろう。