問題
平地に 3 本のテレビ塔がある.ひとりの男がこの平地の異なる 3 地点 A,B,C に立って, その先端を眺めたところ,どの地点でもそのうち2本の先端が重なって見えた. このとき A,B,C は一直線上になければならない.この理由を述べよ.
方針
解1
2本の先端が重なって見えたので,3本とも長さが違う.2本の先端が重なって見えたので,3本とも長さが違う.なぜなら,もし同じなら,先端を結ぶ直線が平地と平行となり, 平地から先端を重寝てみることはできない.3本の長さを とし, 最長のものから順にテレビ塔をPS,QT,RU とする. このとき
解2
設定は解1と同様とする.
SP,TQは平行でこれで定まる平面上に,S,T,P,Qがあるので,ST上にあるAもこの平面上にある. この結果,Aは直線PQ上にある. P,Q,Rが共線の場合は,A,B,Cともこの直線上にある.
P,Q,Rが共線でなく三角形を作るとする. と 辺,,の延長線上の点 に関してメネラウスの定理を用いる.
解3
テレビ塔の先端の3点 S,T,U が共線であれば,A,B,Cが一致し, 問題の条件に反する.よって共線ではない.
テレビ塔の先端の3点 S,T,U が定める平面を とする. 3点A,B,C は上にある.
一方,3点A,B,C は平面上にもある. と平地の交わりは直線である.
ゆえにA,B,C は この直線上にある.□
吟味
3点S,T,Uが共線となる場合や,
P,Q,Rが共線となる場合を退化した場合というと,
それぞれの解法には,退化した場合を除かなければならないものがある.
第1の解答は,
メネラウスの定理でもできる内容をベクトルで書いたものだ.
これは退化した場合を含めての証明になる.
第2の解答は,
メネラウスの定理そのものである.
P,Q,Rが三角形を作らない場合を先に断る.
第3の解では,3点S,T,Uが共線の場合を先に断る.
第3の方法はずいぶん違うように見える.
実は「射影幾何学」という立場に立てば, 第3の方法も,平面上のメネラウスの定理を 空間図形から理解するというよく知られた, 「同じことの二つの側面」なのだ.
受験問題の解答としては,やはりみごとな解答というべきだろう. これについては『数学対話』の「デザルグの定理」を参照のこと。