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から〔辞〕

から〔辞〕

◯体言または体言に準ずるものを受ける。一つのたねから芽を出しいのちをつなぐことから、原因、理由や動作の中継ぎの意を表す。さらに時や所の出発点から、あることの成り立つ根拠も表すようになった。

◆こと甲のゆえにこと乙が起こる、成り立つ。

※タミル語<kal>由来。タミル語も関連する語群があり、それは「一つの源があり、そこから発する血の繋がり、水の流れ、道」という意味的連関をもつ(『古典基礎語辞典』)。

▼動作の経由地を示す。上代はこの用法のみである。 ◇『万葉集』一九四五「朝霧の八重山越えて霍公鳥(ほととぎす)卯の花辺柄(から)鳴きて越え来ぬ」

▽原因、理由の意味を表す。「…がもとで」「…のせいで」の意味。 ◇『万葉集』三七六一「世の中の常の道理(ことわり)かくさまになり来にけらしすゑし種子から」

▽動作の経由地。 ◇『万葉集』四〇二五「之乎路(しおじ)可良ただ越え来れば波久比(はくひ)の海 朝凪ぎしたり船楫もがる」

▼動作の起点を示す。中古に現われ、現代に至る用法。上代は、この用法としてはもっぱら「より」の方を用いる。時間的起点を示す場合と、空間的起点を示す場合とがある。

◇『源氏物語』玉鬘「いとうつくしう、ただ今から気高くきよらなる御さまを、ことなるしつらひなき船にのせて漕ぎ出づるほどは」 ◇『新古今集』二「あすからはわかなつまむとしめしのにきのうふもけふも雪はふりつつ」 ◇『催馬楽』本滋き「本(もと)滋(しげ)き本滋き吉備の中山昔より昔加良(カラ)昔可良(カラ)昔より名の旧(ふ)りこぬは今の代のため今日の日のため」 ◇「東京から大阪まで」「窓から顔を出す」「朝から雨が降っている」

▽手段を示す。「…によって」「…で」の意を表わす。 ◇『落窪物語』一「かちからまかりていひ慰め侍らん」 ◇「不足分を貯金から補う」

▽体言または接続助詞「て」を受け、「…から後」「…以上」の意を表わす。近世以後の用法。 ◇「用を済ましてから行く」 ◇「学校まで一里からある」

▽体言を受け、「…からはじめて」「…をはじめとして」の意を表わす。「からして」の形で用いられることもある。 ◇「天才は顔から違う」

▼活用語の終止形を受け、原因・結果を順接の関係において接続する。近世以後の用法。 ◇「飯は食ったからいらない」 ◇「静かだから勉強がはかどる」