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しる

【しる(領る、知る、識る)】[siru]

■[su]と[iru]からなり、[iru]を実現すること、つまり「占有する」が原義。ものを手に入れ手に入れることによってもののことがわかること。「きく」はものを手に入れることなく心をむけてもののことを受けること。それに対して、「知る」はもともと「自分のものにして意のままに支配できるようになる」という「しる(領る)」である。

□タミル語<teri>に起源(t〜s、e〜i 対応)。

◆自分の意の中で対象を認識し、わがものにする。つねに、「手に入れる、ものにする、ものをすっかり自分のものにする」が含意されている。

▼(知)ものの発生や存在を認める。他との区別、対処すべき方法などをわきまえる。もののこと(意味、内容、本質、情趣など)を理解する。 ◇『枕草子』八六「聞きゐたりけるをしらで、人の上いひたる」 ◇『土左日記』「ただ月を見てぞ、にしひんがしをばしりける」 ◇ものの哀れを知らぬ人。 ◇『万葉集』七九三「世の中は空(むな)しきものと志流(シル)時しいよよますます悲しかりけり」

▽実際に行ってみたり、見聞したりする。経験する。 ◇彼はまだ酒の味を知らない。 ◇日本人が原爆を知ったのは、広島が被爆したときにはじまる。 ◇男を知る、女を知る。 ◇『竹取物語』「ある時には、風につけてしらぬ国に吹よせられて」

▽面識がある。 ◇知らない人にはついて行くな。 ◇『平家物語』一〇「高野にとしごろしり給へる聖あり」

▽(その後のことを知る、から)関知する。かかわりあう。下に打消の語を伴う場合が多い。 ◇どうなっても後は知らないよ。

▼(領)ある範囲の土地などを治める。統治する。土地などを領有する。また、品物や建物などを管理する。 ◇『源氏物語』桐壺「遂に世中をしり給べき右のおとどの御いきほひは」 ◇『伊勢物語』六六「むかし、男、津の国にしる所ありけるに」

−【しれる(知れる)】「知る」の受身・使役形で、「他人の知るところとなる」の意を、消極的には受身として、積極的には使役として表現したもの)知られる。また、知らせる。 ◇人知れず悩む。 ◇『万葉集』一四四六「己(おの)があたりを人に令知(しれ)つつ」 ◇『古今集』六三二「人しれぬわが通ひ路の関守は」

▽「し・れた」で「わかりきった。いうまでもない」を意味する。 ◇知れた事よ。 ◇もうけは知れたものだ。



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