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わる

わる(割る)[waru]

◯ものに力を加え深いひびやすじを入れ、そこからものの内がみえるようにすること。内に入り込み難いものに力を集めて分け入り、内に込りこんでを調べること。ものがなぜそうなるのか、そのことを考え、わけを明らかにすること。

※タミル語<pari>に起源(p〜w 対応)。

◆「わる」は混成過程で熟成し、人の「考え、分析し、判断する」働きを意味する言葉となった。もっとも基本的な言葉の一つである。ものに思いをかけそのもののことを割る、これが人が考えるということである。

▼ものを割る。

▽力を加えて、ものを分け離す。くだいたり、裂いたりする。 ◇「彼は竹を割ったような気性の人だ」 ◇『万葉集』四一九「石戸わる手力もがも手弱き女にしあればすべの知らなく」 ◇『大智度論』天安二年点「骨を破(ワリ)て髄を出す」 ◇『源氏物語』蜻蛉「氷(ひ)召して人人に割らせ給ふ」

▽左右に押し分ける。また、列などの間に分け入って進行をさまたげる。 ◇「列に割って入るな」 ◇『平家物語』九「熊谷おや子は、中をわられじと立ならんで」

▽一定の基準に従っていくつかの部分に区分けをする。区分する。いくつかに分割してくばる。割り当てる。 ◇『宇津保物語』藤原の君「女房の曹司には、廊のめぐりにしたるをなん、わりつつたまへりける」 ◇『方丈記』「所の有樣を見るに、その地、程せばくして条理を割るに足らず」 ◇『青年』森鴎外「縱にペエヂを二つに割って印刷して、插画がしてある」

▽とりこわす。破壊する。 ◇「城を割る」日葡辞書「シロヲvaru(ワル)」

▽ある液体の中に、他の液体をまぜる。多く、まぜて薄めるのをいう。 ◇「酒を水で割る」 ◇『赤痢』石川啄木「葡萄酒の幾滴かを勿体らしく御供水に割って、持たして帰す」

▽(「新鉢(あらばち)を割る」から)処女を破る。

▼ことを割る。

▽理によって物事を分析する。ことをわけて説明する。細かくわけを言い聞かせる。 ◇『淨璢璃』冥途の飛脚‐中「エエ性根のすはらぬきちがひ者と、わっつくだいつしかれ共」

▽人の間柄を裂く。 ◇「ふたりの仲を割る」

▽割算を行う。除する。 ◇「十を三で割ると一余る」

▽すっかりうち明けていう。 ◇「腹を割って話す」

▽ある数量以下になる。切る。 ◇「株価は一万二千円台を割った」、「入場者が百人を割る」

▽土俵など、あるきまった範囲の外に出る。 ◇「あっけなく土俵を割った」

−【わり(割)】「割る」の連用止め名詞。

▼割ること。また、割ったもの。

▽物と物との比率。ある数量の、他の数量に対する比。割合。 ◇「割りと簡単だ」、「見かけの割りに難しい」

▽歩合算で一〇分の一のこと。分の一〇倍、厘の一〇〇倍。 ◇「一割引いておくよ」 ◇『門』夏目漱石「かう云ひ機会に買っておくと、幾割か値安に買へる便宜を説いた」

▽他と比べてみたときの、損得のぐあい。 ◇「割りが悪い」、「割りが合う」、「割りに合う」、「割りを食う」

▽(「理(ことわり)」から)物事がそうなる道理。わけ。また、ぐあい。

▽ある人や物事の性格、状態などから当然推量される程度。 ◇『浮雲』二葉亭四迷「宿料も廉、その割には坐舖も清潔」 ◇『抗夫』夏目漱石「年の若い割には自分の立場をよく弁別(わきまへ)て居た」

−【わり(割)なし】「割り無い」で、物事をうまく打開しようにも、道筋がつかず、どうにもならない状態である。「ことわり(理)が無い」の意ともいわれるが、「ことわり」として熟す以前に「割り」自体に筋道を立てて考え、判断するの意味があり、それができないことをいう。

▼道筋がつかず、どうにもならない。

▽道理に外れている。分別がない。理性でどうにもならない。 ◇『古今集』六八五「心をぞわりなき物と思ぬるみる物からや恋しかるべき」 ◇『源氏物語』桐壺「これもわりなき心の闇になん」

▽無理である。強引である。むりやりである。 ◇『宇津保物語』祭の使「折しもこそあれ、わりなき召しかな」 ◇『源氏物語』宿木「何かは、隔て顔にもあらむ。わりなき事一つにつけて、恨みらるるほかには、いかででこの人の御心に違はじ」

▽どうしようもなくつらい。たえがたく苦しい。こらえきれないほどである。どうにもやるせない。 ◇『源氏物語』空蝉「をととひより腹をやみて、いとわりなければ」

▽やりようがない。どうしようもない。仕方がない。やむを得ない。余儀ない。是非もない。 ◇『源氏物語』総角「わりなき、事のしげさを打ち捨ててまで給ふ」

▽どうしていいかわからない。途方にくれる。困ったことである。 ◇『後撰和歌集』六三〇「男侍る女を、いとせちにいはせ侍りけるを、女いとわりなしといはせければ」

▽やっとのことである。かろうじてである。 ◇『今昔物語』二九・三七「然(さ)て許こそ命は助からめと思得て、破无くして此(か)く隠れて命を存する事は有難し」

▽程度が分別を越えている。どうしようもないほどである。はなはだしい。ひととおりでない。 ◇『源氏物語』夕顔「物怖ぢをなんわりなくせさせ給ふ本性にて」 ◇『伊勢物語』六五「猶わりなく恋しうのみおぼえければ」

▽言いようがないほど美しい。非常に感動的である。 ◇『山家集下「岩に堰(せ)く閼伽(あか)井の水のわりなきは心澄めとも宿る月哉」

▽格別すぐれている。殊勝である。 ◇『平家物語』一〇「みめかたち心ざま、いうにわりなきもので候とて」

▽一通りでなく親しい。分別を越えて親密である。切っても切れない。 ◇『伽草子・福富草紙』「鬼うば憎けれど、さすがわりなき中なれば」

−【われる(割れる)】かたいものに深いひび・すじが入り、そこがはっきりとした切れ目になって、もとの形に戻らないようになること。

▼ものが割れる。

▽力が加えられて物がいくつかに分かれ離れる。破れたり砕けたりする。 ◇ガラスが割れる。 ◇『東大寺諷誦文平安初期点』「法を聞きつる以後は佛(かひ)破(ワレ)て出ぬるが如し」

▽物がいくつかの部分に分かれる。区分、分割される。 ◇票が割れる。

▼ことが割れる。

▽あれやこれやと思って、心が乱れる。 ◇『古今集』一〇五九「われて物思ふころにもある哉」

▽人の間柄が不和になる。別れて対立する。 ◇日葡辞書「クニガvaruru(ワルル)」

▽秘密などがすっかり現れる。また、犯人がわかる。ばれる。 ◇「身元が割れる」 ◇『淨璢璃』狩剣本地−三「破れかぶれ、奥様に知らせ、いっそわれて出よふか」