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存在の間接証明−中間値の定理

次に方程式の解の存在証明などでよく用いられるのが連続な関数の「中間値の定理」である.

区間 $a\le x \le b$ で連続な関数 $f(x)$$x=a,\ b$ で異なる値 $f(a)=\alpha,\ f(b)=\beta$ をとるとする. $\alpha$$\beta$ の中間 ( $\alpha,\ \beta$は含まない )の任意の値 $\gamma$ に対して, $a<c<b$$\gamma=f(c)$ となる $c$ が存在する. よく使われるのは $\alpha$$\beta$ が異符号で $\gamma=0$ にとる場合だ.

$a\le x \le b$ で連続な関数 $f(x)$ がある. $f(a)f(b)<0$ なら, $f(x)=0$ の解が少なくとも一つ $a<x<b$ に存在する.

さらにこの$c$の存在自体は実数の連続性を土台に,関数の連続性を用いて示される. それについては『解析基礎』を参照のこと. 高校数学範囲では中間値の定理は証明なしに用いてよい.

ここではこれを含めてまとめとして,三通りの方法で次の問題を解いてみる.


例題 1.20       [99京大理系後期]

$\bigtriangleup \mathrm{ABC}$ は鋭角三角形とする. このとき,各面すべてが $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$ と合同な四面体が存在することを示せ.

直接に示す方法−その1     図のように$xyz$ 空間のなかの $xy$ 平面上に鋭角三角形 $\mathrm{ABC}$ を 正の数 $a,\ b,\ c$ を用いて $\mathrm{A}(-a,\ 0)$ $\mathrm{B}(b,\ 0)$ $\mathrm{C}(0,\ c)$ とおく. 鋭角三角形であるから

\begin{eqnarray*}
(a+b)^2&<&(a^2+c^2)+(b^2+c^2)\\
(a^2+c^2)&<&(a+b)^2+(b^2+c^2)\\
(b^2+c^2)&<&(a^2+c^2)+(a+b)^2
\end{eqnarray*}

\begin{displaymath}
∴\quad ab<c^2\quad \cdots\maru{1}
\end{displaymath}


$\mathrm{P}(x,\ y,\ z)$ $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$ を底辺とする求める四面体の 第4の頂点であるために条件を書く.

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{ll}
(x+a)^2+y^2+z^2=b^2+c^2&\cdots\m...
...\
x^2+(y-c)^2+z^2=(a+b)^2&\cdots\maru{4}
\end{array}\right.
\end{displaymath}

$\maru{2}-\maru{3}$を整理して

\begin{displaymath}
2(a+b)x=2(b^2-a^2) \quad ∴ \quad x=b-a
\end{displaymath}

これをB,Cに代入して

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
y^2+z^2=c^2\\
(y-c)^2+z^2=4ab
\end{array}\right.
\end{displaymath}

これから

\begin{displaymath}
y=c-\dfrac{2ab}{c}, \quad z^2=\dfrac{4ab}{c^2}(c^2-ab)
\end{displaymath}

条件@から $z^2>0$ なので, $z=\pm \sqrt{\dfrac{4ab}{c^2}(c^2-ab)}$ と定まる.

このとき四面体 $\mathrm{P-ABC}$ において

\begin{displaymath}
\bigtriangleup \mathrm{ABC}\equiv \bigtriangleup \mathrm{PCB...
...\bigtriangleup \mathrm{CPA}
\equiv \bigtriangleup \mathrm{BAP}
\end{displaymath}

であり題意を満たす四面体が存在した.□

直接に示す方法−その2     $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$ の各頂点の対辺の長さを $a,\ b,\ c$ とする. 鋭角三角形なので

\begin{displaymath}
a^2+b^2>c^2,\ b^2+c^2>a^2,\ c^2+a^2>b^2
\end{displaymath}
が成り立つ.そこで

\begin{displaymath}
x=\sqrt{\dfrac{a^2+b^2-c^2}{2}},\ y=\sqrt{\dfrac{b^2+c^2-a^2}{2}}
,\ z=\sqrt{\dfrac{c^2+a^2-b^2}{2}}
\end{displaymath}
とおき, $x,\ y,\ z$ を3辺の長さとする直方体 $\mathrm{DEFG-HIJK}$ を作る. このとき三つの対角線の長さが

\begin{displaymath}
\sqrt{x^2+y^2}=b,\ \sqrt{y^2+z^2}=c,\ \sqrt{z^2+x^2}=a
\end{displaymath}

となる. 従って $\bigtriangleup \mathrm{DFIK}$ が題意をみたす四面体である.□

間接的に示す方法     $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$ の各頂点の対辺の長さを $a,\ b,\ c$ とする.

     $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$ に対して同じ平面上に図のように $\bigtriangleup \mathrm{AB'C}$ $\bigtriangleup \mathrm{AB''C}$ を△CBAと合同になるようにとる. $\angle \mathrm{BCB'}=\theta$ とすると $\angle \mathrm{B}<90^{\circ}$ より

\begin{displaymath}
\theta=\angle \mathrm{A}+\angle \mathrm{C}=180^{\circ} -\angle \mathrm{B}>90^{\circ}
\end{displaymath}
 

\begin{displaymath}
∴ \quad \overline{\mathrm{BB'}}^2=a^2+c^2-2ac\cos \theta >a^2+c^2>b^2
\end{displaymath}

また四角形 $\mathrm{BB''CA}$ は等脚台形で $\angle \mathrm{A}$ が鋭角より

\begin{displaymath}
\overline{\mathrm{BB''}}<\mathrm{AC}=b
\end{displaymath}

そこで点 $\mathrm{X}$ をはじめは $\mathrm{B'}$の位置にあるものとし, $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$ のある平面から起こし, $\mathrm{AC}$ を軸に $\bigtriangleup \mathrm{AXC}$ を回転して $\mathrm{X}$$\mathrm{B''}$ の位置に来るまで動かすものとする.

このとき線分 $\mathrm{XB}$ の長さは $\overline{\mathrm{B'B}}$ から連続的に変化して $\overline{\mathrm{B''B}}$になる.ところが

\begin{displaymath}
\overline{\mathrm{B'B}}>b>\overline{\mathrm{B''B}}
\end{displaymath}

であるから中間値の定理により途中で

\begin{displaymath}
\overline{\mathrm{XB}}=b
\end{displaymath}

となる点 $\mathrm{X}=\mathrm{P}$ が存在する.

このとき四面体 $\mathrm{P-ABC}$ において

\begin{displaymath}
\bigtriangleup \mathrm{ABC}\equiv \bigtriangleup \mathrm{PCB...
...\bigtriangleup \mathrm{CPA}
\equiv \bigtriangleup \mathrm{BAP}
\end{displaymath}

であり題意を満たす四面体が存在した.□
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