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ひびき

【ひびき(響き)】[hibiki]←[fifik]

■[i]は「ひ(日)」の[i]と同じ。「ひひき」は「疼き」と漢字が当てられているが、「ひ(日)」にあたって皮膚が焼けることからひりひりと痛いほどに感じられることを意味した。 ◇『日本書紀』歌謡「垣下に植しはじかみ口ひひく」」

◆これから、音や声のひろがりが伝わって、ぴりぴりと感じ取られて、聞こえること。ひびきわたること。とどろくこと。鳴りわたること。ものとものが互いに生命力を及ぼしあうこと。

▼その音や声。音響。震動。 ◇『仏足石歌』「御足跡作る石の比鼻伎(ヒビキ)は天に到り」 ◇『西大寺本金光明最勝王経平安初期点』五「響(ヒヒキ)震ふ雷と音とのごとし」 ◇『声字実相義』空海「五大にみな響き有り。十界に言語を具す。六塵ことごとく文字なり。法身はこれ実相なり」 ◇『徒然草』吉田兼好「打割らんとすれど、たやすく割れず。ひびきて堪えがたかりければ」

▽音や声の末尾。余韻。また、耳に聞こえる音や声の感じ。 ◇『源氏物語』総角「鐘の音かすかにひびく」 ◇『平家物語』一「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり」

▽大騒ぎする。騒ぎたてる。 ◇『宇津保物語』楼上上「馬鞍よりははじめてひびきて急ぎたり

▼世間に広く知れわたること。世の評判となること。とりざた。 ◇『源氏物語』若菜上「わたり給御儀式など、いと、ひびき殊なり」 ◇『露団々』幸田露伴「巻中の一人を文世武としたるは、彼の千山子の豁達を慕ひて、その名の響をとりて負わせぬ」 ◇『三浦右衛門の最後』菊池寛「彼の悪評は駿河一国の隅々に迄響いて居る」

▽関係が他に及んでいくこと。他にさしひびくこと。さしひびき。影響。 ◇『霊異記』上・序(興福寺本訓釈)「善悪の報は影の形に随ふが如く、苦楽の響(ヒビキ)は、谷の音に応ふるが如し」 ◇『吾輩は猫である』夏目漱石「アンドレア、デル、サルト事件が主人の情線に如何なる響を伝えたか」 ◇『故旧忘れ得べき』高見順「それが逆に彼に響いて、仲々心もとなく成ってくる仕儀に立ち至った」

▽心に感じる。感覚に訴える。 ◇『行人』夏目漱石「自分たちには変に響く言葉を使って」

▽俳諧の連句で、前の句に付けるときの技巧の一つ。前の句の感情の動きを受けて、そのまま次の句に表し出すこと。「匂(におい)」「移り」とともに、特に芭蕉連句において、基本的な付け合いの手法とされた。



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