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よむ(読む、詠む)

【よむ(読む、詠む)】[yomu]

▼一つずつ順に数えること。

▽一定の時間的な間隔をもって起こる事象の回数を数えること。 ◇『万葉集』三九八二「春花の移ろふまでに相見ねば月日余美(ヨミ)つつ妹待つらむそ」 ◇『万葉集』四〇七二「ぬばたまの夜渡る月を幾夜経(ふ)とよみつつ妹は我待つらむそ」 ◇『万葉集』二六四一「時守の打ちなす鼓よみ見れば時にはなりぬ逢はなくもあやし」 ◇『万葉集』一三八七「伏超ゆ行かましものを守らふに打ち濡らさえぬ波読まずして」

▽一つ一つ音節を数えながら歌をつくり出すこと。 ◇『竹取物語』「本草につけて御歌をよみてつかはす」 ◇『源氏物語』桐壺「伊勢・貫之によませ給へる、やまとことの葉を」

▽一字ずつ声を出して唱えていく。 ◇『日本書紀』応神記「時に莵道雅郎子、その表を読み、怒りて」 ◇『源氏物語』東屋「絵などを取り出でさせて、右近に言葉読ませけて見給ふ」 ◇『蜻蛉物語』中「夜のふけにしかば、経などよませてなん、とまりにし」

▽(「訓」とも書く)字音語を訓(くん)で表す。漢字を訓読する。 ◇『平家物語』七「春の日とかいてかすがとよめば、法相擁護の春日大明神」

▼一つずつ順に起こることの意味を考え理解することから、事象の内部にあることをつかむ。 「読む」の原義のなかに「かみの言葉を読みとる」意味があり、そこから事象の隱された意味をつかむことに展開した。眼前の事物・行為を見て、その将来を推察したり、隠された意味などを察知したりすること。 ◇「グラフを読む」 ◇『蜻蛉物語』上「このごろよむとてもてありく書とりわすれて」 ◇『少年』谷崎潤一郎「相手の顔を読むやうにぼんやり立った儘であったが」 ◇『資本論を読む』(アルチュセール他)。アルチュセールは、マルクスの『資本論』では、実際には近代思想の基本的な枠組みをこえた新しい知の枠組によって資本主義の批判がなされているが、それはそれとしては明示されていない、したがって『資本論』から新しい知の枠組みを明示的に取り出さなければならない、と考えた。このように文書に明示的には書かれていないが含意されていることを、取り出すことを「文書を読む」という。文書の著者が意識的に含意していたことを読みとるという意味のこともあれば、意図とは独立にその文書の果たす役割としての含意を読むことを意味することもある。

※「聞く」も「読む」も、もののことを把握することであるが、「聞く」は聞く側の解釈を差し挾むことなく、ものそのものが発することをそのままにつかもうとすることであり、「読む」はものの現れた形を考え、そのものの内部に分け入って、つかもうとする。

したがって、まずことを「聞き」とりそしてそのことを「読み」解く。正確に聞かなければ読みは意味がなくなる。



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