【文化(ぶんか)】
文明が、技術の発展段階によって規定される客観的な物質的存在であるのに対して、文化は、人間がその文明のもとで生きていくにあたっての実践的で具体的な方法の総体。
文化の土台は言葉である。『歴史を尊重しよう』から
人は火を自らのものにした。人間が社会を形成する生物となるうえに、火と言葉の獲得は決定的であった。火の獲得は、人をして協同して自然からさちを得る生命とし、この協同の労働が言葉の源となった。まさに、人にとって火は根元的なエネルギーであり、言葉は本質的な方法である。人間は、火という根元的なエネルギーを獲得し、言葉という方法を獲得することによって、はじめて人間となった。火と言葉の獲得は人をして人間たらしめる本質的なものであった。
個体から見たこの発展は、一定の範囲の人が互いに協力して、協同の力で自然に働きかけ、生命を維持し、個体を再生産する生物となった、ということである。人は、長い時をかけて、道具と言葉という手段によって共に働くことを組織する生物へと、発展していった。この段階になるともう新人・クロマニヨン人とよばれるようなホモ・サピエンスであり、生産関係というものが家畜と作物をつくりだすことによってはっきりと形を成していった。
火は文明のもっとも基本的な方法である。言葉は文化であり、そのもっとも基本的な様式である。この二つが結合して、協同して働く人間の労働が実現する。
文化なくして人間の文明はあり得ない。文明なくして文化は無意味である。文明と文化は異なる概念であるとともに、内容において他方なくしてはあり得ないものである。
文明の展開と文化の創造は一体であり、そのように文明の根幹に対応する文化が、人間の文化としての力をもつ。
文化の盛衰は、文明とどれだけ根幹で対応しようとしかに規定される。