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定数と変数の見方を変える

$a$$b$と書けば「定数」で動かず,$x$$y$と書けば「変数」で動く, と固定的に考えてはならない. $a,\ b$を定数に,$x,\ y$を変数にするのは習慣に過ぎない. $x$$a$ の式
\begin{displaymath}
x^2+ax+a-2=0
\end{displaymath} (2.6)

がある.これはどのような式に見えるだろうか. 当然 $x$ の2次方程式と見えるだろう. では次の問題はどのように解くだろうか.


例題 2.5  

$x$の2次方程式(2.6)で, 定数$a$$0\le a \le 1$ の範囲で変化するとき, 解はどのような範囲にあるか.


解答1     (2.6)は $a(x+1)=-x^2+2$ と変形される. これから二つのグラフ

\begin{displaymath}
y=-x^2+2,\ \ y=a(x+1)
\end{displaymath}
の交点がどのように変化するかを考える. 第2式の直線はつねに $(-1,\ 0)$ を通る直線で 傾き $a$ が0から1まで変化するのだから,図のように

\begin{displaymath}
\dfrac{-1-\sqrt{5}}{2}\le x \le -\sqrt{2},\ \ \ \dfrac{-1+\sqrt{5}}{2}\le x \le \sqrt{2}
\end{displaymath}
とわかる.□         

考え方2     しかしさらに考えて見よう. $x$ が求める範囲にあるということは, $0\le a \le 1$ で(2.6)を満たす $a$ がとれるということだ. つまり$0\le a \le 1$$a$ が存在するような範囲として $x$ の範囲が定まる. (2.6)は $a$ の1次方程式で$x$ が定数とも考えられる. このように見れば, $a$の1次方程式(2.6)が$0\le a \le 1$に解をもつような定数$x$ の範囲として,求まることになる.

解答2    

\begin{displaymath}
f(a)=x^2+ax+a-2
\end{displaymath}

とおくと, $f(0)f(1)\le 0$ であればいい.つまり

\begin{displaymath}
(x^2-2)(x^2+x-1)\le 0
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
(x^2-2)(x^2+x-1)
=\left(x-\dfrac{-1-\sqrt{5}}{2} \right)(x+\sqrt{2})
\left(x-\dfrac{-1+\sqrt{5}}{2} \right)(x-\sqrt{2})
\end{displaymath}

より同じ結論を得る.□


$x$$y$ を変数や未知数, $a$$b$ を定数と見るのは習慣に過ぎない. 要は二つの文字 $x$$a$ の間に(2.6)の関係が成り立っている, ということだけがある. いずれを変数とし,いずれを定数とするかは固定されていない. いくつかの文字の混じった式では, どの文字を固定してどの文字を動かすのかよく考えたい. また,小問の(1)では定数であったものを(2)では動かすということもよくある.


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