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たくみ

【たくみ(工、巧、匠)】[takumi]

■[ta]は「て(手)]である。「たくむ(工)[takumu]」の名詞。[takumu]とは[ta](手)をもって[k](食)を[umu](生む)こと。この「工む」を可能にする根拠としての「巧み」、これが基層の意味である。

◆「たくむ」工夫をめぐらす。計画する。趣向をこらす。

◇『今昔物語』一二ノ一九「昼夜に妻子眷属を養ふはかりごとをたくむ」 ◇『御伽草子』あきみち「さても不思議なる所多くありけることかな、たくみもたくみてこしらへける事よ」

▼人についていう。(工、匠)

こころをわざをもって表そうとする人のこと。

▽手先の仕事で物を作り出すことを業とする人。細工師。工匠。職人。特に木材で物を作る職人。 ◇こだくみ(木工)、かなだくみ(金工)、大工(だいく)。 ◇『源氏物語』宿木「その匠も絵師も、いかでか心にはかなふべきわざならむ」

▽わざにたけた人。達人。 ◇『徒然草』一九三「よろずの道のたくみ、我が道を人の知らざるを見て」

▼ことについていう。(工、巧)

▽もっぱら行う仕事。いろいろ思いめぐらして、見つけ出したよい方法。工夫。趣向。手段。 ◇『散木奇歌集』恋上「明くれは物思ふ事をたくみにて」 ◇『太平記』三「城中工を替へて防ぎける間」

▽はかりごと。たくらみ。計略。策謀。 ◇『伽草子』熊野の本地「さてもこの事かなはむ事の無念さよとて、又いろいろのたくみどもせられけり」

▽美しくしつらうこと。また、美しくしつらえるもの。 ◇『俳諧・曾良随行日記』俳諧書留「美景たくみを尽す」 ◇『小説神髄』坪内逍遙「世の美術家といはるる輩は、彫刻家にまれ画工にまれ、まず其工(たくみ)をなすにあたりて」 ◇『落梅集』島崎藤村「消えはてにけり吾が恋は芸術(たくみ)諸共消えにけり」 ◇『塔影』川井酔茗「芸術(たくみ)の花に咲きちらふ時の力の遠きかな」

▼〔形動〕(巧)てぎわよくすぐれているさま。じょうずであるさま。巧妙。器用。 ◇官憲の追及をたくみにかわす。 ◇『日本書紀』神代上「天鈿女(あまのうすめの)命、即ち、手に茅纏(ちまき)のほこを持ちて、天石窟戸(あまのいはやと)の前に立たして、巧に俳優(わざをき)す」 ◇『古今集』仮名序「ふんやのやすひでは、ことばたくみにて、そのさま身におはず」



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