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正像法・逆像法[典型問題]

高校数学で大切な別解にいわゆる「正像法と逆像法」という話題がある. この一番単純な形は「 $y=x^2+x+1$ の値域を求めよ.」だ.これはどうするか.

正像法では次のように実際の値域の必要条件から考える.

\begin{displaymath}
y=x^2+x+1= \left(x+\dfrac{1}{2} \right)^2+\dfrac{3}{4}
\end{displaymath}

より $y\ge \dfrac{3}{4}$ . それだけでは必要条件なので $\displaystyle \lim_{x \to \infty}y=\infty$$y$は連続なので, 値域は $y\ge \dfrac{3}{4}$である.

逆像法での別解は次のように変数の存在条件から求める. $y$のとりうる範囲は$y=x^2+x+1$となる実数 $x$ が存在する範囲,である. $x^2+x+1-y=0$より $D=1-4(1-y)\ge 0$

\begin{displaymath}
∴ \quad y\ge \dfrac{3}{4}
\end{displaymath}

この場合は必要十分条件なので $\displaystyle \lim_{x \to \infty}y=\infty$ は要らない.

第一の方法を「正像法」,第二の方法を「逆像法」と呼ぶことが多い. これを「順手法」「逆手法」という人もいるが,第二の方法が論理的には大切なのに 何か「裏技」のような印象の言葉なので私は使わない. 「正像法と逆像法」はもちろん次のような通過領域で用いることが多い.


問題     

$xy$ 平面上の直線$tx+y+t^2=0$がある.$t$$0\le t\le 1$ を動くとき, この直線が通過する$xy$ 平面の領域を求めよ.


方針

1.
$x$を固定し$x$の範囲で場合に分けて$y$のとりうる範囲を求める.
2.
$(1,\ 2)$ が通過領域にあるかどうか知りたければどうするか. 代入して$t$の値を求め,それが$t$の動ける範囲にあればよい. この考え方を生かして, 点 $(x,\ y)$ が通過領域にあるための必要十分条件を書き出せばよい.


解1

\begin{displaymath}
y=-t^2-xt= -\left(t+\dfrac{x}{2} \right)^2+\dfrac{x^2}{4}
\end{displaymath}

$x$ を固定し,各 $x$ に対して$y$ がとりうる範囲を $x$ で表す.

その範囲は右辺を $t$ の2次関数と見たときの軸 $t=-\dfrac{x}{2}$ の 位置で場合分けし,最大最小を求めれば定まる.

右辺の $t$ の2次関数を $f(t)$ と置く.

\begin{displaymath}
\begin{array}{ll}
-\dfrac{x}{2}\le 0,\ &f(1)\le y\le f(0)\...
...2}\right)\\
1<-\dfrac{x}{2},\ &f(0)\le y\le f(1)
\end{array}\end{displaymath}

これを計算して

\begin{displaymath}
\begin{array}{ll}
0\le x,\ &-x-1\le y\le 0\\
-1\le x<0,\...
...\le y\le \dfrac{x^2}{4}\\
x<-2,\ &0\le y\le -x-1
\end{array}\end{displaymath}


解2
$(x,\ y)$ が通過領域にあるということは$tx+y+t^2=0$となる $t$$0\le t\le 1$ に存在することと同値である.

$g(t)=t^2+tx+y$ と置く. $D$$t$ の2次方程式 $t^2+tx+y=0$ の判別式とすれば, 求める条件は次のいずれかがなり立つことである.

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
g(0)g(1)\le0\\
D\ge0,\ g(0)\ge0,\ g(1)\ge 0,\ 0\le-\dfrac{x}{2}\le1
\end{array}\end{displaymath}

これから

\begin{displaymath}
y(x+y+1)\le0 ,\ または\ y\le\dfrac{x^2}{4},\ y\ge0,\ x+y+1\ge0,\ -2\le x \le 0
\end{displaymath}

吟味

場合分けの仕方が違うがいずれも図示すれば同じものになる.

このように正像法と逆像法は,簡単なときはどちらでも同じことだ.論証としては媒介変数の 存在条件から求める逆像法が論述しやすいが,関数が簡単にならないときは実際に実行するのは 難しくなる.その例が『数学対話』「包絡線」にある. 正像法は考えやすいが,条件が複雜なときに厳密に求めるのが難しいときがある. 双方をよく理解した上で,使い分けることが大切だ.



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