next up previous 次: 恒等式[01京府医大] 上: 整式と見るか関数と見るか 前: 関数等式[98阪大]

関数値の符号[01慶応理工]

問題     

実数$a,\ b,\ c$ に対し $g(x)=ax^2+bx+c$ を考え, $u(x)$ $u(x)=g(x)g\left(\dfrac{1}{x}\right)$ で定義する.

  1. $u(x)$ $y=x+\dfrac{1}{x}$ の整式 $v(y)$ として表せることを示せ.
  2. 上で求めた $v(y)$$-2\le y \le 2$ の範囲のすべての $y$ に対して $v(y)\ge 0$ であることを示せ.


方針

1.
実際に2次式で計算しよう. 後半は,軸での場合分けということになる.
2.
$y$を条件の範囲に固定したとき,$x$はどのように定まるのか. $x$は2解の積が1の重解か虚数解である. $f(x)$の係数は実数である. これを考えることで別の方法が見える.


解1

  1. \begin{eqnarray*}
g(x)g\left(\dfrac{1}{x}\right)
&=&(ax^2+bx+c) \left(\dfrac{a...
...{1}{x}\right)^2+b(a+c)\left(x+\dfrac{1}{x}\right)
+(a-c)^2+b^2
\end{eqnarray*}

    確かに

    \begin{displaymath}
v(y)=acy^2+b(a+c)y+(a-c)^2+b^2
\end{displaymath}

    と表される.
  2. \begin{eqnarray*}
v(-2)&=&4ac-2b(a+c)+(a-c)^2+b^2=(a+c-b)^2\ge 0\\
v(2)&=&4ac+2b(a+c)+(a-c)^2+b^2=(a+c+b)^2\ge 0
\end{eqnarray*}

    なので, $y^2$の係数の符号と軸の位置を考えて場合分けする.

    $ac \le 0$,または$ac > 0$ $\left\vert\dfrac{b(a+c)}{2ac} \right\vert>2$ なら, $-2\le y \le 2$$v(y)\ge 0$

    $ac > 0$でかつ $\left\vert\dfrac{-b(a+c)}{2ac} \right\vert\le 2$のときは,この条件の下で, $v \left(-\dfrac{b(a+c)}{2ac} \right)\ge 0$ を示せばよい.

    軸の条件は $b^2(a+c)^2\le 16a^2c^2$ となるので

    \begin{eqnarray*}
v \left(-\dfrac{b(a+c)}{2ac} \right)
&=&-\dfrac{b^2(a+c)^2-4...
...2c^2}{(a+c)^2} \right\}\\
&=&\dfrac{4ac(a-c)^4}{(a+c)^2}\ge 0
\end{eqnarray*}

    ゆえに題意が示された.□


解2

  1. $g(x)g(z)$は明らかに $x$$z$ の対称式である.

    したがってこれは基本対称式 $x+z$$xz$ の整式である.

    $x+z$$xz$ で表したものの $z$$\dfrac{1}{x}$ を代入する.

    $g(x)g \left( \dfrac{1}{x}\right)$ $x+ \dfrac{1}{x}$ $x\cdot \dfrac{1}{x}=1$ の整式となる. つまり $y=x+\dfrac{1}{x}$ の整式として表せる.

  2. $-2 < y < 2$ の範囲 $y$ を固定し $y_0$ とする.

    \begin{displaymath}
y_0=x+\dfrac{1}{x}
\end{displaymath}

    となる $x$ を求める.

    \begin{displaymath}
x^2-y_0x+1=0
\end{displaymath}

    で,判別式 $D=y_0^2-4<0$ であるから,虚数解 $\alpha$$\bar{\alpha}$ をもつ.

    さらに解と係数の関係から $\alpha \cdot \bar{\alpha}=1$ である.

    \begin{displaymath}
v(y_0)=g(\alpha)g \left( \dfrac{1}{\alpha}\right)
=g(\alpha)g \left( \bar{\alpha}\right)
\end{displaymath}

    $g(x)$は実数係数の整式であるから

    \begin{displaymath}
g(\alpha)g \left( \bar{\alpha}\right)
=g(\alpha)\overline{g(\alpha)}
=\vert g(\alpha)\vert^2\ge0
\end{displaymath}

    $y_0=\pm2$ のとき

    \begin{displaymath}
y_0=x+\dfrac{1}{x}
\end{displaymath}

    はそれぞれ重解 $1$$-1$ をもつ.よって,

    \begin{displaymath}
v(\pm2)=g(\pm1)g \left( \dfrac{1}{\pm 1}\right)\\
=g(\pm1)g(\pm 1)
=g(\pm 1)^2
\ge0
\end{displaymath}

    となる.

    したがって $-2\le y \le 2$ の範囲のすべての $y$ に対して $v(y)\ge 0$ であることが示された.□


吟味
第1の解法の(2)は次のようにもできる.

$v(y)$$b$ で整理すると

\begin{displaymath}
v(y)=b^2+(a+c)b+acy^2+(a-c)^2
\end{displaymath}

となる. $b$ の2次式と見た判別式は

\begin{displaymath}
D=(a+c)^2y^2-4\{acy^2+(a-c)^2\}=(a-c)^2(y^2-4)
\end{displaymath}

となる.ゆえに $\vert y\vert\le2$ なら $D\ge 0$ となり任意の実数 $b$ に対して $v(y)\ge 0$ なのだ.

これは「より個別性を用いたうまい方法」には違いないし,見つければおもしろいが, なかなか気づくとはかぎらない.

さて,より一般的な方法はないか.考えるヒントは $y=x+\dfrac{1}{x}$ と置いたとき, $\vert y\vert\le2$になるような $x$ はどんなものかということだ. $x$は2解の積が1の重解か虚数解である. 虚数解の場合2解は$\alpha$ $\overline{\alpha}$とおけ,積が1のなで $\dfrac{1}{\alpha}=\overline{\alpha}$だ. それが判れば, $v(y)=g(x)g\left(\dfrac{1}{x}\right)$ だから, $v(y)$ の問題を $g(x)$ の問題に還元できる.


next up previous
次: 恒等式[01京府医大] 上: 整式と見るか関数と見るか 前: 関数等式[98阪大]
Aozora Gakuen