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しゃかい

【しゃかい(社会)】世の一つの段階のこと。ながい世のうち、 「新石器革命」によって現れた、個別の家族的な共同体を超えた分業にもとづく人間関係組織のことを社会という。それは現実には階級社会として存在してきたし、それ以外ではあり得なかった。

社会という言葉は、明治八年、福地源一郎(桜痴)が英語の society の訳語としてこの語を用いたのがはじめである。根拠は「近思録−治法類」の「郷民為二社会一、為立二科条一、旌二別善悪一、使二有レ勧有厦恥」であるといわれている。

society は、自然的であれ人為的であれ、人間によって構成される集団とその生活の総称として用いられてきた。村、組合、宗門、企業、など一般的に用いられる。また「市民社会」のように封建制から資本制への移行期初期の理念でありまたその推進母体のこととしても用いられた。このような人間組織はすべて「新石器革命」以降の分業と階級制のもとに存在した。社会とは本質的に階級社会でありそれ以外にはあり得ない。

「社会主義」(英語 socialism の訳語) は、生産手段を社会全体の共有とし、個の私有を認めない社会制度をめざし、資本主義を否定して、生産手段の社会的共有により階級対立のない社会を実現しようとする思想および運動のことである。しかし、「社会」が本質的に階級社会以外にはあり得ないことを見拔けなかったがゆえに、現実に存在したすべての社会主義は二十世紀のうちにすべて資本主義内の改良主義になった。

マルクス主義で、共産主義社会の前段階として社会主義をいうことは今日も有効である。階級制度が存在するもとにおいて、能力に応じて働き、働きに応じて分配を受ける社会をまず実現しようとする。この思想と運動を社会主義といい、めざすものとしての世のあり方を社会主義社会という。


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