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関数等式[98阪大]

問題     

$n$ を1以上の整数とする. $n$ 次の整式

\begin{displaymath}
f(x)=a_0x^n+a_1x^{n-1}+\cdots +a_kx^{n-k}+ \cdots +a_{n-1}x+a_n
\end{displaymath}

とその導関数 $f'(x)$ の間に $nf(x)=(x+p)f'(x)$ という関係があるとする.ただし, $p$ は定数である.このとき, $f(x)=a_0(x+p)^n$ であることを示せ.


方針

1.
$n$次整式を$n$回微分すると定数になる. 微分によって関数等式がどのように変わるか, 両辺微分して整理する.
2.
関数等式から係数の関係式を導く. 一方, 結論からさかのぼると$a_k$がどのようになってほしいかわかるので, 数学的帰納法で示す.
3.
関数等式は微分方程式そのものである. これを解くにはいちど積分すればよい.

解1

関数等式

\begin{displaymath}
nf(x)=(x+p)f'(x) \quad\cdots\maru1
\end{displaymath}

の両辺を$x$で微分する.

\begin{displaymath}
nf'(x)=f'(x)+(x+p)f''(x)
\end{displaymath}

よって,

\begin{displaymath}
(n-1)f'(x)=(x+p)f''(x) \quad\cdots\maru2
\end{displaymath}

同様に,

\begin{eqnarray*}
&& (n-2)f''(x)=(x+p)f'''(x) \quad\cdots\maru3 \\
&& \qquad ...
...d \vdots \\
&& f^{(n-1)}(x)=(x+p)f^{(n)}(x) \quad\cdots\maru n
\end{eqnarray*}

よって,1からnをすべてかけあわせると

\begin{displaymath}
n!f(x)=(x+p)^nf^{(n)}(x)
\end{displaymath}

ここで, $f^{(n)}(x)=n!a_0$ なので

\begin{displaymath}
f(x)=a_0(x+p)^n
\end{displaymath}

解2

\begin{displaymath}
f'(x)=na_0x^{n-1}+ \cdots +a_{n-1}
\end{displaymath}

であるから,

\begin{displaymath}
(x+p)f'(x)=na_0x^n+\{na_0p+(n-1)a_1\}x^{n-1}+ \cdots +pa_{n-1}
\end{displaymath}

$1 \le k \le n-1$ のとき, $x^{n-k}$ の係数は,

\begin{displaymath}
(n-k)a_k+(n-k+1)a_{k-1} \cdot p
\end{displaymath}

$nf(x)$ と比較して,

\begin{displaymath}
n \cdot a_k=(n-k)a_k+(n-k+1)a_{k-1} \cdot p
\end{displaymath}

$k=0,\ 1,\ \cdots,\ n$について $a_k=a_0{}_n\mathrm{C}_kp^k$となることを$k$についての数学的帰納法で示す.k=0 のときはそのまま成立する.

$a_{k-1}=a_0p^{k-1}{}_n\mathrm{C}_{k-1}$ と仮定すると, 上式より,

\begin{eqnarray*}
&& ka_k=(n-k+1)a_0p^k \cdot{}_n\mathrm{C}_{k-1} \\
&∴& a_k=a_0 p^k \cdot{}_n\mathrm{C}_k
\end{eqnarray*}

また,

\begin{eqnarray*}
&& na_n=pa_{n-1}
=p \cdot a_0p^{n-1}\cdot{}_n\mathrm{C}_{n-1}=na_0p^n \\
&& ∴ \quad a_n=a_0p^n
\end{eqnarray*}

よってすべての$k$ $a_k=a_0{}_n\mathrm{C}_kp^k$となる.

\begin{displaymath}
∴\quad
f(x)=
a_0x^n+a_0 {}_n\mathrm{C}_1 x^{n-1} \cdot p+ \cdots +a_0p^n=a_0(x+p)^n
\end{displaymath}

解3

\begin{displaymath}
\dfrac{f'(x)}{f(x)}=\dfrac{n}{x+p}
\end{displaymath}

より

\begin{displaymath}
\int\dfrac{f'(x)}{f(x)}\,dx=\int\dfrac{n}{x+p}\,dx
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
∴\quad \log\left\vert f(x) \right\vert=n\log\left\vert x+p \right\vert+C
\end{displaymath}

これから $\log\dfrac{\left\vert f(x) \right\vert}{\left\vert x+p \right\vert^n}$が定数となる.$f(x)$は整式なので

\begin{displaymath}
f(x)=a(x+p)^n
\end{displaymath}

となる定数$a$がある.$x^n$の係数を比較して$a=a_0$

\begin{displaymath}
∴\quad f(x)=a_0(x+p)^n
\end{displaymath}


吟味

1.
条件をどのように使ったかをおさえておこう. 関数等式を微分し整理するところでは, $n$回微分可能であることのみ整式であることを使う. $f^{(n)}(x)=n!a_0$ は最高次の係数が$a_0$の整式であることを使う.
2.
これは$f(x)$が整式であることを最初から使っている.
3.
$f(x)=a(x+p)^n$と表されるところまでは, 整式であることは使っていない. 初期条件は,整式であることを前提としている. $f(0)=a_0p^n$のように与えられれば,整式であることは使わない.


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