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一般化して考える

一般から個別へ

問題を考えるとき 一般化して考えることでかえって分かりやすくなることがある. 「一般から個別へ」「一般から特殊へ」. これが考えるときの方向性である.

小問で最初に具体的な数で問が立てられ, 次に一般化して$n$の場合を問う,というのはよくあることだが, そのときにいきなり$n$の場合を考えた方が分かりやすいことがある. また,そこまでいかなくても,小問の具体的な数の場合を考えるにあたって, 一般化した$n$の場合に考えやすい方法を探す, ということも大切なことである. 小問(1)はいろんな方法で解けるだろうが, 次の(2)で一般化を問われたときに通用する方法を(1)で考えなければならない.

このように, 例で考え一般化するというのは,入試問題では, はじめの小問で具体的な例を考えさせるという形でつねに出される. このような場合に大切なことは, 後の小問で一般的な場合に証明する ことに備えて「できるだけ一般的に証明する」ということだ. どのような点に注意して一般化を考えるのか.

一般化を試みよ

一つの問題が解けたらそれに満足せず,さらに一般的にした問題を自分で作り考えてみるということだ.それが勉強であり,いちばん力をつける.勉強の姿勢として,これまでもいろいろと別解を考えることを重視し,それによって力をつけてきた.そのような勉強を通して,少々下手でもかならずできる普遍的な方法で解く力を身につけよう.「うまい方法」が好きな人もいるが,これは実際に問題に向かったときいつも思い浮かぶわけではない.しかしできればおもしろい.考える価値はある.それはそうだが,まず身につけるべきなのは普遍的な方法である.

そのためには,とにかく何とか解けたときに,一般化を試みておくことだ.問題を一般化して見る.変数の個数を $n$ にする等だ.あるいは条件の一部をはずしてみる.一般化しても成立しそうだと見当をつけたら一般的な場合にも通用する方法を考える.問題が解けてもそれに満足せずこの辺りを考えておく.それは必ず他の場面で生きてくる.一つの問題について,このようないろんな側面から考えたい.違う問題を2題解くより,ひとつの問題を2通りの方法で解く方が,力がつく.なぜならそのことによって,他の関連した問題が一気に解けるようになるからだ.そういう勉強をしてもらいたい.

本質を見抜いた一般化は,証明を簡明にする.しかし,過度な一般化,機械的な一般化は多くの場合証明が出来ないことが多い.それでも一般的に考えようとすることで問題を大きな枠組のなかで考えることができる.そのうえで個別に解く.こうして個別と一般を行き来することが大切なのだ.

まず次の問題を普通に解こう.


例題 2.17       [01慶応理工]

実数$a, b, c$ に対し $g(x)=ax^2+bx+c$ を考え, $u(x)$ $u(x)=g(x)g\left(\dfrac{1}{x}\right)$ で定義する.

  1. $u(x)$ $y=x+\dfrac{1}{x}$ の整式 $v(y)$ として表せることを示せ.
  2. 上で求めた $v(y)$$-2\le y \le 2$ の範囲のすべての $y$ に対して $v(y)\ge 0$ であることを示せ.


解答1

(1)    

\begin{eqnarray*}
g(x)g\left(\dfrac{1}{x}\right)
&=&(ax^2+bx+c) \left(\dfrac{a...
...ac{1}{x}\right)^2+b(a+c)\left(x+\dfrac{1}{x}\right)+(a-c)^2+b^2
\end{eqnarray*}

確かに

\begin{displaymath}
v(y)=acy^2+b(a+c)y+(a-c)^2+b^2
\end{displaymath}

と表される.

(2)    

\begin{eqnarray*}
v(-2)&=&4ac-2b(a+c)+(a-c)^2+b^2=(a+c-b)^2\ge 0\\
v(2)&=&4ac+2b(a+c)+(a-c)^2+b^2=(a+c+b)^2\ge 0
\end{eqnarray*}

なので, $y^2$の係数の符号と軸の位置を考えて場合分けする.

$ac \le 0$,または$ac > 0$ なら, $-2\le y \le 2$$v(y)\ge 0$

$ac > 0$でかつ $\left\vert\dfrac{-b(a+c)}{2ac} \right\vert\le 2$のときは,この条件の下で, $v \left(-\dfrac{b(a+c)}{2ac} \right)\ge 0$ を示せばよい.

軸の条件は $b^2(a+c)^2\le 16a^2c^2$ となるので


ゆえに題意が示された.□


注意     (2)は $v(y)$$b$ で整理すると

となる. $b$ の二次式と見た判別式は

\begin{displaymath}
D=(a+c)^2y^2-4\{acy^2+(a-c)^2\}=(a-c)^2(y^2-4)
\end{displaymath}

となる. ゆえに $\vert y\vert\le2$ なら $D\le 0$ となり任意の実数 $b$ に対して $v(y)\ge 0$ なのだ. これは「より個別性を用いたうまい方法」には違いないし,見つければおもしろいが, なかなか気づくとはかぎらない.


さて,より一般的な方法はないか.考えるヒントは $y=x+\dfrac{1}{x}$ と置いたとき, $\vert y\vert\le2$になるような $x$ はどんなものかということだ. それが判れば, $v(y)=g(x)g\left(\dfrac{1}{x}\right)$ だから, $v(y)$ の問題を$g(x)$ の問題に還元できる.

解答2

(1)     $g(x)g(z)$は明らかに $x$$z$ の対称式である. したがってこれは基本対称式 $x+z$$xz$ の整式である. $x+z$$xz$ で表したものの $z$$\dfrac{1}{x}$ を代入する. $g(x)g \left( \dfrac{1}{x}\right)$ $x+ \dfrac{1}{x}$ $x\cdot \dfrac{1}{x}=1$ の整式となる. つまり $y=x+\dfrac{1}{x}$ の整式として表せる.

(2)     $-2 < y < 2$ の範囲 $y$ を固定し $y_0$ とする.

\begin{displaymath}
y_0=x+\dfrac{1}{x}
\end{displaymath}

となる $x$ を求める.

\begin{displaymath}
x^2-y_0x+1=0
\end{displaymath}

で,判別式 $D=y_0^2-4<0$ であるから, 虚数解 $\alpha$$\bar{\alpha}$ をもつ. さらに解と係数の関係から $\alpha \cdot \bar{\alpha}=1$ である.

\begin{displaymath}
v(y_0)=g(\alpha)g \left( \dfrac{1}{\alpha}\right)
=g(\alpha)g \left( \bar{\alpha}\right)
\end{displaymath}

g(x)は実数係数の整式であるから

\begin{displaymath}
g(\alpha)g \left( \bar{\alpha}\right)
=g(\alpha)\overline{g(\alpha)}
=\vert g(\alpha)\vert^2\ge0
\end{displaymath}

$y_0=\pm2$ のとき

\begin{displaymath}
y_0=x+\dfrac{1}{x}
\end{displaymath}

はそれぞれ重解 $1$$-1$ をもつ.よって,

\begin{displaymath}
v(\pm2)=g(\pm1)g \left( \dfrac{1}{\pm 1}\right)\\
=g(\pm1)g(\pm 1)
=g(\pm 1)^2
\ge0
\end{displaymath}

となる.

したがって $-2\le y \le 2$ の範囲のすべての $y$ に対して $v(y)\ge 0$ であることが示された.□


このように考えれば, $g(x)$ は二次式でなくても,一般の実数係数の多項式で成立する.

もう一つ考えよう.


例題 2.18       [01京府医大]

次の実数係数の三次式を $f(x)$ とする.

\begin{displaymath}
f(x)=x^3+px^2+qx+r
\end{displaymath}

いま,二つの実数係数の整式 $g(x),\ h(x)$ が次を満たすものとする.

\begin{displaymath}
f(g(x))=f(h(x)) \quad : \quad 恒等的に等しい
\end{displaymath}

このとき次のいずれかが成り立つことを示せ.
  1. $g(x),\ h(x)\quad : \quad $恒等的に等しい.
  2. 二つの整式 $g(x),\ h(x)$ はともに定数である.


まず $f(x)$ が三次式であることをそのまま使う解を考えよう. 簡単のため必要に応じて $g(x)$ 等を $g$ と書いてよい.

解答1    

\begin{displaymath}
f(g)-f(h)=(g-h)\{g^2+gh+h^2+p(g+h)+q\}
\end{displaymath}

これがすべての $x$ で成立するので, $g-h=0$ $g^2+gh+h^2+p(g+h)+q=0$かのいずれかは 無数の $x$ で成立する. $g-h=0$が無数の$x$で成立するとすれば, $g(x),\ h(x)$$x$ の整式なので $g(x),\ h(x)$は恒等的に等しい. 同様に $g^2+gh+h^2+p(g+h)+q=0$が無数の$x$で成立すれば, 恒等的に成立するとする.

$g(x),\ h(x)$の次数が異なる場合, 大きい方の次数を $m>0$ とすると $g^2+gh+h^2+p(g+h)+q$$2m$ 次の整式である.恒等的に0ではあり得ない.

$g(x),\ h(x)$の次数が等しい場合,それを $m$ 次として $g(x)=ax^m+\cdots$ $h(x)=bx^m+\cdots$ と置く.このとき

\begin{displaymath}
g^2+gh+h^2+p(g+h)+q=(a^2+ab+b^2)x^{2m}+\cdots)
\end{displaymath}

となる. 実数 $a,\ b$ に対して $a^2+ab+b^2>0$ であるからもし $m\ge 1$ なら これが恒等的に0になることはない. ゆえに$m=0$ で,$g(x),\ h(x)$はともに定数である.□

解答2     $g(x)$ が定数でないとする. $g(x)$ は実数係数の整式なので,

\begin{displaymath}
\lim_{x \to \infty}\vert g(x)\vert=\infty
\end{displaymath}

 


である. これが$\vert x\vert$ が十分大きいすべての $x$ で成立する. $g(x)$ は整式なので,恒等的に成立する.

次に $g(x)=c\ (定数)$ とする.

\begin{displaymath}
f(g(x))=f(c)=f(h(x))
\end{displaymath}

したがって $h(x)$はすべての $x$ に対して $n$ 次方程式

\begin{displaymath}
f(c)=f(x)
\end{displaymath}

の解のいずれかに一致しなければならない.すべての$x$$h(x)$がどの解に一致するかで組に分けると, 実数解は有限個なので,そのうち少なくとも一つの組は無数の$x$からなる. つまり,$f(c)=f(x)$の解$\alpha$で無数の$x$の値に対して$h(x)=\alpha$となるものがある.

$h(x)$は整式なので,恒等的にこの解に等しい,つまり$h(x)$も定数である.□


例題




 
 


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