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かしこい

かしこい(畏い、賢い、恐い)[kasikoi]←[kasikosi]

◯もののちからが、おそれるほどにおおきいこと。

◆上代は、自然の霊力や神の力への畏敬の念を表す。中古以降、さらに、人や生きもの、また存在するものの力が畏敬するほどに優れていることをあらわす。さらにまた心の働きについても表し、このときは「賢い」をあてる。

※タミル語<ketti>由来。

▼おそるべき霊力、威力のあるさま。また、それに対して脅威を感ずる気持を表わす。 ◇「おそるべきだ」 ◇「おそろしい」 ◇『日本書紀』仁徳二二年正月・歌謡「さ夜床を並べむ君は介辞古耆(カシコキ)ろかも」 ◇『万葉集』四三二一「可之古伎(カシコキ)や命(みこと)かがふり」

▽おそれ敬う気持を表わす。もったいない。 ◇「おそれ多い」 ◇『万葉集』九二〇「天地の神をそ祈る恐(かしこく)あれども」

▽畏敬の意味は軽く、「恐縮ですが」の意の挨拶語として用いる。 ◇『源氏物語』花宴「かしこけれど、この御前にこそはかげにもかくさせ給はめ」

▽国柄、血筋、身分、人柄などがすぐれている。尊い。徳が高い。尊敬すべきだ。 ◇『竹取物語』「昔かしこき天竺の聖此の国にもて渡りて侍りける」

▼(賢)才能、知能、思慮、分別などの点ですぐれている。 ◇「この点彼は賢く行動した」 ◇『源氏物語』桐壼「弁もいと才かしこき博士にて」

▽物の品質、性能などがすぐれている。すばらしい。 ◇『竹取物語』「かしこき玉の枝をつくらせ給ひて」

▽人や事柄が尊重すべきほどに重要なこと。それを大切にし、慎重に思う気持を表わす。 ◇『枕草子』八七「こもり、いとかしこうまもりて、わらはべも寄せ侍らず」

▽抜け目がない。巧妙だ。 ◇『源氏物語』東屋「猶一わたりはつらしと思はれ、人には少しそしらるとも、ながらへて頼もしき事をこそと、いとまたくかしこき君にて思とりてければ」