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絞って調べるか,同値変形か

このようにある程度複雑な論証では, 必要条件で範囲を絞り, それぞれについて十分性を吟味するということが重要である. しかしまた,問題をよく分析することで, はじめから必要十分な条件を引き出すこともできる.

次の例題を二通りの方法でやってみよう.


例題 1.9       [05大教大]

  1. 整式$f(x)=a+bx$を考える.任意の整数$x$に対して, $f(x)$が整数であるための必要十分条件は「$a,\ b$がともに整数である」ことを示せ.
  2. 整式 $g(x)=a+bx+cx^2$を考える.任意の整数$x$に対して, $g(x)$が整数であるための必要十分条件は「$a,\ b+c,\ 2c$のすべてが整数である」ことを示せ.
  3. 整式 $h(x)=a+bx+cx^2+dx^3$を考える.任意の整数$x$に対して, $h(x)$が整数であるための必要十分条件は「 $a,\ b+c+d,\ 2c,\ 6d$のすべてが整数である」ことを示せ.


解法1


  1. \begin{displaymath}
f(0)=a,\ f(1)=a+b
\end{displaymath}

    がともに整数なので, すべての整数$x$$f(x)$が整数となるために$a$$b$が整数となることが必要である. 逆にこのとき, 任意の整数$x$に対して$f(x)$は整数であるのでこれは十分条件でもある.

  2. \begin{displaymath}
g(0)=a,\ g(1)=a+b+c,\ g(2)=a+2b+4c
\end{displaymath}

    が整数となる. これから, $g(1)-g(0)=b+c$ $g(2)-g(1)=b+c+2c$が整数となるので, $a,\ b+c,\ 2c$が整数となることが必要である.

    十分条件であることを示す.

    $b+c=p,\ 2c=q$とおくと $b=p-\dfrac{q}{2}$ $c=\dfrac{q}{2}$より

    \begin{eqnarray*}
g(x)&=&a+\left(p-\dfrac{q}{2}\right)x+\dfrac{q}{2}x^2\\
&=&a+px+q\cdot\dfrac{x(x-1)}{2}
\end{eqnarray*}

    となる,整数$x$に対し $\dfrac{x(x-1)}{2}$は整数なので, すべての整数$x$に対し$g(x)$は整数となることが示された.
  3. 同様に

    \begin{displaymath}
h(0)=a,\
h(1)=a+b+c+d,\
h(2)=a+2b+4c+8d,\
h(-1)=a-b+c-d
\end{displaymath}

    が整数である.これから $h(1)-h(0)=b+c+d$ $h(1)-h(-1)=2(a+c)$ $h(2)-2(b+c+d)=a+2c+6d$が整数である. よって $a,\ b+c+d$$2c,\ 6d$は整数であることが必要である.

    十分条件であることを示す.

    $b+c+d=p,\ 2c=q,\ 6d=r$とする. $d=\dfrac{r}{6}$ $c=\dfrac{q}{2}$ $b=p-\dfrac{q}{2}-\dfrac{r}{6}$なので,

    \begin{eqnarray*}
h(x)&=&a+\left(p-\dfrac{q}{2}-\dfrac{r}{6} \right)x
+\dfrac{...
...=&
a+px+q\cdot\dfrac{x(x-1)}{2}
+r\cdot\dfrac{(x-1)x(x+1)}{6}
\end{eqnarray*}

    整数$x$に対し $\dfrac{(x-1)x(x+1)}{6}$は整数なので, すべての整数$x$に対し$g(x)$は整数となることが示された.

解法2

  1. 一般に, 整式$f(x)$がすべての整数$x$に対して整数値をとるための必要十分条件は, $f(0)$が整数であり, かつ階差$f(x+1)-f(x)$がすべての整数$x$に対して整数値をとることである.

    よって$f(x)=a+bx$のとき

    \begin{eqnarray*}
&&整式\ f(x)\ が任意の整数\ x\ に対して整数値をとる.\\
&\iff&f(0)=a,\ f(x+1)-f(x)=b が整数
\end{eqnarray*}

    である.
  2. 同様に $g(x)=a+bx+cx^2$のとき

    \begin{eqnarray*}
&&整式\ g(x)\ が任意の整数\ x\ に対して整数値をとる.\\
&\i...
...g(x)=(b+c)+2cx が整数\\
&\iff&a,\ b+c,\ 2c\ が整数\ (∵\ (1))
\end{eqnarray*}

    である.
  3. 同様に $h(x)=a+bx+cx^2+dx^2$をのとき

    \begin{eqnarray*}
&&整式\ h(x)\ が任意の整数\ x\ に対して整数値をとる.\\
&\i...
...cdot3d\ が整数\ (∵\ (2))\\
&\iff&a,\ b+c+d,\ 2c,\ 6d\ が整数
\end{eqnarray*}

    (上2行目 「3dx2」を「3dx3」に訂正).

  4. である.



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