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関数の図示

関数のグラフとは何か. 関数$y=f(x)$のグラフとは $xy$ 平面上に点の集合

\begin{displaymath}
\{(x,\ y)\ \vert\ x\ は実数,y=f(x)\ \}
\end{displaymath}

のことだ.これは普通は何らかの曲線になる. この曲線の形によって,関数の性質が浮かびあがる. つながっているか切れているか.なめらかか折れ曲がっているか. 右上がりか右下がりか.上に凸か下に凸か.等々. また,二つの関数のグラフから, それらの関数相互の関係もいろいろ読みとれるのだった. これが基本である.

値域を図示する

次の例題のように,図を描いて考える典型は, 変域や関数の値域を図示することで問題に見通しをつけることである.

例題 2.11       [98産能大]

$x,\ y$ を実数とするとき,次の問に答えよ.

  1. $x^2+y^2 \le 1$ であるとき, $3x+y$ の最大値を求めよ.
  2. $x \ge 0$$y \ge 0$$3x+y\le 5$ であるとき,$x^2+y^2$ の最大値を求めよ.
  3. $\vert x\vert+\vert y\vert \le 1$ であるとき, $y-x^2+5x$ の最大値を求めよ.
  4. $\vert x+y\vert \le 1$ であるとき, $y-x^2+5x$ の最大値を求めよ.

解答    

  1. $3x+y=k$ とおく.$x^2+y^2 \le 1$ の点に対して $k$ のとりうる値の範囲は, 領域$x^2+y^2 \le 1$ と直線 $3x+y=k$ が共有点を持つ範囲として,定まる. $k$ の最大値,最小値は直線 $3x+y=k$ が円$x^2+y^2=1$ と接するときである.

    \begin{displaymath}
\dfrac{\vert-k\vert}{\sqrt{3^2+1}}=1 \quad ∴ \quad k=\pm \sqrt{10}
\end{displaymath}

    最大値は $\sqrt{10}$である .
  2. $x^2+y^2=k$ とおくとこれは半径 $\sqrt{k}$ の円. 条件の領域と共有点があるなかで半径最大になるのは, $(x,\ y)=(5,\ 0)$ のとき. 最大値$25$である.
  3. $y-x^2+5x=k$とおくと $y=x^2-5x+k= \left(x-\dfrac{5}{2} \right)^2-\dfrac{25}{4}+k$. 軸の位置から図3のときが $k$ 最大.つまり $(x,\ y)=(1,\ 0)$ のとき. 最大値は $0-1^2+5 \cdot 1=4$である.
  4. 同じく図4のように $x+y=1$ と接するとき. $x^2-5x+k=-x+1$ が重解を持つときなので, $D/4=4-(k-1)=0$ より最大値は$5$である. □

方程式の解とグラフの共有点

文字定数を含む方程式$f(x)=0$が一定の範囲に解をもつような定数の範囲を求めるとき,これを次のように関数のグラフの共有点で考えると簡明である.

もとの方程式$f(x)=0$を, 文字定数を含まない部分を左辺に,文字定数を含む部分を右辺に分け,

\begin{displaymath}
g(x)=h(x)
\end{displaymath}

とする. 方程式$f(x)=0$の実数解は,二つの曲線

\begin{displaymath}
y=g(x),\ y=h(x)
\end{displaymath}

のグラフの共有点の$x$座標である.

一般に右辺$h(x)$は次数が低くなり(1次か定数の場合が多い)簡単である. それに対して$y=g(x)$の方は文字定数を含まない固定された関数である.


例題 2.12       [96関西大]

$x$ の方程式

\begin{displaymath}
\cos 2x + 2k \sin x +k-4=0,\ (0\le x \le \pi)
\end{displaymath}

の異なる解の個数が2つであるために $k$ のみたすべき条件を求めよ.


解答     $t=\sin x$とおく. $\cos 2x=1-2\sin^2 x$なので

\begin{eqnarray*}
&&\cos 2x + 2k \sin x +k-4=0\quad \cdots\maru{1}\\
&より&(1-2t^2)+2k t+k-4=0\quad \cdots\maru{2}\\
&\iff&2t^2+3=2kt+k
\end{eqnarray*}

ここで $0\le x \le \pi$であるから$t=1$に対して$x$は一つ定まり, $0\le t<1$に対して$x$は2つ定まる.したがって$\maru{1}$を満たす$x$が2つあることは, $t$の2次方程式$\maru{2}$$0\le t<1$にただ一つの解をもつことと同値である.

このことに注意して,

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
y=2t^2+3\\
y=2kt+k=2k\left(t+\dfrac{1}{2} \right)
\end{array}\right.
\end{displaymath}

の交点の$t$座標がが$0\le t<1$にただ一つあるような$k$の範囲を求めればよい. 直線$y=2kt+k$$k$によらずつねに $\left(-\dfrac{1}{2},\ 0 \right)$を通る.

直線$y=2kt+k$$(0,\ 3)$$(1,\ 5)$を通るとき, $k=3,\ \dfrac{5}{3}$である. また直線$y=2kt+k$が放物線$y=2t^2+3$と接するときの$k$を求める.$\maru{2}$の判別式が 0となる$k$のうち,正のものである.

\begin{displaymath}
D/4=k^2-2(-k+3)=k^2+2k-6=0
\end{displaymath}
より$k=-1+\sqrt{7}$である. $-1+\sqrt{7}<\dfrac{5}{3}$なので, 交点の$t$座標がが$0\le t<1$にただ一つあるような$k$の範囲は グラフから

\begin{displaymath}
k=-1+\sqrt{7},\ \dfrac{5}{3}<k\le 3
\end{displaymath}


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