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連立三角方程式[61静岡大]

問題     

$a,\ b$ を実数として

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
\cos 3\theta+2a\cos 2\theta+b\cos...
...\sin 3\theta+2a\sin 2\theta+b\sin \theta=0
\end{array}\right.
\end{displaymath}

をともに満足させる実数 $\theta$ が存在するとき,$a,\ b$ の満たすべき条件を求めよ.


方針

1.
三角関数の連立方程式の問題として解ける.
2.
この連立方程式の2式は$\sin ,\ \cos$に関して同じ形をしている. ド・モアブルの定理という,昨今は習わないが,複素数の三角関数表示を用いることで, 複素数の実部と虚部と見なす方が自然だ.

解1

第2式から

\begin{displaymath}
-4\sin^3\theta +3 \sin \theta +4a\sin \theta\cos \theta +b \sin \theta=0
\end{displaymath}

これから

\begin{displaymath}
\sin \theta=0,\ または\
-4\sin^2\theta +3 +4a\cos \theta +b=0
\end{displaymath}

  1. $\sin \theta=0$ の場合.整数 $n$$\theta=n \pi$とかける.

    これが第1式をみたせばよい.

    \begin{eqnarray*}
&&\cos 3n \pi+2a\cos 2n \pi+b\cos n \pi\\
&=&(-1)^{3n}+2a(-1)^{2n}+b(-1)^n=0\\
&∴&1\pm 2a+b=0
\end{eqnarray*}

  2. $\theta\ne n \pi$ $-4\sin^2\theta +3 +4a\cos \theta +b=0$の場合.

    この式は

    \begin{displaymath}
4\cos^2\theta+4a\cos \theta +b-1=0 \quad \cdots(*)
\end{displaymath}

    となる.また,連立方程式の第1式は

    \begin{displaymath}
4\cos^3\theta+4a\cos^2\theta+(b-3)\cos\theta-2a=0
\end{displaymath}

    と変形できるので,この2式から

    \begin{displaymath}
2\cos \theta+2a=0
\end{displaymath}

    が得られる.つまり解があるとしたらそれは $\cos \theta=-a$ .これを $(*)$に代入して $b-1=0$ を得る. $\theta\ne n \pi$$\theta$ が存在するために $-1<-a<1$ .つまり $b=1\ (-1<a<1)$
以上あわせて,求める $a$$b$ の条件は,

\begin{displaymath}
1\pm 2a+b=0,\ または\ b=1\ (-1<a<1)
\end{displaymath}


解2

\begin{eqnarray*}
&&\left\{
\begin{array}{l}
\cos 3\theta+2a\cos 2\theta+b\cos...
...\sin \theta)
+b=0 \quad (∵ \quad \cos \theta+i\sin \theta\ne 0)
\end{eqnarray*}

したがって二次方程式

\begin{displaymath}
z^2+2az+b=0
\end{displaymath}

が絶対値1の解をもてば,それに対して $\theta$ が定まる.

$z=\pm1$ が解になるときは $1\pm 2a+b=0$

虚数解 $\alpha$ をもつときは,判別式の条件から $a^2-b<0$ $\alpha\cdot \overline{\alpha}=1$ から $b=1$ .したがってまた $a^2<1$

あわせて

\begin{displaymath}
1\pm 2a+b=0,\ または\ b=1\ (-1<a<1)
\end{displaymath}


吟味
このように,三角関数の計算なしにできてしまう.

本問は,実は私が高3のときに学校で使っていた問題集に載っていた問題だ. 演習の時間にこの問題があたった人は解1の方法で解いて黒板に書いていた. 私は解2のようにやった.黒板の解を見て,それよりもっと簡単にできるのに, と思ったことを覚えている.その解を書いた級友の名前や教室の情景を今も そこだけ切り取ったようにくっきりと覚えているので,この解2は自分自身にも印象深かった のだと思う.

複素数では

\begin{displaymath}
a=0\ かつ\ b=0 \quad \iff \quad a+bi=0
\end{displaymath}

なので,連立方程式を複素数一つの式にできる.その結果 $\cos \theta+i\sin \theta \ne 0$ が使え,2次方程式の問題になってしまう. 連立三角方程式ではこの方法が有効なときがある.

しかしさらに考えれば,これはそれほど別な解というわけではない. 加法定理

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
\cos(\alpha+\beta)=\cos\alpha\cos...
...a)=\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta
\end{array}\right.
\end{displaymath}

と,複素数の等式

\begin{displaymath}
(\cos\alpha+i\sin\alpha)(\cos\beta+i\sin\beta)=\cos(\alpha+\beta)+i\sin(\alpha+\beta)
\end{displaymath}

は同等だ. この同等性が根拠になって,加法定理の計算がド・モアブルの定理の中に吸收され,三角関数の計算がないように見えているだけのことだ. 別解といっても同じ根っこから出てきた別解である. 私は高校生のときはまったく違う解法だと思っていた.


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