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確率過程の図示

このような考え方は,試行が順次おこなわれる場合の, 場合の数や確率の過程を考えるときにも有効である. あとで「漸化式」のところでもういちどマルコフ過程という確率の問題を取り上げる. ここではまず事象の変化を図示して考えることを学んでほしい.

次の例題などは試行の過程を図にして考えないと困難だ.


例題 2.14       [92一橋]

「一つのサイコロを振り,出た目が4以下ならばAに1点を与え,5以上ならばBに1点を与える」 という試行を繰り返す.

  1. AとBの得点差が2になったところでやめて得点の多い方を勝ちとする. $n$ 回以下の 試行でAが勝つ確率 $p_n$ を求めよ.
  2. Aの得点がBの得点より2多くなるか,またはBの得点がAの得点より1多くなったところで やめて,得点の多い方を勝ちとする. $n$ 回以下の試行でAが勝つ確率 $q_n$ を求めよ.

解答    
(1)     $x$ 軸に回数 $n$$y$ 軸に得点差 $d$ を取り,点$(n,\ d)$ を平面にとる. するとこの試行は,平面上の点の移動としてとらえることができる. 点$(n,\ d)$から点$(n+1,\ d+1)$へ移動する確率は $\dfrac{4}{6}$ , 点$(n,\ d)$から点$(n+1,\ d-1)$へ移動する確率は $\dfrac{2}{6}$ になる.

このようにすると, 得点差が $\pm1$ の間をくり返し,最後にAが2連勝するしか 得点差が2になることはない.したがって,奇数回目の得点差は奇数なので,得点差が2になるのは, 偶数回目しかないことがわかる. $2k$ 回目にAが勝つ確率 $r_{2k}$ は,

\begin{displaymath}
r_{2k}= \left(\dfrac{2}{3}\cdot\dfrac{1}{3}+ \dfrac{1}{3}\cd...
...mes \left(\dfrac{2}{3} \right)^2= \left(\dfrac{4}{9} \right)^k
\end{displaymath}

したがって $n$ が偶数なら

\begin{displaymath}
p_n
=\sum_{k=1}^{\dfrac{n}{2}}\left(\dfrac{4}{9}\right)^k
=\...
...{9}}
=\dfrac{4}{5}\left\{1-\left(\dfrac{2}{3}\right)^n\right\}
\end{displaymath}

$n$ が奇数なら

\begin{displaymath}
p_n=p_{n-1}=\dfrac{4}{5}\left\{1-\left(\dfrac{2}{3}\right)^{n-1}\right\}
\end{displaymath}

(2)     同様にして,図2のようになる.考え方はまったく同じである.

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{ll}
\dfrac{4}{7}\left\{1-\left(\dfra...
...9}\right)^{\frac{n-1}{2}}\right\}&(n:奇数)
\end{array}\right.
\end{displaymath}

その解は上のようになる. □

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