【ま(真)】[ma]
□タミル語<may>に起源。タミル語では「真理、実在、魂、意識」の意。
◆揃っていて完全であるが根本の意味。「片(カタ)」の対語である。それぞれの「片(カタ)」がそろって「ま(真)」である。接頭語であらゆる種類の語の上につき、真実である、欠けるところがない、正確であるなどの意味を表す。また、ほめことばとしても用いる。
このようにして「ま(真)」は最も価値あるものであることを意味した。そしてそれは「二つで完全」を意味していた。この「二つ」は一と一とが両側から寄てきてつくりあげる合一としての「二」である。二つそろってま(真)であるがその「ま(真)」を構成するひとつひとつが「ま」の対語としての「片」である。「真」はその内側に二つの片方を含んでいる。
※「そろう」ことは「そろい踏み、一対」などのように価値あることとされる。
▼揃っている、本格的である、まじめであるなどの意を添える。 ◇ま心、ま人間、ま袖、ま旅、ま弓、ま木、ま熊野。 ※「ま心」とは、別な「ま心」があるということではなく、その人の心の全体をそのものや相手にかけている状態を意味する。 ◇まに受ける。 ◇『万葉集』四三九八「ま袖持ち涙をのごひ」 ◇『万葉集』五三二「うち日さす宮に行く子をま悲しみ留むれば苦し」 ◇『万葉集』四三八八「旅と言(へ)どま旅になりぬ」 ◇『万葉集』四五六七「置きて行かば妹はま悲し」 ◇『古今集』七一三「誰(た)がまことをか我はたのまむ」 ◇『源氏物語』若菜下「女御のおほんためのまごころなるあまりぞかし」 」 ▽純粋にそれだけで、まじりもののない、全くその状態であるなどの意を添える。 ◇ま白、ま青、ま新しい、ま水、ま潮、ま東、ま向い、ま上、ま四角など。「ま白」というのは、白の属性がこの上なく完全にそろった白、ということである。 ◇『万葉集』五二「とこしへにあらめ御井(みゐ)のま清水」 ◇『万葉集』三一八「ま白にそ富士の高嶺に雪はふりける」
▽動植物の名に付けて、その種の中での標準的なものであることを意味する。 ◇ま竹、まいわし、ま鴨。
▽価値があるの意を込めて、ほめことばとして用いる。 ◇ま玉、ま杭(ぐい)、ま麻(そ)、ま葛(くず)。 ◇『万葉集』四三四二「真木柱ほめて造れる殿のごと」 ◇『万葉集』九七「信濃のま弓引かずして」
▽正確である。 ◇『万葉集』一三九三「ま直(なお)にしあらば何かなげかむ」
▽二つそろっている。 ◇『万葉集』三六二七「大船にま梶繁(しじ)ぬき」 ◇『万葉集』四一八七「ま櫂かけい漕ぎめぐれば」