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数列の図示

さらにこの「関数」が,実数に対して定義された普通の関数のみならず, 定義域が自然数の関数のときにもグラフの考え方が有効なのだ. 定義域が自然数の関数?     それはつまり数列だ. 自然数 $n$ に対して定義された関数 $f(n)$ が高校数学の重要な内容の一つである. これは, $f(n)=a_n$ とおけば,数列と同じものであることによく注意すること. このような関数 $f(n)$ を解析する基本は

\begin{displaymath}
\Delta f(n)=f(n+1)-f(n)
\end{displaymath}

を解析することである.これはつまり階差数列である.

階差を取る作用は $\Delta f(n)=\dfrac{f(n+1)-f(n)}{(n+1)-n}$ としてみればわかるように, 関数の導関数を考えることに対応している.実は「階差をとる」ことを「差分する」ともいうのだが,これは言うまでもなく「微分する」と対応する言葉の使い方だ. ついでながら階差数列からもとの数列を見出す

\begin{displaymath}
f(n)=f(1)+\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1}\Delta f(k)
\end{displaymath}

という操作は,関数 $f(x)$ では,原始関数を求める積分そのものだ.ついでに言えばこの操作を 「和分する」という.「積分する」に対応する言葉だ.

そこで次の問題を考えよう.


例題 2.13       [00京大文系]

実数 $x_1,\ \cdots ,x_n\ (n \ge 3)$ が条件

\begin{displaymath}
x_{k-1}-2 x_k+x_{k+1}>0 \ (2 \le k \le n-1)
\end{displaymath}

を満たすとし, $x_1, \cdots , x_n$ の最小値を $m$ とする.このとき, $x_l=m$ となる $l\ (1 \le l \le n)$ の個数は1または2であることを示せ.


考え方     最初に問題の条件を階差の関係

\begin{displaymath}
x_k-x_{k-1}<x_{k+1}-x_k\ (2 \le k \le n-1)
\end{displaymath}

にできるかどうかだ.これは「数列を調べるのならまず階差を調べよ」ということが頭にあれば できる.「関数を調べるのならまず微分して導関数を調べよ」ということなのだ.

 その次にこの階差数列の不等式は何を意味しているかだ.

 階差が増加している.微分が増加している.二次導関数が正.下に凸なグラフ.と理系の人なら 連想が進むかも知れない. が,これは文系の問題だ.階差が増加しているようなグラフをかいてみよう. 階差が増加しているということは,数列が減少しているときは減少幅が小さくなり, 数列が増加しているときは増加幅が大きくなることだ.

これでわかる.実際下に凸な折れ線になる.形としては@のようにはじめ減少で 途中から増加に転じる場合,途中の1カ所で$x_{k+1}-x_k=0$となればそこで最小になり 最小値をとる $x_k$ の個数は2個, $x_k-x_{k-1}<0<x_{k+1}-x_k$なら1個.Aや Bの形なら $x_1$$x_n$ の1個のみとなる.

解答     題意の条件は

\begin{displaymath}x_{k+1}-x_k>x_k-x_{k-1} \ (2 \le k \le n-1)\end{displaymath}

と書ける.
  1. $x_2-x_1>0$ なら

    \begin{displaymath}
x_k-x_{k-1}>0 \ (2 \le k \le n)
\end{displaymath}

    となり 数列 $\{ x_n \}$ は単調増加. よって $x_1=m$ となり他に $m$ となるものはない.この場合は1個.
  2. $0>x_n-x_{n-1}$ なら

    \begin{displaymath}
0>x_k-x_{k-1} \ (2 \le k \le n)
\end{displaymath}

    となり 数列 $\{ x_n \}$ は単調減少. よって $x_n=m$ となり他に $m$ となるものはない.この場合は1個.
  3. ある番号 $k_0$ があって

    \begin{displaymath}
x_{k_0+1}-x_{k_0}>0>x_{k_0}-x_{k_0-1}
\end{displaymath}

    となるとき.

    $x_1,\cdots ,x_{k_0}$ は単調減少で, $x_{k_0},\cdots ,x_n$ は単調増加. よって $x_{k_0}=m$ となり他に $m$ となるものはない.この場合は1個.

  4. ある番号 $k_0$ があって

    \begin{displaymath}x_{k_0+1}-x_{k_0}=0 \end{displaymath}

    となるとき.このときは

    \begin{displaymath}
x_{k_0+2}-x_{k_0+1}>x_{k_0+1}-x_{k_0}=0>x_{k_0}-x_{k_0-1}
\end{displaymath}

    となる.同様の議論から $m=x_{k_0+1}=x_{k_0}$ となりこの他に $m$ となるものはない.この場合は2個.
以上.□



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