二変数の基本対称式は, 2次方程式の解と係数の関係に現れる.
つまり, 2次方程式 の解を
とするとき
三変数の場合 の をどのように入れ替えても式がかわらない
場合に対称式という.三変数の基本対称式は
一般に, の 変数の多項式は 個の基本対称式をもつ.
この証明は青空学園のなかにある『不変式』を見てほしい.ここではこれに関する過去問題をやってみよう.
例題 1.8 [95年上智大]
を2変数 に関する実数を係数にもつ多項式とする. とおく. このとき, 以下の問いに答えよ.
1.
(i)
のとき を と を用いて表せ.
(ii) 一般に は と との多項式で表されることを示せ.
(iii) 恒等的に
が成り立つならば は と との多項式であることを示せ.
(iv) 恒等的に
が成り立つならば は と との多項式であることを示せ.
2.
(i) 恒等的に が成り立つならば が成り立つことを示せ.
(ii) 上の性質をもつ多項式はどのようなものか.
解答
1.
(i) を を用いて表すと
よって
(ii) より, は の多項式となるから と との多項式で表される.
(iii)
とおく.
が恒等的に成り立つとき
よって が奇数のときは である. つまり は の多項式, つまり と の多項式となる.
(iv) (iii)と同様において考えると
が恒等的に成り立つとき
0と自然数に対して がとの多項式になることを, 次数についての数学的帰納法で示す. であるのでで成立. が の多項式であると仮定する.
より も の多項式となる. よって は の多項式となる.
したがって, により は の多項式となる.
別解
の各単項式の の次数と の次数の和をその単項式の次数とよび, その中で最大のものを の次数とよぶ.
が成り立つような の次数 についての帰納法で示す.
のときは明らかに成立する.
で成立するとし, を 次対称式とする.
2.
(i) が恒等的に成り立つとき
(ii) (1)の(iii)と同様において考えると,
が恒等的に成り立つとき
四文字の第2項(x-z)に訂正.
いろんな計算で, 差積をくくることで見通しがよくなることが多い. これから出てくるたびに注意する. 式が出てくれば, 対称式か交代式かをまずみるようにしよう.
求めるべき三数に関する条件が対称なら,を満たすもので求めて,それからそれらを相互に入れ替えたものが,すべて求めるものになる.
考え方 式の対称性と交代性をいかして,式の因子を見出すのである. 大文字のものは適当な置きかえで,最初の小文字の等式が活用できるようにする.
解答
例題 1.11 [89京大文系]
五つの実数 があり,どのも他の四つの相加平均 より大きくはないという.このような をすべて求めよ.
考え方 5文字 について条件は対称だ.この対称性をどのように活かすか. 方法はいくつかある.一つで終わりにせずいろいろ考えてみよう.
解法1
条件は
各辺を加えると
解法2
条件は5文字
について対称である.
したがって
逆にすべて等しければ条件をみたすことは明らか.
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